八色運動会⑽

木天蓼愛希

第1話午後の部。開幕戦。人架け橋!

午後の部。開幕戦。


「ピー」


「運動会。午後の部、時間となりました。生徒達はグラウンド。朝礼台の前に集まって下さい!」


教頭先生のアナウンスが流れ、生徒達は朝礼台の前に集まって来た。


「午後からも頑張って、行きましょう!」


教頭先生の挨拶が終わると、午後の部が始まる。午後からの部は団体戦で完全二色に分かれる。紅組(紅組。青組。黄組。紫組)と、白組(白組。緑組。ピンク(桃)組。オレンジ(橙)組)だ。午後からの部、最初の競技は人架け橋だ。人架け橋の競技は人の背中に乗って、橋をかけた様に進む競技だ。選ばれた一人が生徒の背中を踏んで歩く。そんな競技だ。競技コースは朝礼台から始まって、紅白に別れて、グラウンドを左右別々に進む。グラウンドの半周を一回りする。それを五回、五週すれば良い! 本来であれば、半周を一回りすれば良い筈だ。しかし、大勢の生徒達がいる為、五週回る事になっている。


生徒達は紅白に分かれ、左右別々のグラウンド白線に生徒達は背中を丸めて、馬否、踏み台として並んでいる。間隔を空けず。ぴたりと人と人の肩を口付ける程、接近して並んでいる。その人踏み台を選ばれた一人が踏んで歩ける準備が出来ている。白組の選ばれた一人は磯崎帆南ちゃんだ。二年生の帆南ちゃんだ。僕の妹音葉の親友の帆南ちゃんだ。紅組のトップリーダー磯崎紅音ちゃんの従兄弟で、余所者唯一の紅組に認められた子。運動神経抜群。学問優秀の帆南ちゃんが、白組の選ばれた一人だ。この子しかいないだろう! 誰もが、選ぶだろう唯一無二の子だ。


「ヨーい! パーン」


スタートの合図の音が流れた。合図と共に帆南ちゃんが人架け橋の上に乗る。最初は一年生の低い子から並ぶ。最後は六年生の背の高い子が並ぶ。余り、高低があると、踏みづらい。とは言え、帆南ちゃんの場合は余り、障害にはならない。高低があったとしても、それをハードルや跳び箱の様に平気で、走って行けるからだ。それ程に運動神経が良いのだ。


「ポン。ポン。トン。トン。タッ。タッ。タッ。タッ」


帆南ちゃんは両手でバランスを取る様にしながら、上手に人架け橋の上を渡って行く。帆南ちゃんが、通り越した後の子は前方の方へ向かって、走って行き、続きの人架け橋になりに行く。それが普通のやり方だが、帆南ちゃんの場合にはその方法は通じない? 何故ならば、帆南ちゃんは圧倒的に速い。なので、普通にやっていたのでは、人が間に合わないのだ。そこで、新葉が考えたのはこうだ。走ったら、間隔を空けて、人架け橋になる。走るのが遅い子は出来る限り、近い場所で人架け橋になる。逆に走るのが速い子は出来る限り、走って、ギリギリまで人架け橋にならない。これが詰まらない新葉が考えた方法だ。


一方で、紅組の選ばれた子になった子は二年生の大玉転がしの時に上に乗った子、帆南ちゃんのライバルとして君臨した子、A組の紅組、二年生の遠井星奈ちゃんだ。星奈ちゃんも人架け橋の上に乗った。


「ポン。ポン。トン。トン。タッ。タッ。タッ。タッ」


星奈ちゃんもまた、帆南ちゃん同様に人架け橋の上を渡るのがとても上手だ。大玉を上手に乗りこなす程の運動神経の良さだ。人の上を渡る位、彼女に取っては容易い事なのだろう? だが、帆南ちゃんの方が上であると、僕は思いたいと、新葉は思った。


「速く、速く、馬。踏台! 速く、走りなさい。踏み台が無いじゃ無い⁈」


帆南ちゃんが一喝する。途切れた踏み台(人)がまだ、届かないので、仕方無く、踏み台(人)を走らせる事にした。帆南ちゃんは走っている子の肩から、肩へと飛び乗った。


一方で、星奈ちゃんの方も途中で人架け橋になる人、踏み台になる子が間に合わないでいた。焦りからか? 星奈ちゃんはイライラとした様に見えた。


「あなた。速く来て!」


星奈ちゃんがイラつき、一喝を入れる。


「あっ。ハイッ! あっ。ああ。バタン!⁈」


星奈ちゃんに急に声を掛けられ、緊張した踏み台になる女子がバランスを崩して転んで、しまった。踏み台にするつもりだった子が、転んでしまった為、星奈ちゃんもバランスを崩してしまった。


「あっ。グニャ」


踏み台にするつもりだった子の背中に降りてしまった。


「まあ、背中に降りたのだから、良いわよね!⁇」


星奈ちゃんは次の子の背中に飛び乗った。踏み台にされて、転んでしまった背中に乗られてしまい、うげっと、してその子は完全に伸びてしまった。それを見た帆南ちゃんは唖然とした。


