第4話

昔、父の知り合いだったというアメリカ人のケビンが、横浜の山下町でジャズバーを経営している。高校を卒業してからは、その店で時々サックスを演奏させてもらっている。ギャラは一切貰わない。その代わり、タダで飲ませてもらっている。サックスは瑠生の父が生前、幼かった瑠生に直々に教えた。名のある父ではない。父も祖父も、みんな趣味で楽器を嗜んでいただけだと聞いている。


瑠生の両親は、12年前に亡くなった。


父はアメリカ人で、ハーレム生まれハーレム育ちの黒人だ。そして、母は日本人。そんな両親の元、瑠生るうは生まれた。2つ年下の妹、美衣みいと、4人家族でマンハッタンに住んでいた。


瑠生が、10才になるまでは……。


その話しは長くなるので、また別の機会にしよう。





瑠生は自転車を飛ばして、山下公園にやってきた。


スピードを出すと、長い髪がサラサラと潮風に揺れる。春の暖かい陽射しを浴びて、風が潮の香りを運んでくると瑠生は自然と笑顔になる。


山下公園内の芝生の散歩道の手前で自転車を止めて、籠にいれていたおにぎりとお茶が入った巾着袋を取り上げると、小走りで芝生に向かった。少し早起きをして作ったおにぎりには、シャケのフレークと梅干しが入っている。今朝少し早起きして作って来た。芝生に両足を前に伸ばして座り、おにぎりの包みを開けた瞬間、リュックから携帯電話の着信音が鳴った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る