白球を追いかけて(夏の甲子園地区予選の歌)【カクヨム短歌賞10首連作部門】

大和田よつあし

十首連作【横書き】

◆十首連作部門


監督の訓示は勝つぞのひと言

ダークホースは我らのことぞ



握りしむバットに鈍き音の鳴る

ふわんと球は内野を越えり



飛び込んだベースにジャッジの沈默

広がる腕に噴き上ぐ熱気



連打する味方の士気は最高に

ホームベースを泥臭く踏む



好調のエースは打者を唸らせる

ミットをくゆる最高の球



空間を斬り裂くツバメの飛翔なり

内角低め空振る軌道



野球帽外し汗拭う投手が見上げた夏は

最終回へ



試合後の最後の礼を交わし合う

仰ぐエースの声なき叫び



グランドの鋭いノックに飛びつけば

灼かれた汗と乾いた匂い



応援席のアゲハ蝶

ファインプレーの歓声に再び空へ


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