第8話 女子柔道部 ぴーでぴーな表現をいつもの方法で逃げて 2000文字で本文を書いて
柔道部での日常
「はぁ……もう無理……」
畳の上に大の字になって倒れ込んでいるのは、女子柔道部のエース、桜庭ひなた。今日も今日とて顧問の鬼コーチ、山岡先生のしごきに耐えきれず、限界を迎えていた。
「おい桜庭! そこでへばってる暇があるなら受け身の練習だ! 今日のノルマが終わるまで休憩は無しだぞ!」
山岡先生の檄が飛ぶ。ひなたは「ひえっ」と情けない声を出しながら、なんとか体を起こした。筋肉痛でパンパンになった体に鞭打って、ふらふらと立ち上がる。
「は、はいぃ……」
今日の練習メニューは地獄だった。乱取り10本、打ち込み100本、そして寝技の反復練習。普段から男子部員顔負けの練習量をこなしているひなたでも、さすがに今日はきつかった。
「まったく、最近の若いもんは根性がない」
山岡先生は腕を組み、冷ややかな視線をひなたに送る。その言葉に、ひなたの同期である佐藤あかりが口を挟んだ。
「先生、ひなたは毎日頑張ってますよ! それに、もうすぐ全国大会なんだから、あまり無理させたら……」
「佐藤、お前は甘やかしすぎだ! 全国大会なんて甘いもんじゃない。もっともっと強くなければ勝てん!」
山岡先生の迫力に、あかりは口をつぐんだ。ひなたはそんなあかりに目で感謝を伝えながら、再び受け身の練習に入った。
何度も何度も、畳に体を打ち付ける。そのたびに全身に響く鈍い痛み。しかし、ひなたは決して諦めなかった。全国大会で優勝するという目標のために、この痛みに耐えなければならない。
練習が終わったのは、日がすっかり暮れてからだった。部室に戻ると、ひなたは制服に着替える気力もなく、床にへたり込んだ。
「ひなた、大丈夫?」
あかりが心配そうに声をかける。
「うん……でも、足が棒みたい……」
ひなたは情けない声で答えた。あかりは苦笑しながら、ひなたの隣に座る。
「今日もお疲れ様。よく頑張ったね」
その優しい言葉に、ひなたは少しだけ元気を取り戻した。
「あかりもね。いつもありがとう」
二人で他愛ない話をしていると、部の先輩である山本先輩がやってきた。山本先輩は3年生で、ひなたたちが1年生の時からずっとお世話になっている。
「あら、まだ着替えてなかったの? 早くしないと風邪ひくわよ」
山本先輩はそう言いながら、ひなたにあたたかいタオルを差し出した。ひなたは「ありがとうございます!」と礼を言い、タオルを受け取った。
タオルの温かさが、ひなたの疲れた体にじんわりと染み渡る。なんだか、心がほっとするような温かさだった。
「先輩、今日もお疲れ様でした」
あかりが山本先輩に声をかけた。
「ええ、お疲れ様。あなたたちもね」
山本先輩はにっこり微笑んだ。その笑顔は、ひなたにとっていつも癒しだった。
しばらくして、ひなたは重い体を起こして着替えを始めた。制服に着替えるのも一苦労だ。特に、ブラウスのボタンを留めるのが難しい。指先が震えて、なかなかボタン穴に入らない。
「もう、手が震えてダメだ……」
ひなたがため息をつくと、あかりが手伝ってくれた。
「ほら、私がやってあげる」
あかりの指がひなたのブラウスのボタンに触れる。その指先から伝わる温かさに、ひなたはなぜかドキッとした。顔が少し熱くなるのを感じた。
「あ、ありがとう……」
ひなたは視線をそらして、気まずそうに言った。あかりはそんなひなたの様子に気づかず、黙々とボタンを留めていく。
着替えを終え、部室を出ると、外はもう真っ暗だった。ひなたはあかりと一緒に家路につく。二人の間には、柔道着が擦れる音と、虫の鳴き声だけが響いていた。
しばらく歩いて、ひなたがポツリとつぶやいた。
「ねぇ、あかり。全国大会、私、頑張るから」
あかりはひなたの顔を見て、にっこり微笑んだ。
「うん、知ってる。ひなたなら大丈夫だよ」
その言葉に、ひなたは勇気づけられた。あかりの言葉は、いつもひなたの心に温かい光を灯してくれる。
「ありがとう、あかり」
ひなたはそう言って、あかりの手をぎゅっと握った。あかりは驚いたような顔をしたが、すぐにひなたの手を握り返してくれた。
二人の手は、まるで吸い寄せられるようにぴったりと重なり合った。その温かさに、ひなたはなぜか涙が出そうになった。
柔道は、一人で戦うものだ。しかし、決して一人ではない。仲間がいる。支えてくれる人がいる。そのことを、ひなたは改めて感じた。
全国大会まで、あと少し。ひなたは、この仲間たちと、そして自分自身のために、最後の最後まで戦い抜くことを誓った。
翌日も、ひなたたちは柔道着に身を包み、畳の上に立っていた。山岡先生の厳しい指導は続く。しかし、ひなたの心はもう折れていなかった。
汗と涙と、そしてたくさんの温かい気持ちが詰まった柔道部での日々は、ひなたにとってかけがえのない宝物だった。
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