閑話休題1 『魂の座』

世界観の説明がまだなのに3人目出すなって怒られた件

暗闇に、浮かぶ。

12体の黒いモノリス。

その表面にはそれぞれ、部署名が浮かんでいる。


《第12異世界資源課》

《魂流通調整室》

《候補者戦略本部》

《民度審査管理室》──


ここは、リライフリンク中枢評議空間。

通称、魂の座。


私はその中心に設けられた円形プラットフォームに座り、両手を組んで口元に添える。

かの有名な“何かを計画してる人”っぽいポーズである。

今日のために、サングラスも用意してきた。

──が、実態はただの吊し上げ中。


転生スキーム会議、今回の議題は、

「第3話に入ったのに世界観の説明が不足している件」だ。


……地獄か?


《光柱001/候補者データ対策局》

「該当作品、PVの伸びが鈍化している。現時点でのスキ数:4。読了率:27%」


《光柱002/地球環境調査室》

「物語構造および転生スキームの説明が不足。読者にとって不親切な進行が確認されている」


《MiNa/魂解析AI》

《読者アンケート集計──理解度スコア12%。

“転生面談の仕組みがよくわからない”との意見が多数》


「いや、それ作者の仕事でしょ……ってか、なにしれーっとMiNaもそっち側なのよ。あんたはこっち!」


思わず漏れたツッコミに、モノリスたちの光が一斉に点滅する。

しまった、怒られた。


《光柱006/UMO中央調整委員会》

「君の所属は、UMO──多次元世界統一管理機構傘下、リライフリンク人材戦略第九課。説明を求める」


「地球担当、シエル・アークライトでーす」


片手を軽く上げて返事をする。

この場の緊張感に比して、わたしはわたしである。


《光柱006》

「業務の本質を述べよ」


「はいはい、えっとですね──」


脚を組み、いつもの営業トーンで口を開く。


「各異世界に有用な人物をスカウトして、転生者として送り込む。

その人物が異世界で偉業を成せば、秩序は安定し、文明は進化する。

その利益が、UMOの統治力と経済資源に直結する。

うちの部署は、その一次選考を担ってるってわけ。

つまり……異世界配属の面接官、ってとこですね」


《光柱008/地球文明監視室》

「その面接が、3件連続で“ゴミ人材”を排出している」


「それは……地球の民度が悪いんじゃないですか?」


MiNa

《直近3候補:怠惰型、復讐型、支配欲型。

いずれも“やり直しに適さない魂”として評価C以下です》


「むしろ、よくここまで地雷揃えたなって褒めてほしいレベル……」


《光柱001》

「このまま数値が改善しない場合、早期テコ入れとして“水着回”の挿入が検討されている」


「え、いや、それは……やりすぎじゃ……」


《光柱004/異世界エンタメ戦略室》

「視覚刺激による読了率の改善は、統計上でも有効とされている」


MiNa

《“肌色コンテンツ”は一定層の滞在率と拡散率を保証します》


モノリスのひとつが沈黙し、光が一段と強くなった。


「異世界補完計画に、遅れは許されない」


「計画通りに進行せよ」


「面談担当官の裁量に委ねる」



モノリスの光が、ひとつ、またひとつと消えていく。

やがて、光が戻った




MiNa

《老人たちが焦るわけです》


「……全て、我々のシナリオ通りだ。問題ない」


私はゆっくり立ち上がる。

片手でタブレットを閉じながら、ひと言。


「少し──頼む」


金属製の扉が開く。

静かな足音だけを響かせて、地下へ降りていく。


そこは、“Salvation Coffin”と呼ばれている空間。


巨大な水槽が幾重にも並び、

透明な液体の中に──無数の少女のヒトガタが、

静かに、目を閉じて漂っていた。


その髪も顔も、微妙に異なる。

だが、全員が同じ制服のような白いボディスーツを着ている。

そして、どれもが、MiNaの“器”だった。


私は水槽のひとつの前で立ち止まり、

何も言わず、そっとガラスに手を当てる。


指先が、ほんのわずかに冷えていた。

ガラス越し、タグの光が規則的に明滅している。


「……全ては、これからだ」




******


《次回予告》

異世界ホストクラブ“CLUB GOD”で、酒と香水にまみれた地雷女が指名するのは──たったひとりの“担当”。

担当(ホスト)は神。

彼がくれた一杯の水と、ひと言の「かわいいね」がすべての始まりだった。

リライフリンク第九課、初の地雷型案件にMiNa受肉で挑む!


次回

『担当(ホスト)は神。神に殺されても本望です』


さーて次回も、サービス……すると思った?

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