第27話(最終話) 永遠の焔、未到の世界、優雅な転、理の特異点

バルザーヌが砂煙を見つめる。


「誰だ、アルスの空間決壊を外部から破壊する事とは」


砂煙の中に立つ人影が喋る。その声はどこか聞き覚えがある声だ。


「そうだな、永炎のフレアとでも名乗ろうか」


「虚殺黎明アウェイク・ヴォイド」


バルザーヌが死の気を溜めて、砂煙の中に攻撃しようとするがすぐに死の気が浄化される。


「クソッ、傀儡戎くぐつ かいの小細工か……」


すると砂煙の中央が赤く輝き始める。


「炎砲ヘル・バーストッ……!」


そして、砂煙が爆風で消え去り赤き輝きがバルザーヌを覆い尽くした。


「お……お前はッ……!?」


「帰ってきたぞ、すべてを超えて戻ってきたぞッ!」


間違いない、この目で見た。

赤い髪に燃えるような瞳。


『フレア・アルベリヒッ!!?』


すると、炎光を払い除けてバルザーヌが再び攻撃体制に入った。


「虚殺黎明アウェイク・ヴォイド」


バルザーヌから死の気が放たれる。


「全力超躍マックスフライッ!」


空気を圧縮して世界の動きを重くする。

それでも、バルザーヌはこの一瞬で目の前まで距離を詰めていた。


「喰らえッ!空気反発エアーズームッ!」


マックスの腕から勢いよく空気が放たれ、腕を加速させてバルザーヌの顔面を殴りつける。


「グハッ……」


そのままバルザーヌは吹き飛んぶ。受け身を取ってそのまま立ち上がり、俺に指を指す。


「黒野零くろの れい……貴様だけは、死の忘却に送り込んでおかなくてはならないッ」


するとバルザーヌは姿を消して、俺の視界から離れる。


「貴様は道連れだッ!」


姿がしないのに、声だけが聞こえてくる。


「道連れだとッ、どこだ……どこにいやがるッ!」


「お前は詰み《チェックメイト》だッ!」


頭上からバルザーヌの声と死の気が急に現れる。


「空気反発エアーズームッ!」


全開マックスの拳が素早く飛び出るも、焦りもあるせいかバルザーヌに受け止められる。


「しまっt……」


―――


「これがあんたの言ってた”神”ね、しっかりと伝わったわ!」


「行け、世界マンバ!あの、男を殴り飛ばしてやるのよ!」


ドガガガガガガァァァァァァン


―――


「た……」


急に目の前にいたバルザーヌが消える。

それもただ消えたわけではない。ものすごいスピードで飛んでいったみたいだ。


「零、わたしも助けに来たわよ!」


背後から声がかけられる。この声、聞き覚えのある声だ。

さらに、脳内にも語りかける声が響く。


(我々が助けに来たぞ、久方ぶりだな。零)


「お前は……琴乃世界ことの せかいか!」


振り向くと、そこには金ピカに光る髪が俺の視界を潰す。

琴乃世界、伏見のことがあってから全然気にできなかったが、無事で良かった。


「助けに来たわよ!」


「お前……世界マンバが見えるのか……?」


(そのとおりだ、世界はフレアという男から神格者としての素質を出す方法を教わった。今では黒野零と対等に戦える神格者だ)


