国譲り 中編

『おうひなた、こんなところにおったのか、探したぞ・・・油を売っておると卒業できんぞ』

 その声は・・・わあ、武御雷さん。って、出雲大社に来ることがあるんだ。

『いつもは大国主と囲碁や将棋を指しにくるのだ。ここので一杯やりながらあいつと勝負をするのが楽しみでな』武御雷さんっていったら天夷鳥さんと同じく武闘派だけど、そんな一面があったなんて知らなかった、年をとってえらく丸くなったわね。っていうか、大国主さんとは宿敵の仲じゃないの?

『何を言っておる、あいつとは仲がいいのだぞ。よく代官町に飲みに出歩いたり、山陰の耶馬渓やばけい立久恵峡たちくえきょうのわかあゆの里にキャンプをしに行ったりしておる』信じらんない、国譲りのイメージがくずれてゆくわ! だって、武御雷さんは大国主さんからこの国を奪い取ったのでしょう?

『奪ってなどおらんのだ』だって古事記にそう書いてあるじゃん。『稗田阿礼ひえだのあれもしょせん人間だからな、人間から見た表層の部分しかわからんのだ・・・そうじゃ、今から稲佐の浜へ行こう』

 国譲り交渉の現場の稲佐の浜・・・なにか秘密でもあるの? とりあえず誘いにのって行ってみることにする。

『よいか、人間をどうするかは喫緊の課題だったのだ』稲佐の浜へ行くときの定番コース、浜へとつづく国道431を歩きながら武御雷さんが話しはじめる。『4万年前にホモ・サピエンスがこの国に入ってきた。今までこの国にはいなかった種族だ。それまでののほほんと暮らしておった原人や旧人を次々と滅ぼして勢力を拡大していったのだ。折も折、伊邪那岐様と伊邪那美様の黄泉比良坂での約束で1日に500人ずつ増えることになったことも大きい』伊邪那美さまが1日に1000人くびり殺しては伊邪那岐さまが1日に1500の産屋を建てる、というあのことね。

『だがこれにはさすがの大国主も頭を痛めておった。この国はいわば大国主が一柱ひとりで作った国、頼みの少彦名は常世の国へ帰ってしまい、残った神様といえばやつの子供の頼りない百八十神ももやそがみばかり。統治機構などないに等しい。このままでは勝手に増殖する人間ホモ・サピエンスのなすがままこの国はめちゃくちゃになってしまう、とな』えー、そんな話初めて聞いたわ、人間は迷惑な特定外来生物だったのね。ヌートリアのこととやかく言えないじゃない。

『見かねた天照大神様が相談に乗るべく大国主に使者を出すことにしたのだ』・・・

 15分ほど歩いて稲佐の浜に着いた。今日もたくさんの観光客がはしゃいでる。そぞろ歩きをする人、写真を撮る人、靴を脱いで水の中に入ってみる人(季節的にまだきついわね)、地元の犬の散歩もいる。海岸の弁天島は出雲を代表する景色だけど、もうすぐ島じゃなくなるわね。すごい勢いで砂が溜まってゆくからすぐに陸地になっちゃうわ。そのうち海岸線がもっと遠くなって、あと何百年もしたらこのあたりは海岸の痕跡もなくなって、単なる砂地の大岩になっちゃうわね。まわりには家が建って集落ができて・・・この景色が見られるのも今のうちだけだわ。

『屏風岩へ行くぞ』武御雷さんが海に背をむけて家々の中へと進んでゆく。あたしもそれについてゆく・・・前にも紹介したけど、屏風岩は建御雷さんと大国主さんがこの岩のかげで国譲りの談判をしたっていう場所よ。家と家の間の狭いところに板状のいかにも崩れそうな岩が立ってて、今じゃ倒壊の危険があるから敷地は立ち入り禁止になってる。大きさは全然違うけど弁天島の仲間ね。

