ガチガチに中二病の私が異世界召喚されたのでロマンを全て叶えたいと思いますっ!

赤月 りお

プロローグ+第1話 "異世界"が私を呼んでいるっ!



プロローグ




「......?」




目を開くと、そこには永遠とさえ思えるほど


ひたすらに広がる草原があった。


かすかに髪を揺らす風はとても心地よく、伸びをして


深く、呼吸をする。


鼻から入ってくる空気は今まで吸ったことのないくらい澄んでいた。


深呼吸を終え、そのままパタリと草原へ寝転ぶ。


そこには嫌な虫やちくちくしたような草の感触はなく、まるで羽毛のような柔らかさがあった。


寝転んだままもう一度伸びをし、五感全てで今、この地にいることを感じながら



「ここ、どこ.......?」



一人投げ出された草原の中、ただそう呟くことしか出来なかった













第1話 "異世界"が私を呼んでいるっ!





私は柳 ナグサ いたって普通の高校1年生。

世間で言うところのJKという職業(:ジョブ)に付いている。

趣味は読書、特に好むのは異世界転生や異世界転移モノのラノベだ。


異世界モノというジャンルが確立されてはや数年、それはもはや一般常識レベルと言われるまでに世間に浸透している。


その影響力は凄まじく、特に思春期の男女には刺激が強いのか、不特定多数の子供たちにとある病気を患わせる。


巷で言うところの"中二病"だ。



「ふっ、風が騒がしいな......今日は何か起こるかもしれないな」



「うわ、なにアレ中二病?」



「わぁホントだ、てか古くね?」



どうやら私も、一般人から見るとその病気を患っているらしい。

今どき中二病はもう時代遅れ扱いなのか、登校中の私にひそひそと話してくる声が聞こえてくる。


だが、そのかわいそうな子を見る視線には屈しない。


今まで散々親やクラスメイトからその視線で見られてきたが、何を言っているのか全くもって理解不能である。


私は自分が夢中になれる世界を自身の中に確立していることを誇りに思ってるし、中二病であることも自覚しているが


私はロマンに生きることに決めてるのだ。


ポージングをとりながらいつ誰に見られてもいいように簡単に自己紹介をしていると、余程カッコイイのかさっきの一般JK2人組が私を見ながらまだひそひそ話をしている。




さっきからひそひそとうるさいな......


チラチラと見てくる一般JKが癪に障った私は



「ぐあぁぁぁああっ!?」



「! き、急にどうしたの!?大丈夫??」



「ふ、封印が......この私の左目と左腕、そして左足に封印した古の竜(:エンシェント・ドラゴン)の封印が解かれてしまう......!暴れるな、静まれ怠惰を司る暴竜よ......!!!」



「封印左半身に偏りすぎじゃない?! てか、急にうずくまったと思ったらやっぱりただの中二病ぢゃん!!」



「このままではいずれ封印が解かれる......ぐうっ!?まさか、私の左脳にまで......!?」



「いやもう左半身完全に乗っ取られてるぢゃん!?」



左手に封印されし古の竜の封印が解かれかけるが、うずくまった体勢のまま、時間をかけて徐々に封印を抑え込む。


もう行こーと言いながら私を後にし学校へ向かおうとする一般通過JK2人組


左目に付けてあるドクロマークの眼帯を抑えながら



「ふっ......今回も私の勝ちだ、だがこのままでは封印を解かれるのも時間の問題か......」



「アホらし、行こ行こ」



「.........」





一人残された私は何事も無かったかのように立ち上がり、スカートから土埃をはたいたあと、学校へと向かうのだった







学校はつまらない、両親(:マイマスター)からの指令によって通ってはいるが、私には一般高校生とスペックの差がありすぎて話が合わない。


よくIQが20違うと話が通じないと言われているが、私のIQは1200なので、この世界に私と会話出来る人間自体が本当に少ないのだ。


コミュ障ゆえに友達ができないとかではない、決して。


強いて私とコミュニケーションをとれるもの達を挙げるとするならば、両親と我が眷属、番犬ケルベロス(チワワ)のみである。



「くっくっく......私はこの小さな学び舎なぞに収まる器ではない、やはり今からでもハーバードへと飛び級で進学するべきか......」



私が自分の席に着き、碇〇ンドウポーズをとりながら真剣にそんなことを考えていると



「おっすー、中二やぎさんっ。今日もまたイタい事言ってるね!」



話しかけてきたのはクラスメイトの一人である金髪ギャル。

絵に描いたようなイジメっ子で、新学期早々私をターゲティングしたのか、何かある度に絡んで来、私に嫌がらせをしてくる


彼女は私の水筒をとりだし



「これ、入れとくねっ。きっともっと美味しい飲み物になるよ」



集めてきたのか、握りしめていた拳から消しカスを水筒の中に入れてくる。

そんな様子を取り巻き3人が口ではやめなよと言って見ているが笑いながら止める様子も見せない。


用件はそれだけだったのか



「あははっ、じゃあね中二やぎ。あとで感想聞かせてねー」



取り巻き共と笑い合いながらどこかへ行ってしまう



「......群れないと何も出来ない雑魚め」



ああいう輩に何か言葉で反抗すれば、数の暴力でもっと暴力的な面倒事に巻き込まれてしまう。


私の力を持ってすれば一般JK4人組なぞ目を瞑ったままでもボコせることが出来るが、私の力はそんな事のために使うことの出来るほど価値は低くない。


かといって私も何も抵抗しないわけじゃない。


消しカスを入れられたのは予備の水筒で、本当の水筒はバックの奥底に隠してある。



「アホどもめが、この私に何度も同じ手が通用すると思うなよ......」



消しカスを入れられた水筒をしまい、奥底に隠してあった水筒を取り出し、お茶を飲もうとした時だった



「......? なんだ、これ?」



教室の床全体に大きな紋章が展開される。



「.......ッ!? これは、まさか魔法陣!?」



その印は淡く光だし、教室全体を覆うほど大きくなると、目を晦ますほどの眩い光が放たれる。

教室中が不安や疑問による騒がしい声で埋め尽くされる中、



「ふっ、ついに私にも召喚の儀が執り行われるのか......! いざゆかん、"異世界"が私を呼んでいるっ!」



今までアニメやラノベなどで何百回と見てきたお約束のような展開に私は1人、興奮が抑えきれなかった。

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