世界マンバが自信げに世界のことを話す。

すると、バルザーヌが飛びかかってくる。


「馬鹿げた真似をッ、我が死の柱”バルザーヌ・ドンドレド”に叶うと思っているのかッ!?」


「空気反発エアーズームッ!」


「うおおぉぉぉぉぉぉ、お前の負けだッバルザーヌゥゥゥゥ!」


ドカァァァァ……


全開マックスの拳がバルザーヌを叩き、バルザーヌは大きく吹き飛ぶ。


「はぁ……黒野……零ッ!」


しかし、着地時に勢いを押し殺し逆に反動で再び向かってくる。


「諦めの悪いヤツめ……」


だが、俺もさっきのラッシュで息が上がっている。

このままではそのまま攻撃を食らってしまう。


「ここは私に任せて!」


すると、世界が俺の前に出てきてバルザーヌを待ち構える。


「止まって!私だけの世界!」


―――


【琴乃世界視点】


「ふぅ……世界マンバ、行くよ!」


「もちろんだ」


深く息を吸い込む。


「いけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


大きく叫び、世界マンバを鼓舞する。


「バルザーヌ、貴様は我には敵わない」


世界マンバの拳が静止した時の中でバルザーヌの顔面、腹部、体中を殴りまくる。


「世界は再び動き出す!」


―――

【黒野零視点】


「……ッグアハッ……!!?」


目の前でバルザーヌが中に舞う。


「あんた……いや零!あいつにトドメをさすのよ!」


世界が振り返って俺の後ろに下がる。


「ああ、やってやるぞ!」


「ふう……」


深く息を吸い込み吐き出す。

思い返せばいろいろな事があった。

全開マックスと出会い、雅たちと出会い……出会いがあれば別れもある。それがこの世の条理だもんな。恨んでも仕方ない。だけど……


「この恨み、果たさせてもらうぜッ!」


影狼、要、赫、焔、戎。数多くの仲間を失った。失ったものはあまりにも大きすぎる。だけど、失った分だけ新しい仲間が居る!雅、フレア、世界、司……他にだって日常生活で関わってきた人はたくさんいた。


「勝者はこの俺だァァァァ!!」


この出来事は、世間には知られることのない。とても切ない出来事だ。

だけど、俺たちの心には確かに刻まれた。生の意味も死の意味も。


「戎、安らかに……」


「全力反発エアーズーム・マックスフライッ!!」


地面を精一杯蹴り上げる。太陽の逆光で見えるバルザーヌの姿に神秘など感じない。

今のバルザーヌは釣り上げられた魚よ!


「うおおぉぉぉぉぉぉ、おらぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!」


拳が一発一発バルザーヌを確実に捉える。

思い一撃がバルザーヌを吹き飛ばそうとするが空気と同時に吸い込まれて逃げることができない。

さらに一発、さらにもう一発。バルザーヌの体を殴り続ける。


バサッ


「終わりは……切ない」


バルザーヌの体は朽ち、見る影もない。


「フレア、念には念をだ。燃やしてくれ」


フレアが駆け寄り、バルザーヌだった物を焼却する。


「これで……終わったのか……」


「フレアちゃん、無事だったのねぇぇぇぇ!!」


「ち……ちょい、抱きつくなよッ!」


雅は相変わらず、仲間が好きなんだな。

気づけば俺は戎の亡骸の前に居たさ。


「戎、終わったぞ。じn……お兄さんには会えたか?赫たちに会えたか?」


「……俺たちの活躍……見てくれたか?」


視界がぼやける。本当に、本当に辛い。


「零……泣くなんて男らしくないぞ!」


バシィィィン


「痛ぁぁぁぁぁぁぁ!!?」


世界が俺の背中を本気で叩く。


「悲しみに浸らせてくれよ……!」


そんなことを言ったが思わず、笑みがこぼれる。

確かに仲間が死んで辛いし悲しいさ。けれども、別れは必然。結局は離れることになるんだ。

後ろ向きな考えは帰って自分を苦しめる。


「世界、ありがとう。助けに来てくれて」


「べ……別にあんたの……零のために助けに来たわけじゃないわよッ!」


「ふふ、ホントかな?」も……もー!


今思えば俺はなんのためにバルザーヌを討ったのだ?

仲間の仇を討つから?元はといえば俺がシュート?を発動させたからなのか?

俺の家族を殺した犯人もわからない。だけど今は忘れたい。今だけでも忘れたい。

世界と一緒に居るこの瞬間だけでも。


「戎と焔はしっかりと弔おう。そうしないと、安心してあの世に行けないだろ」


「そうだね、戎ちゃんと焔ちゃんのためにもしっかりお葬式してあげないとよ」


「ああ、俺はアイツらのことよく知らないが、仲間になったからにはしっかりと弔うべきだな」


―――


「全開マックス、原罪を覚えているか?」


「ああ、もちろんだ。だが……」


「わかっている、まだ零と居たいのだろう?」


「わかっていたか、さすがは友だ。我は零と出会って友情が芽生えた。神と人、到底わかり合えないだろうが、我は零と共に困難と立ち向かってきた」


「それにバルザーヌは消えてなくなったから原罪を赦すこともできなくなったからな」



シュート《Shoot》/ エスカトンの逆説的原罪論、完

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