『あの当時はここが浜辺だった』武御雷さんが昔を思い出しながら説明してくれる。『もっと大きかったのだが、波と風雨に削られてこんなになってしまったな』かまわず敷地に入って行って右手でぱんぱんと岩をたたきながら懐かしそうに言う。『2000万年前から1500万年前にかけて臣津野おみづぬが日本列島をここまで引っ張ってきたとき、日本海の海底の地盤が引きちぎられてマグマが噴き出し、激しい火山活動となって、ここに流紋りゅうもん岩の火山砕屑さいせつ物が降り積もった。その層が長年の浸食によって島状に残ったのだ』おっと、意外なところでオミヅヌさんの名前が出てきた。ものごとは全部つながってるのね。

 武御雷さんはよっこらしょっと岩陰に腰を下ろしてなつかしそうにあたりを見回した。『このあたりもすっかり変わったなあ』かつての海浜はいまではすっかり住宅地になっている。

『話の続きだったな・・・天照大神様が大国主に遣わす使者は、高御産巣日様の主導のもと、天の安河原での神々の話し合いの結果、天穂日と決まったのだ』キマタが言ってたスケープゴートね。『何を言う、そんなものではない。天穂日には密命が下された。つまり大国主と協力して事を成し遂げよと・・・』え、協力? 『増殖する人間は統治機構が確立している高天原が受け持ちこの国を高天原の支配下に置く、しかしそれではこの国の神々が黙っていまい、そこで天穂日は大国主との交渉が失敗したで大国主のしもべを演じ、大国主にいじめられるをし、大国主は天穂日をいじめるをして国つ神の溜飲りゅういんを下げる、次に天若日子がこの国を奪うで遣わされたがこの国をわがものにしようと邪心を起こして失敗、仕方なくわしが大国主と対決したでこの国を奪うふりをし、高天原はその見返りというで出雲大社を建てる、という一大大芝居を打ったというわけだ』

 まあ、そんなウラがあったのね! それで計算どおり国つ神は騒がず、高天原から降りてきた神さまの子孫がリーダーになって人間を統治したってわけね。それでそれを知ってるのは? 『天夷鳥以外の高天原の神様と大国主だけだ。天夷鳥はこのようなこと絶対に許さぬであろうからな・・・いやあ二神ふたりとも見事な演技、天夷鳥とこの国の神々は誰も気づいていないのだ』さっきの天穂日さんの情けなさぶりが演技だったなんて・・・にわかには信じられないわ。天夷鳥さんもころっとだまされて・・・しかし事情を知ってる割には天穂日さんけっこう落ち込んでたわよ。そうか、演じてるうちに次第にその気になってくるんだ・・・でもそんな秘密をあたしなんかにしゃべってもいいわけ? あたしって・・・。

『はっはっは、本当にダダ漏れだな。思わなくてもわかるぞ。しかしもうよいのだ、あれから4万年、人間みづからの統治機構もできておるし、そろそろタネを明かして神様たちの反目を解こう、と245年に天の安河原会議で決まったのだ』古っ! っていうか、もっと他のやりかたはなかったの? だいたい高御産巣日さまってなんかいいイメージがないのよね、造化三神ぞうかさんしんとかいって宇宙の最初にあらわれてすぐに身を隠したんだから、そのままずっとひっこんでればいいのに、なんであとになってそんなシャシャり出てくるのよ?

『しかし問題なのが大国主の二柱ふたりの子供である事代主と建御名方だ。こっちは茶番と知りながらも相手にそれを悟られるわけにはいかず、本気の応対となってしまった。事代主は国譲りを承諾したあと船を傾けて青柴垣あおふしがきの中に籠ってしまい、そのとき打った天の逆手さかて[6]の妖気が出雲を覆っておるし、建御名方のほうは本気でやり合って諏訪にまで追放してしまったからな、相当な恨みを抱いておるはず・・・そこでだ、この二柱ふたりの恨みを解くには利害関係のない第三者の説得が必要と判断されたのだ』

 事代主さんにはまだ一度も会ったことがないけど、それはひきこもりになっちゃったからなのね。ヒッキーを外に出すのはむずかしいわよ。建御名方さんは神在祭のときに会ったわ、とくに恨みをひきずってる様子じゃなかったんだけど・・・でも足は諏訪から出さないことを律義に守ってたし、あんがい心の底ではこんちきしょーって思ってるかもしれないわね。ところで利害関係のない第三者のあてはあるの?

