第2話気付き~
僕はそこから少しずつ身体を動かしだした。
闘病生活が長かったんだろう。
スムーズには歩けない。
まるで誰かの人生を背負っているかのように
身体が重い。
転生する前
僕は身体が割と丈夫なほうだった。
子供の頃はひ弱だったが…
がんばって運動をして
少しずつ強くなっていた。
僕はパインに…。
このパインの身体に…
いろいろな経験をさせてあげたい。
そう思った。
僕は神様から聞いた事を思い出していた。
ひっかかるのは
――今回も同じ事をすれば…また同じ結果となる――
の部分だ。
今回も同じ事…
僕の亡くなった原因は
創作しなかったことでの自家中毒
そして…
今回は
創作できる環境を与えられている。
そうか―――
これは神様が与えてくれた。
最後のチャンスなのかもしれない。
今世では
そのチャンスを
活かそう―――
「父さん。僕は本を書きたい」
そういうと
父さんは少しかび臭い多量の原稿用紙とペンを
渡してくれた。
「これは実は父さんが…
小説を書こうと思って
買ったものなんだ。
仕事が忙しくて…
書けないから
パインにあげるよ」
そう…
すこし寂しげな表情をして
それでも笑っていた。
あー
僕も
前世ではこんな顔をしていたのかもしれない。
そう思うと、なんだか無性に悲しくなった。
僕は締め切っていた窓をばっと開け放ち
多量の原稿用紙をパンパンとはらった。
ホコリと共に
なにかが空気のなかに散っていった。
執着という名の亡霊
そんなかび臭い気配がした。
父さんも
もしかして…
―――――――――
書こう…
ペンを握る。
そうだ…
今世では好きなだけ書けるんだ。
喜びが心をおどる。
書こう…
今世では好きなだけ書けるんだ。
胸の奥に火が灯る。
書こう…
好きな物語を
書こう…
書こう…
書こう…
書こう…
書こう…
…
前世ではあれほど
出てきたがっていた言葉たちが
いざ機会を与えられると
一つも出てきてくれない。
どうしたいんだい。
僕の中の言葉たち…。
もう出して上げれるんだよ…。
出ておいでよ。
僕の目からは
感情が水分を帯びて
溢れだす。
抑圧していた。
言葉が声となって溢れだす。
「なんで…」「なんで…」「なんで…出てきてくれないの」
僕の精神は錯乱し
腹をすかせた赤子のように
ただ感情を抑えることなく
わめきちらした。
「パイン…」
来たのは母親だった。
眉間にシワを寄せ僕を抱きしめてくれた。
そして…
すでに何かを悟ったような優しい目で
「パイン…だいじょうぶよ。今から森の魔女様のところに行きましょう」
そういうと、僕の手をとり、森へ向かった。
魔女…?
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