第56話 生活力の無いクレア

「……という訳で、クレアだ。みんな、仲良くしてあげて欲しい」

「クレアです。えっと、お母さんは人間なんだけど、お父さんがエルフなので、幼い見た目ですが十三歳です。よろしくお願いいたします」


 早速クレアを家に連れて帰り、自己紹介してもらった。

 ちなみに、ナディアさんは三歳の時にあのクソエルフと離れる事になったが、クレアは十三歳まで一緒に居たのか……と思ったのだが、帰る途中で聞いた話によると、少し違うらしい。

 あのクソエルフは、どうやら子供が三歳になると、もう会えない……と言って、森に帰るようだ。

 クレアも暫く母親と二人で暮らしていたのだが、母親が亡くなってしまい、途方に暮れていたところで、偶然父親を見かけたのだとか。

 あのクソエルフは、きっと同じ事を今まで何度も繰り返してきたのだろう。

 ……クレアがこの家に馴染んできたら、一度殴りに行ってやろうか。


「ノアだよー! クレアおねーちゃん、なかよくしてねー!」


 近くに居た子から順番に自己紹介をしていって、ノアが笑顔で話し掛ける。

 最初はあんなに人見知りだったのに、初対面のクレアに話し掛けられるようになって……良かったなぁ。

 更に順番が進んで行き、最後にティアナが自己紹介をする。


「ティアナですの。アキラさんのお嫁さんになりますの!」

「ますたーのお嫁さんはマリなのっ!」

「はいはい。クレアが驚いているから、その辺にして……クレア、少しずつここの暮らしに慣れていこうな」


 そう言って、クレアの頭を撫でたのだが……凄く引かれてしまった。

 あー、この容姿のせいか、十三歳というのをつい失念してしまう。

 だが、クレアが何かを決意したような表情を浮かべ、自ら俺の手に自分の頭を押し付けてくる。


「あ、アキラさん。ティアナちゃんやマリーちゃんのように、私もアキラさんとそういう関係にならないといけないのですね? その、お世話になる訳ですし、が……頑張ります」

「ん? そうだな。すぐには難しいかもしれないが、俺を父……こほん。兄のように頼ってくれると嬉しいな」

「……わ、わかりました。善処します」


 クレアに父の話をするのはどうかと思うし、俺の中身の年齢はともかく、十八歳と十三歳なので父娘というのはおかしい。

 なので、兄妹と言い直したのだが……それを言い出したら、ティアナとの九歳差というのも、父娘というのは変な話か。

 それから、一通り家の中を案内し、お風呂に入ってもらう事にした。


「お、お風呂……入って良いんですかっ!?」

「あぁ、もちろん。俺かシオンに声を掛けてくれれば、水魔法で水が出せる。あー、でもお湯が良ければ、俺に言ってくれ。シオンは火魔法が使えないから、お湯は出せないんだ」

「え、えっと……それはつまり、アキラさんと一緒にお風呂へ? ……あ、いえ。は、入ります! 入らさせていただきます」

「ん? じゃあ、入るか。マリーも一緒に入ろうか」


 森の中を歩いたり魔物と戦ったりしたので、マリーも洗ってあげようと思って声を掛けると、嬉しそうに駆けてきた。

 マリーの服を脱がせると……クレアは既に浴室へ入っていたので、俺たちも一緒に中へ。

 魔法でお湯を出して浴槽を満たすと、まずは掛け湯をして、マリーの身体を……って、クレアがもう浴槽に入ろうとしているな。


「クレア。先に身体を洗おう」

「ふぇっ!? ま、まだ心の準備が……わ、わかりました」

「ん? じゃあ、そこに座って、石鹸はこれを使って」


 マリーの身体を洗いながら、クレアがどれくらい生活力があるかを確認する。

 とはいえ、自分で服を脱いでいたし、ティアナやノアよりは大丈夫そうだが。

 だけど、石鹸の使い方がわからずに困惑していたので、マリーの身体を洗い終えたら、次はクレアだ。


「クレア。じゃあ、身体の洗い方を説明するぞ」

「は、はい!」

「まず、石鹸を泡立たせて……」

「――っ! ~~~~っ!」

「あ、すまない。くすぐったかったか」

「ら、らいじょうぶれす……」


 来たばかりの頃のティアナ程ではないにせよ、クレアもあまり生活力がなさそうだ。

 なので、しっかり身体と髪を洗い……シャンプーのお陰で長い金髪がキラキラと輝く。

 それから、クレアも湯船に入れ、俺も身体を洗ってゆっくりしていると、何故かクレアがソワソワし始めた。


「クレア。どうかしたのか?」

「えっ!? その……私は初めてなので」


 あー、父親があれだから、こんな風に皆で風呂に入るのに慣れていないという事か。

 まぁノアやティアナも少しずつ変わっていったし、ひとまずは慣れてもらうしかないかな。


「えっと、アキラさんに妻としてのご奉仕はベッドで……でしょうか? お風呂でも何か……」

「ん? クレア!? 何を言っているんだ!?」

「先程、ティアナちゃんやマリーちゃんが、アキラさんのお嫁さんだと……私もアキラさんの妾として奉仕しなければならないんですよね?」


 そう言って、クレアが顔を赤らめる。

 俺の方を見て、恥ずかしそうに両手で顔を覆っているが、一体何の話をしているんだ!?


「いや、妾って。クレア、何か凄い勘違いをしていないか?」

「えっ!? でもアキラさんの奥さんが二人……あっ! 一夫多妻制だから、妾じゃなくて私も正妻ですかっ!?」

「ますたー。妻はマリだけど、妾って何なのー?」


 クレアが恥ずかしそうにキャアキャアと騒ぎ、マリーが妾の説明を求め……二人とも、とりあえず落ち着いてくれっ!

 正妻も妾も勘違いだし、そもそもどうしてクレアは妾なんて言葉を知っているんだよっ!

 あのクソエルフ……娘にどんな教育をしていたんだぁぁぁっ!

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