『だからひなたを探しておったのだ。この件には何の関係もなかろう、しかも神様ですらない』えっ、えーっ! あたし!? ちょ、ちょっとまって、そりゃああたしは何の関係もないし別の種族だし、生まれたのも平成だしオンナだし、空飛べないしバチあてらんないし・・・言えば言うほど適任じゃない!

『高天原はこの件をひなたに任せることにした、これは高御産巣日様のご判断である』だから、シャシャり出てくんなって!

 ムリムリムリ、神さまには謝ったことしかないんだから。謝るのはテキトーなこと言っとけばいいけど、説得なんてできっこないじゃない。ヘタしたら逆恨みされて呪い殺されるわ! 『そのあたりもちゃんと計算しておる。ひなたを呪うことで怒りが収まればそれにこしたことはない』あのなー高御産巣日さんってそんな発想しかできないの!?

 しかし宇宙ナンバー2(ナンバー1はあの天御中主さまよ)の神さまに睨まれたからには断るわけにいかない。断ったらどんなバチがあたることか・・・。『それでは快諾したということで高天原には報告しておく』

 でも事代主さんがどこにいるのかわからないし、建御名方さんに会うには長野県まで行かなきゃなんないのよ。どうしろってえの?

『事代主が籠っておる青柴垣あおふしがきは普段は海底に沈んでおるのだが、年に一度4月7日の美保神社の青柴垣神事の日に浮かび上がってきて神事を見物し、高天原への復讐の誓いを新たにするのだ。また建御名方はときどき、佐伎多さきた神社や鳥屋とや神社の掃除をしに帰ってきておる、明日は鳥屋神社のほうかの、むろん足は諏訪に置いたままだ』

 りょ、了解したわ、しかたない、当たって砕けろか。『それでは快諾したということで・・・わしは因佐いなさ神社へ寄っていくとしよう』そう言って武御雷さんはよっこらしょと立ち上がり、屏風岩の前の道を奥へと歩いて行った。この先には武御雷さんをお祀りした小さな神社がある。できた当時は屏風岩と同様おそらく波打ち際だったのだろう。

 たいへんなことを引き受けちゃったよ、しかし国つ神であるキマタを連れてくわけにもいかないし・・・。


 つぎの日、あたしは武御雷さんが言ってた鳥屋とや神社へとむかった。もう学校は春休みになってるから授業の心配はないけど、友達がみんな就活にいそしむ中、あたしはいったい何をしてるんだろう。まさに腐れ縁よ!

 鳥屋神社は斐川平野の西の端、斐伊川のちかくにあるんだけど、バスも何も通ってない、田んぼのまんなかにぽつんと建ってる神社だ。あたしのへやから6キロあまり、しかたなく自転車で走るけど、こりゃあしんどい・・・まわりが一面田んぼで道も細くて曲がるところの目印もなくてわかりにくいったらありゃしない。だが何とかたどりつくことができた。

 広大な田んぼが広がっていて、茫漠ぼうばくとした景色ね。そんな中に神社の建物だけがまるで忘れ去られたようにぽつんとたってる。ほんとに忘れ去られてない? ・・・境内わきの駐車スペースに自転車をとめると、まわりこんで改めて正面の鳥居から境内に入る。今日、建御名方さんがここのそうじをしに来るのだ。境内はちょっと荒れた印象だけど、ちゃんと地元の人がお世話をしてるよね。

 やることもなくボーっとつっ立ってる。車なら中で休憩できるんだけど、自転車じゃ所在ない。物音ひとつしない、春の昼下がり。

 やがて、周囲の木々がさわさわと葉擦れの音を立てはじめ、かすかな風が頬を撫でていく。そして一反木綿があらわれるようにいきなりヌッとその長いからだが境内の中に入ってきた。

『おう、これはひなたではないか、神在祭のとき以来だな・・・こんなところで何をしている?』と遥拝所の貼り紙をはがしながら建御名方さんが話しかけてきた。え、っと、もちろん参拝にきたのよ。それと、参拝と・・・それに参拝をしに・・・。

『そうか、こんな辺鄙なところに来てくれるとはな、しかも偶然今日か』い、いや、偶然でもないのよ・・・ああ、どこから何をどう話していいかわかんない! あたしダダ漏れなんだから勝手に事情を読み取ってくんないかな!

