草より男子(くさよりだんご)〜Boys Over Grasses ☆ラブ>コメ☆〜

まみ。

第1話 あの日見た草の名前を私はまだ知らない

「この自然公園には、いろんな植物があるんだね。」


「そうだな。ちょっと俺たち2人だけで、あっちに行ってみないか?」


「私たち2人だけで?」


「ああ。あの黄蜀とろろあおいのそばに行ってみよう。」


「誰?黄蜀とろろあおいって?」


黄蜀とろろあおいは、秋葵おくらに似てるんだ。」


「誰?秋葵おくらって?」


「ねばねばした野菜のことだけど、もしかして秋葵おくらを食べたことないのか?」


「あっ、野菜の秋葵おくらのこと?」


「もちろんそうだけど、何の話だと思ってたんだ?」


「人の名前なのかと思ってたから。」


「なんでそうなるんだか。秋葵おくらの花は淡い黄色なんだが、黄蜀とろろあおいの花もよく似てるんだ。」


「あの花の話をしてたんだ?」


「そりゃそうだ。あっちには春の七草が勢揃いしてるな。」


「春の七草?全部言える?」


「もちろんだ。せりなずな御形ごぎょう繁縷はこべ仏座ほとけのざすずな蘿蔔すずしろだろ?」


「すごいね。でも名前を知ってるだけでしょ?」


「それなら一通り説明しようか?あれがせりだ。水辺に生えていて、シャキシャキした食感の野菜だな。三葉みつばに似ているが、三葉みつばの葉は3枚で、せりの葉は5枚なんだ。」


「じゃあ、あれは?」


「あれはなずなだな。果実が三味線のバチに似てるから、ぺんぺんぐさとも呼ばれているんだ。油菜あぶらなの仲間で、至るところに生えてて、雑草と間違われやすいな。」


「こっちは?」


御形ごぎょうか。母子草ははこぐさとも呼ばれていて、黄色い花を密集させて咲かせるんだ。」


「本当に詳しかったんだね。残りのも説明してほしいな。」


「あっちが、撫子なでしこの仲間の繁縷はこべだな。花が星の形をしていて、子供の頃に一緒に道ばたで見かけたよな?」


「あの日見た草の名前って、繁縷はこべだったんだね。今まで知らなかった。」


「そしてあれが小鬼田こおにた平子びらこだ。」


「急に誰?小鬼田こおにた平子びらこって?」


小鬼田こおにた平子びらこは、昔はほとけと呼ばれていたんだ。」


ほとけのことだったの?」


「ああ。ただしほとけと呼ぶと、今は踊子草おどりこそうぞくの別の植物のことを指すんだ。」


「そうなんだ?」


「どちらも、あの仏像が座る台座みたいな形が特徴だ。春の七草の小鬼田こおにた平子びらこの花は黄色なんだが、ほとけは紫色なんだ。」


「それも知らなかった。ほとけって、2種類あったんだね!」


「それからすずなか。一言で言うと、かぶのことだ。白くて丸い球根が特徴的だよな?」


すずなは、かぶのことだったんだね?」


「ああ。そして蘿蔔すずしろは、大根だいこんのことだ。」


蘿蔔すずしろって、大根だいこんのことだったの?」


大根だいこんも、詳しく説明しようか?」


大根だいこんはいいかな。でもそんな一面があったなんて、私たち幼馴染なのに今まで全く知らなかったよ。」


「俺らは名前が植物名だから、嫌でも植物に詳しくなるさ。」


「そっちには私の大好きな加加阿カカオの木もあるね!」


「それに向こうには風信子ヒヤシンスもあるな。もっと近くで見てみるか?風信子ヒヤシンス?」


「うん。」


「おっと、そろそろGジー5ファイブのみんなの準備ができたみたいだな。」


(第2話に続く)

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