「あんた何やってんのよ! 幾ら何でも、転んだ子の上に乗るなんて酷いんじゃ無い?」


「これは不可抗力よ!」


星奈ちゃんは聞こえたのか? 言い返した。


「言い訳なんて、許せないわよ! 絶対に負けないんだから?」


帆南ちゃんは闘志を燃やした。


「言い方! 酷いなぁ? 不可抗力だって、言ってるのに〜! 私だって、負けないんだから!」


星奈ちゃんも俄然闘志を燃やした。二人は川に置いてある置き石。渡石の様に肩。背中。繋がれた手の上をどんどん乗って、走って行く。


「タッ。タッ。タッ。タッ。ボッ。ボッ。ボッ。ボッ」


帆南ちゃんは順調に加速して行く。


「帆南ちゃん。カーブになる。皆んな! 人柱になって立つんだ! さあ、来い!」


新葉は皆んなに声を掛けた。白線ラインを壁になる様に間隔を開けて、並んだ。


「ドンッ。ドンッ。ドサッ。ドサッ」


帆南ちゃんは胸。背中。腰。お尻。太もも。腹。有りとあらゆる場所を踏み、バネにして、身体を横にして、宙に浮く形で体を横にしながら、人の身体を踏み付けながら、バネにして自転車のカーブを利用した宙輪の様な走りで走った。


「ブハッ」


「ドカッ」


「ブフォッ」


「ズドッ」


「ガファッ」


帆南ちゃんはどんどん、足を捩じ込んで行く程の勢いで、生徒達をバネにして行く。生徒達はその勢いに立っていられない程の衝撃を身体に食らう。それでも、どんどんと前に進んで行き、その衝撃を受けに行く。


「速い。速い。磯崎帆南ちゃん。生徒達を蹴散らして、走って行きます。これが、人架け橋と言えるのか? 踏み台。否、生徒達は必死に耐えています。これは最早、猿の飛び乗り、リスですか? モモンガですか?」


アナウンスが白熱している。


一方で、星奈ちゃんもまた、普通にしていたら、負けてしまう為、背に腹は変えられないと言わんばかり、どんな方法を使ってでも勝つと言う勢いで、生徒達を踏みまくって、走った。


「ドガッ。ズバッ。ドンッ。ドシッ。ズドンッ」


星奈ちゃんは生徒達の事は御構い無しに、踏み付けて行った。


「ブファ。バハァ。ドバッ。パチンッ。ドドッ」


「ビシッ」


「ズバッ」


「ムギュ」


「ゴハッ」


星奈ちゃんの勢いに生徒達は泡を吹く。容赦無く、顔を踏み、頭を踏み、肩を踏み、腹を踏み、背中を踏み、腰を踏み、胸を踏んだ。乗れる所は全て踏んだ。


「ああ、こっちも酷いですね? 遠井星奈ちゃんが暴走しています。生徒の方は大丈夫なのでしょうか?」


アナウンスが流れる。


「!」


親指を立てて、グッチョ部の合図をした。生徒達は苦笑いの笑顔で、大丈夫をアピール!


「生徒達は大丈夫だと言っている様ですが、親御さんの方は如何でしょうか?」


その言葉を聞いた生徒達は観客席に向かって、首を横に振って目配せする。


「!」


観客席にいる親御さん達もグッチョ部の合図をして、生徒達に合わせる。


「ハー! 親御さん達も了承した様です? 凄い事になって来ました。このまま放送を続けて行こうと思います」


アナウンスも暴走して来た。


「いよいよ、ランニングラインを終えて、校庭の中に入って来ました。この直線を走り抜くと、一周目が終了です。この段階ではほぼ変わらないが、若干、白組の方がリードしています。この動向を見守りましょう!」


アナウンスの熱い語りを注目している。


「ちょっと、待ちなさいよー」


星奈ちゃんが帆南ちゃんを呼び止める。


「待つ訳ないでしょう! 勝負しているんだから!」


帆南ちゃんは激怒する。


「あっ。如何しても気になるのよ? 貴女が紅組から外れた理由を? 紅組が勝つに決まっているのに何故なの? 貴女みたいに勝気な子が負けるのが分かっているのに何故白組にしたのかって、別に友達が白組だからって、みすみす負ける選択を取る必要なんて、無いじゃ無い?」


星奈ちゃんは不思議を問う。


「何で、白組が負ける前提で話を進めているのよ。今年は白組が勝つの! 白組が勝つから、負ける紅組にいたく無いからに決まっているでしょう! 以前、絶対に勝つ筈だった紅組が白組に負けたのよ。白組が勝ったの! 今年も白組が必ず、勝はあの子が居る限り、だって、必ず、彼が奇跡を起こす物。新葉君が居る限り、貴方達紅組が負けるのよ!」


帆南ちゃんはそう言い残すと、二周目に入って行った。星奈ちゃんは納得も行かぬまま、帆南ちゃんの後を追った。



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