『この前とは違って今日はかたくなに心を閉ざしておるな。何か心配事でもあるのか、おれでよければ話してみろ。こう見えてもれっきとした神様だぞ』はっはっはっと笑っているその笑顔、もうすぐ憤怒ふんぬの表情になるんだ・・・。

 あ、あの・・・とあたしは恐る恐る切りだしてみる。国譲りのことなんだけど・・・。

『国譲りがどうかしたか、もう終わったことだ』い、いや、そうでもないんです・・・あたし、説得を頼まれたんです、武御雷さんに『武御雷だと!? 諏訪に籠ったとはいえあいつはおれの永遠の敵、出雲にはあいつを祀る神社があるがその全社を制覇するのが目標だ!』そんなに熱くならないで! 実は国譲りはだったの!

 建御名方さんは一瞬きょとんとし、そして次第に顔が赤くなってゆく。『な、な、な、な、な、なんだとおっ』感情がほとばしったおかげかあたしの心がいつものダダ漏れモードになったみたいで、全ての事情を察してくれた。『それは誠か、うぬー武御雷許すまじ! いったいおれは何のために諏訪に籠っておったのだ』そうですよね、そうなりますよね! しかしここはいったん落ち着いて、深呼吸して、あたまを冷やして、こころやすらかに『おのれ武御雷、絶対に許さん! オヤジもオヤジだ、なんと水臭い、子供を騙す必要がどこにあろう』そりゃあどんなところから漏れるかわからないからね、カベにミミありだわ、ほら出雲大社のカベって薄いから『何を言っておる、出雲大社のカベの板は広くて分厚いのだ[7]! 漏れるわけがない』だめだ、建御名方さんの怒りが止められない。

『そんなことならもう諏訪に籠る必要はない、こっちに戻ってくるぞ!』建御名方さんの胴体がちぢみだしたかとおもうと、しばらくして東のほうから下半身がビューンって飛んできた。ちょっとヤバい、むこうの神社が神さま不在になるわ、諏訪観光協会におこられちゃう! 『御神渡おみわたりは分霊に任せるから安心せい』

 上下胴体がそろった建御名方さんは麗しい壮夫をとこになって、歩き回った。そして神社の本殿を指さしてまくし立てる。『4万年前、おれは武御雷と岩を投げ合って勝負したのだ。その岩があの本殿の下に埋まっている』え? なんでこんなとこにそんなものが? 『おれは武御雷に対して千引岩を両手で担ぎ上げ「わが国に来てわけも無いのに国を譲れとはけしからん」とその岩を投げつけたのだ。しかしあいつは巧みにそれを避けて反撃に出た。その千引岩は内海に落ち、そこへ多くの鵠が群がってまるで鳥小屋のように見えたのでこの地を鳥屋とやというようになった。そしてその岩の上にこの神社が造営されたのだ[8]。そして内海が埋まり、周囲が田んぼになったというわけだ・・・だから今からその岩を掘り起こし、リベンジをしかけるぞ』

 そう言って建御名方さんはつかつかと本殿にちかづいてゆき、その柱の根元に両手をかけると思いっきり上にひっぱりあげた、本殿の木材がメキメキメキっと音を立てて引きちぎられ、崩れ、倒れ、すごい粉塵がおさまったあと、そこにはおおきな穴があき、その中には巨大な岩が・・・これも弁天島の仲間ね、って思う間もなくそれに両手をつくと一気に持ち上げた・・・あーあ、神社を掃除しにきたのに壊しちゃってどうすんの? 『あとは氏子に任せる!』そう言うと建御名方さんはその巨大な岩をかかげてずんずんっと稲佐の浜めざして歩いてゆく・・・説得失敗だわ。とにかくえらいことになりそうなのであたしも浜へ行かなきゃ。

