第17話 そして、怒りの弾をこめた③

 センパイはもう10分以上、壱瑳いっさってヤツと話をしている。


 私は少し離れたところにヨッシーを守るように立っていた。


 クソ野郎いっさがヨッシーの名前を呼ぶと、ヨッシーは何を怯えているのか??!!涙を流してヨロヨロとクソ野郎の所へ行こうとする。


 髪の毛が逆立って、はらわたが煮えくり返る。

「ヨッシー!ダメだ!!」

 先ずは言葉でヨッシーを引き止めてから私は壁に向かい、左手を真っ直ぐ伸ばして腕の長さを確かめる。

 次に肘を曲げて握りこぶしでゆっくり弧を描いてみる。

 それから拳を握ってその硬さをを確かめてみる。

 やはりだ!

 あの試割り板を持っていた“過去の先輩”は……

 影日向くんを着て空手をやっていたんだ!


『影日向くん! 影日向くんを着ている時は、私の膝はなんだよね?』

 と影日向くんに確かめる。


『杏ちゃん!何をする気?』


 私、すっごく怒っている。だけど影日向くんのおかげで醒めているんだ。

 一発だけ、たったの一発だけだよ


 僅かの間があって、答えてくれた。


『膝は問題ないよ』


 よし!!


 私はヨッシーの肩を掴んで引き留めると、代わりに脱兎のごとく飛び出した。


 奏センパイとの間に割り込んで“クソ野郎”の鼻先に飛び込むと、左足に重心をのせ押し出すように膝と腰を回転させる


「ぶっ殺す!!!」


 クソ野郎に思いっきり肝臓リバーブローを食らわせてやった!!


 ヤツはその場に崩れ落ちる。


 奏センパイは叫び、ヨッシーは固まってしまっているようだ。


 だから後ろを見ずに答えてやった。


「残念だけど、これくらいじゃ死なない」


 私は口から何か汚いものを吹き出しているクソ野郎を睨みつけた。

「これ以上、花織に手を出したら、今度こそぶっ殺す!!!」



 それから私は後ろを振り返った。

「行くぞ!!花織!!」

 奏センパイは何か言いたそうだったけど、

 私はヨッシーの腕を掴んでずんずん歩き出した。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る