Intermission2

幕間3/Chase

「――オーディションかー」


 オーディションから二週間前のある日。椅子にのしかかり腕を組んでいた東雲環。目の前の机の上にはみもりんと通話終了の文字が表示されていた。


 最初は本当に最近の近況を聞くだけのつもりだったが、友人がバンドやり始め、オーディションをやると聞いてから色々な想いが脳によぎった。


 当然友人が念願のバンドを組んだこと、ライブをすることは嬉しいものの、ライブをするということはいつしかライバルとして立ち塞がる可能性が大いにある。


「そうだ! みもりんのバンドのこと知りたいしどこでオーディションやるのか聞……いや、流石に教えてくれないよねぇ……ならみもりんの学校から近いライブハウスさがしてみよー。流石に近い場所を選ぶだろうし」


 机に寝かせていたスマホを手に取り、慣れた手つきで三森の学校とその周囲のライブハウスをマップで確認する。


 検索にヒットしたのは二箇所。その中で最も近かったのは一軒家に併設された方。評価など見ても申し分はなくいい場所だと言う声もあった。


 ならばとそこに目星をつけたのだが、オーディションは観覧目的の一般人は当然入場ができない。そこで急遽、環が参加しているバンドのメンバーに電話をかけて事情を説明した。


『まあ! いいですね~カチコミしちゃいましょうよ~! どうせならタマも取っちゃいません~?』


 ゆるりとした口調なのに、まるで極道が使うような言葉を交えており、かわいらしい反面恐ろしくもある。そんな彼女の名は桜葉日葵さくらばひまり。実際に行動を起こしたりすることはないが、極道のドラマやアニメ、漫画を好んで見ており、彼女が発する言葉はそれに影響されていることが多い。

 

『カチコミにタマってなあ……極道のドラマとか見すぎだぞ桜葉。まあいつものことだけどな……んで? メグ。珍しくお前が箱を選んだみたいだが、その箱をちゃんと押さえてるのか?』


 通話機越しに聞こえたもう一人の声は梅宮奏うめみやかなで。女性の中では珍しく低音のハスキーボイスを持った人物でその声に負けず劣らずの男勝りな性格。


 ただ口調までも男勝りで荒々しいため不良と間違われることが多く、悩みの種でもある。

 

「いや、まだ取ってないよ?」


『やろうってんならさっさと取れよ!?』


「てへ? でもまあ皆のやる気というか、確認しておきたいじゃん? とりあえずさくらっちと、うめみんは賛成ってことだけど、藤柴ふじしばちゃんは?」


『正直反対。でもまぁどうしてもって言うのなら? 私のことがめちゃくちゃ必要って言うなら? ついて行ってあげなくもないけど?』

 

「相変わらずツンデレなんだから〜! じゃあ決定だね! 箱押さえてくる!」


 最後に通話先から聞こえたのは藤柴の声。呼ばなければそれはそれで何かと面倒になったりしそうな口調だが猫のように裏表が激しいだけの人柄。


 最初こそ言葉に隠された真意を見いだせず、ちぐはぐな空気や重たい雰囲気を漂わせていたが、今となっては慣れたもので彼女が本当に言いたいことを環は理解している。


 そして三人の了承を経たことでより興奮が増し、箱を直ぐにでも押さえるために通話を突然切る。その後目星を付けていた箱へと電話を掛ける。


 やると決めたからこその行動の速さだ。


 程なくして再び三人に連絡が入る。嵐のような速さには何度経験しても驚きでしかないが、こちらもこちらで慣れている様子で四人は通話を交える。


「連絡多いからオーディションだって〜」


『いつ?』


「二週間後!」


『なら練習には充分だな。セトリはいつものでいいか?』


「フェス用に書いた曲でしょ? むしろ弾きなれてるし通用するかしれるいい機会だからいいと思う!」


『わかった。みんなもそれでいいか?』


 梅宮の言葉に、藤柴と桜葉は快諾。まるで全員がそれを望んでいたかのように早い返事で、梅宮は小さく鼻で笑う。電話越しでも梅宮が、藤柴が、桜葉が環の熱に当てられて楽しみに溺れているのが伝わってくる。


 ああ、最高だ。梅宮が微かに呟いた気がした。その刹那に続いて梅宮は言った。


アンノウン・イズ・ノウレッジ未知は知識となる。その名に恥じないよう、観客を私たちの虜にしてやろうぜ! そのためにはまず練習だ! 明日からやるぞみんな!』


 ――こうして三森の親友である環と、環が所属するUIKはオーディションの日まで猛練習を重ね、迎えたオーディション当日には余裕で合格を貰うこととなった。

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