 いそいで自転車で(遠くてもどかしい!)田んぼの中を走り、国道184に出て斐伊川を渡って市街地に入り、駅にもどって、ちょうど発車しそうになってた日御碕ゆきのバスに飛び乗った。出雲大社を過ぎ、稲佐の浜へむかういつもの国道431を走って稲佐の浜入口のバス停で飛びおりると、日御碕へつづく道路との三差路のむこうの浜で建御名方さんと武御雷さんが対峙しているのが見えた。

『おのれ武御雷! 積年の恨みを今果たさん!』建御名方さんは例の巨大な岩を高々と頭上にかかげて今にも投げつけそう。対する武御雷さんも同じように大きな岩を頭上にかかげながらも余裕の表情で立っている。あの岩はもしや・・・日御碕へいく道の途中から見えてた岩! 武御雷さんと建御名方さんが力くらべで稲佐の浜から岩を投げあったんだけど、どちらも力が互角で何回も同じところに落ちて積み重なった岩だわ。ああ、日本遺産の構成文化財が・・・。

『建御名方、わしは年老いたとはいえかの武御雷、まだまだ若いもんには負けん。どうだ、ここから海へ岩を投げ合ってみぬか、目標はこのつぶて岩があったところだ』『いいだろう、こんどこそおれが勝つ。天つ神の好きにはさせん』

 二柱ふたりはそう言い合うとお互いを睨みつけ、そして大岩をかかげたまま海に向かって構える。はりつめた空気にあたしのからだは硬直した。そんな中、『ひなた、掛け声だ』いきなり武御雷さんがこっちに要求してきた。か、かけごえ、かけごえ・・・な、なんでもいいや、両者位置について・・・よーい、それっ!

 二柱ふたりはかかげていた大岩をいっせいに力いっぱい海へと投げつけた! 2つの岩は空気を切り裂きいきおいよく飛んでゆく。次第に小さくなり、そして見えなくなる寸前その2つは音を立ててぶつかり合い、海に落下した。しばらくして大きな波が浜に打ち寄せ、はしゃいでいた観光客たちは歓声をあげてばしゃばしゃと逃げる・・・あそこのあたりはちょうどつぶて岩があったところね、武御雷さんえらい! これで出雲の観光も守られるわ。

 2倍の大きさになったつぶて岩をながめながら、二柱ふたりはどちらからともなく声を上げて笑い出した。『いや、おぬしにこの茶番劇を漏らすまいとどれほど我慢したことか、ああ、大変であった、これでよく眠れるぞ』『諏訪の暮らしもなかなかのものだった、なにせあそこはおれがおらんと経済が回らないのだからな』二柱ふたりははっはっはっはっと笑い合い、抱きあった。『いやあ、建御名方も若いのになかなかやるのお』『ご老体には負けんと思っていたが、さすが武御雷様』そうよ、ドローよ、イーブンよ、ノーサイドのフィフティフィフティよ、よ、よかったー。『ひなた、よく話をまとめてくれたな、礼を言うぞ』いやあ、勝手にまとまってくれただけで、お礼なんて、そんなー、めっそーもない、えー、すみませんそれじゃあ6単位ほど・・・。

 二柱ふたりはすっかり意気投合してしまい、武志の膳夫かしわで神社跡に最近できた櫛八玉さんのお店「割烹・御舎みあらか」に飲みにいってしまった。

 ・・・ああ、これで大役も半分終わったわ、あとは事代主さんのほうだけど・・・青柴垣神事の日に美保関まで行かなきゃなんないのか、一度も会ったことないしなあ、どんな神さまだろ。船を傾けて青柴垣にこもるって、もしかしたら天穂日さんみたいなネチネチした粘着質の神さまだろうか。不安だなあ。

 波が寄せるごとにきらきらと水面がきらめき、3月のやわらかな日の光の中、人々はなにごともなかったように思い思いにはしゃいでいる。多くの神さまたちに守られて。


[6]恨みのこもった呪術的な拍手かしわでだが、具体的な方法はわからない。

[7]日本書紀第九段一書第二の記述です。

[8]鳥屋神社の説明板による。

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