第23話「え、敵と手を組んでもいいんですか?」

「……この文献、なんか読めるようになってきたな。」


地下書庫にて古文書を手にするえーさん。その背後では、スライムたちがのんびりと跳ねている。


文献には、“魔神”の存在が記されていた。


――かつて世界を恐怖で包んだ、支配の象徴。魔王の原初にして、魔のものの神。


現在の平和志向な魔王とは異なり、征服を至上とした存在だった。


「……次世代の魔王に乗り移って世界を支配するつもり、ってことか。」


封印の間にて、女神がふるふる震えながら説明する。


「そ、そうなのよ……だから、魔王とは敵対じゃなくて、むしろ協力できる可能性があるってわけ。」


「……それなら。」


えーさんは唇を引き結び、空を見上げた。


「魔王の力、借りてみるか。」


そして翌日、えーさんは魔王城へ単身乗り込み――


「両面同時に叩く。こっちは表から、魔王は裏側からだ。」


「ふむ、興味深い試みだな。いいだろう、協力しよう。」


和平の使者として現れたえーさんに対し、魔王は意外にも柔軟に応じた。


そして、封印の魔法陣を前に、二人の最強格が拳を構える。


「いくぞ――!」


「――破ッ!」


バキィィィィン!!


その瞬間、封印が黄金の閃光を放ち、パキパキと音を立てて砕け散った。


「きゃああああ!? 待って待って本当に壊れたじゃない!?」


魔法陣から解放された女神が地面に崩れ落ちる。


「ごめん、思ったよりうまくいったわ。」


「なんなのよそれぇぇぇぇ!」


ともかくこれにて、女神は解放され、えーさんと魔王は和平の誓いを結んだ。


「これより、我らは共に“魔神”という真の敵に立ち向かう。」


そう語る魔王の背には、もはやかつての禍々しさはなかった。


その頃――


「じゃーん! 六つ目と七つ目、見つけたよ!」


あーちゃんは宝石箱の中を覗き込み、目を輝かせた。


しかし――


「あれ……?」


六つと七つのオーブが重なり合った瞬間、七色の光が溢れ出し、一つの巨大な宝玉へと姿を変える。


「おおお……!」


その宝玉は、どこか、おーちゃんに似ていた。


「……これは……手放せないよ……。」


「ぷるっ(嬉しそう)。」


頬を赤らめて抱きしめるあーちゃんに、いーさんとうーちゃんは目を細めた。


「……結局、世界の命運より、あの子には“おーちゃん”が一番なんだね。」


「それも、立派な勇者の選択じゃよ。」


こうして、世界は一つの節目を越え、新たなステージへと進んでいくのだった。

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