第7話:敵か味方か!?“四天王”第一の刺客・帰国子女の風魔(ふうま)

 その日、戦(いくさ)の火種が、ついに学内でくすぶり始めた。


 発端は、昼休みの全校放送。


「こちら、生徒会広報部よりお知らせいたします。校内掲示物およびSNSにおける“歴史上の人物の同人創作物の無許可掲示”が確認されました。つきましては関係者に事情聴取を行います」


 藤宮柚葉、沈黙。


 田所将宗、動ぜず。


 だが次の瞬間――

 バァン!!と音を立てて、教室の扉が開いた。


「征夷大将軍、田所将宗……その“幕府ごっこ”、我が主の逆鱗に触れた」


 逆光の中から現れたのは、ひとりの学生。

 学ランの上に、なぜか黒い布マフラーを常に巻き、背中には自作の巻物ポーチを装備。

 手には木製の手裏剣を持ち、異様なほどキマったポーズを決めている。


「名を、風魔一雅(ふうま かずま)。

 生徒会四天王・書記担当。“風の部隊(ウィンド・バトラーズ)”を率いる者なり」


「なんだその組織……!? 格好良すぎる……!」


「ちなみに“風の部隊”って何人いるんですか?」

 と小声で尋ねる藤宮に、風魔は即答する。


「今は、俺ひとりだ。だが、風は孤独を愛する」


 中二病、爆発。


「して、風魔殿。貴殿がここに現れた理由は何か?」


「将軍を名乗るその傲慢、校則を逸脱した政治的活動、そして……

 貴様が俺より目立っていることだ!!」


「え……?」


 風魔、手元のスマホをスクロールする。


「見よ、このタグ。“#田所×氷川”がトレンド入り寸前だと……!?

 生徒会にまで入って目立とうとしている俺への注目はどこにいった!?」


 それはつまり――

 風魔=重度の中二病目立ちたがり男子だった。


「よい、風魔殿。その力、拙者に貸す気はないか?」


「なに……?」


「貴様の才を、単なる議事録に使うなど惜しい!

 忍術を使い、裏口の見張りを読み、敵の布陣を夜に暴く――それが本懐だろう!」


「ぐっ……俺の中の“忍者萌え”が揺らぐ……!」


 その時、田所は優雅に言った。


「我らが令和幕府は、愛もまた統治する。恋も萌えも友情も、すべて包む――天下泰平の“同人政権”よ風魔。

 生徒会という“正気の組織”では、お前の翼は折れる。幕府に来い。己の厨二を、存分に燃やせ」


「……クッ、敗北ッ……!」


 風魔、幕府軍に電撃参入。


 放課後

藤宮「え、増えた。なにこの“公式が最大手”みたいな流れ……」


田所「これで、二翼三職の陣形が整った。広報、参謀、そして風……!」


風魔「次は“戦(イベント)”だ。オフ会か、文化祭か、はたまた修学旅行が開戦の地か……!」

 

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