失恋の楽しみ方

aoinishinosora

第1話こわれる

 手首から流れる赤い物を見ていた。

これは私の生きている証。痛みがないと見ることが出来ない証。この平凡な私が何故こんな事をしているのか。恋なんかしたから辛くなる。一度温もりを覚えたら離したくなくてもがき苦しんだ。そんな私はとても無様で滑稽だった。


 私と別れて彼は新しい人を手に入れた。彼よりもとても仕事が出来る彼女は上司のお気に入りだった。彼には勿体ない位出来た人だった。プライドが高い彼が彼女と付き合うとは思わなかったし、彼が社内恋愛を繰り返すとは考えていなかった。

キッカケは何でも良い。少しの不安を彼に気付かせればよい。


「上司のお気に入りだから付き合ってるの?」


彼に言葉をかけた。彼は何のことか分からない素振りをしていたが目が全てを物語っていた。完全に彼女の地位を気にしだした。2回の週末が来る頃には人2人の関係はギクシャクしていた。


それが分かっただけで私は嬉しかった。


 それから数日たった頃、彼は突然早退した。こんな事は珍しい。オマケに理由が笑える。〝お母さんが、ケガをしたから〟付き添って病院に行くようなよく出来た息子では無いのに…。彼女とデートかな?休みを突発で取ってまで?もしかして彼女妊娠でもしたかな?

 仕事中色々考えて夜に彼女のアパートへ彼の車があるか確認しに行くことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る