幕間2/Light Music Club

 三森と対決し、風の用に去った北織。そのまま家に帰っていたのかと思えば実はそうではなく、部室に残った三森と東原のやり取りを影で聞いていた。


 本当は部のことを聞かれ、入部したいと言われたのは嬉しかったのだ。また音楽ができると、また姉へ近づけるという喜びが奥底から湧き出す感情がある。


 しかしそれに蓋をしてしまったのが、今でも脳裏に浮かぶ、北織には着いていけないという理由で辞めていった部員たちの姿。


 三森もあの部員達のようにどうせ消えてしまう。そんな思い込みから、部を作ることは拒み、課題曲はわざと自身の得意なものにした。圧倒的な実力差で心をへし折れば諦めてくれると考えて。


 しかし、完全に諦めきれていない様子もあり、ならば追ってくるのではないのかと。それで影に潜んでは二人の様子を伺っている。


 そんなことを知らない二人は北織の過去について話を掘り下げ、軽音部が廃部になった理由まで話題は続いた。


 そこまで聞いたならば、北織が軽音部に求めるものが何かも当然わかるようなもので、だからこそ今度は諦めてくれると信じた。


 しかし、聞こえてきた言葉は。


「いや、だって、北織先輩は夢を追うために必死になってるだけで、何も悪いことしてないですよね。だからちょっと私がその人達をぶん殴りに行こうかなと」


 あまりにも野蛮な思考を巡らせた三森の言葉。彼女は北織とはなんにも関わりがないのに。軽音部にですら関わりはないのに、発せられたその言葉は北織を思ってのこと。


 他人ひとのことなど気にしなくてもいいのにどうしてそこまで。


 今までの人と比べて違う向けられている気持ちに、困惑と疑問が渦を巻き理解に苦しむ。


 だからだろうか。北織は無意識に彼女のことを、三森のことを知りたいという知識欲に駆られ、さらに耳を澄まし、話を盗み聞いていた。


 しかし東原が突然ライブハウスに行こうと言い出した。このままでは盗み聞きしていることがバレると悟り、北織は近くのトイレに逃げ込む。

 

 話し声がだんだんと近づく恐怖感に耐えながら息を殺し、やがて声は聞こえなくなる。


 そろりと入口から顔を覗かせて誰もいないことを確認する。


「よ、よかった……バレてない……」


 安堵の息を深く吐くと、改めて元軽音部の中へと入り、ギターを取り出して椅子に座っては黄昏る。


「はぁ……今更バンドなんて……私は軽音部を潰した張本人なのに……どうしたら、良かったのかな、お姉ちゃん……」


 以前の軽音部の中では一番に努力していた北織。姉に憧れ練習を積み重ねてきた。その努力は実力にちゃんと繋がり一年にして軽音部の中で一番の実力者部長となった。でもだからこそ実力差の出た軽音部は破綻し、今に至る。


 部長にならなければ。努力しなければ。入部しなければ……姉に憧れなければ。そんなマイナスな思考ばかりが溢れ、姉からのであるギターに悩みを打ち明けるかの如く、優しく弦を細い指先で弾き、きもちを奏でた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る