第21話 陰日向者は金髪ギャルを誘う

《汐崎 光 5歳頃 幼稚園》


「葵ちゃん……僕とばっかりいないで他の娘達と遊んできなよ。僕と居た日陰者ひかげものとか言われていじめられちゃうよ」


「やだよ。皆、光君に悪口ばっかり言う子しかいないから。仲良くしたくないの。それに光君を1人にしたら取れちゃうもん」


 幼稚園の頃、当日の俺はその目が生意気そう。目が気に食わない。目付きが悪いなど。同じ組の子達に嫌われていた。


 といっても同い年の男の子達とは普通に仲は良かったんだ。だけど女の子達からは何かしら理由を付けられては馬鹿にされていた。


「取られちゃう? 玩具の事?」


「違うよぉ。光が他の子に取られちゃうの。私そんなの嫌なの~」


「ちょっと。葵ちゃん。抱き付くの止めてくれないかな?」


 葵は昔から駄々をねる度に俺の身体に抱き付いて来ていたな。流石に今はやって来ないけど。


 夏の時期でも平気で抱き付いて来るから暑くしかったのを今でも覚えている。


 しかし。幼稚園の頃の記憶とは……だいぶ古い記憶を思い出しているな。


「……そろそろ。七夕祭りだね。葵ちゃん。何かお願いしたりするの?」


「へ? お願い?……う、うん。するよ……私の彦星ひこぼし様はずっとそばにいて下さいってお願いしたかな。エヘヘ////」


「ふ~ん。そうなんだ。叶うと良いね。そのお願い」


「むっ! 光君のバカッ! なんでそんな事言うの? 最悪~」


 小さい頃の葵は平然と俺に暴言を吐いていたが……今にして思えば小さい頃から強気なギャル化の片鱗が昔からあったんだよな。葵って。


《汐崎 光 5歳頃 汐崎家リビング》


「光ちゃん。葵ちゃん。今日もお母さん達。お仕事で遅くなるからずっと一緒に居るのよ。何かあったらお姉ちゃんに言って来てね……じゃあ。お休み。スゥースゥー……」


「優奈お姉ちゃん。寝ちゃった……」


「いつもの事だよ。ぐーたらな姉ちゃんなんだ」


 葵とは物心ものごころ付く前からずっと一緒に居た。  


 お互いの家の両親が仕事で忙しいかったのもあったせいか。5歳年上の姉さんが俺達の面倒を見てくれていた。


 まぁ、俺も葵も昔は大人しい子だった為。姉さんは殆んど俺達の近くで勉強をしてるか。いびきをかいて寝ていただけだったな。


 だから葵と二人きりで絵本や玩具で良く遊んだ。一緒にいない日が無いくらい毎日の様に遊んでいたんだ。二年前のあの疎遠になるあの日までは────


《中学校3年生頃 夏》


「葵。なんか君。姉さんから聞いたけど最近荒れてるんだって? 何か悩みがあるならおれに相談してくれても良いんだぞ」


「……光君に相談する事なんてまだないよ。それよりも私今は勉強と自分磨きで忙しいのよ。だからしばらくの間。あんまり光君と関われないかもしれないからごめんね」


「はぁ……そうなんだ。(もう。陰キャの俺とはあんまり関わりたくないのか。まぁ、最近の葵はどんどん可愛くなってるしな。こないだも男子生徒に告白されたとか言ってたし)……そうか。じゃあ、これからはあんまり葵とは入れなくなるんだな。今まで悪かったな……じゃあ」


「へ? ひ、光君? ちょっとっ! どうしちゃったの? もう帰るの? ねぇ?」


 二年前の夏のあの日を最後で葵とは疎遠になって……最近、部屋のエアコンが壊れた事が切っ掛けに話す様になったんだよな。


 つうかなんでこんな走馬灯みたいな夢を俺は見ているだろうか?……それに暑い。いや熱い……身体の体温が以上に────



「熱っ!……つうかなんつう夢を見てるんだ俺はっ!……エアコンッ! 切れてるし……何だ? 身体に生暖かい何かがへばり付いてる?」


 俺は今の自分の状態を確認すべく部屋全体を見た。。


 閉めきられた部屋にベッドに横たわる俺。寝る前に付けていた筈のエアコンは切れており。


 そのせいで現在部屋の中は少し蒸し暑い。


 寝る前に着ていた筈のTシャツとズボンは着ておらずボクサーパンツ一丁の汗だく状態の俺にTシャツと短パン姿の葵が俺に密着し。幸せそうな顔で眠っていた。


「葵っ! お前また勝手に入って来たのか? つうかなんで俺パンツ一丁になってんだ?」


「フヘヘ……今のじゃん拳は私の負けだから下を脱ぐわ。脱ぐところ見て襲っちゃ駄目だからね。光君」


 寝言だろうか? 葵はそう言うと短パンのチャックを緩めて脱ぎ始めた。そして、今日の下着の色は黒だった。ギャルが履くような大胆な下着だ。


「いや。冷静に見とれているんじゃないぞ。俺ッ! さっさと起こさないと……こんな場面を三久にでも見られたら変な誤解をされるわ。つうか熱いから離れろ。葵~」


 葵を必死に引き剥がそうとするが。全然引き剥がせない。そんなか弱そうな腕のどこに万力まんりきの力が宿っているというんだ?


「ふぇ?……また私の負けなの? 仕方ないな~、じゃあ。今度はTシャツを脱いであげるね。光君」


 再び寝言を言ったかと思えば。今度は器用にTシャツを脱ぎ始めた。コイツどんだけ器用なんだよ?


 そしてあらわになったのは二年前よりも成長した2つの双璧………つうか先月よりも少し成長してないか? 葵の奴。いや。今はそんな事を考えている場合じゃない。俺の貞操ていそうの危機なんだよ。


「よ、よせっ! 葵。お前本当は起きてるんだろう? つうか起きろっ! 今すぐに起きろっ! それ以上はヤバイっ!」


「……ん!」


 俺の心からの叫びが届いたのか。葵は動きをピタッと止めると。俺の身体に抱き付いていた手を静かに離し。葵はズルズルと俺のお腹の方へと頭を移動し始め……


「そ、そうだ。俺からゆっくり離れろ。葵」


「フヘヘ//// 最後の最後でじゃん拳は私の勝ちだよ。光君~……パンツ脱がすわね。それで主導権は私で決まりなんだから。エイっ!」


 スポンっと脱がされてたまるかっ! 俺は自身が持つすべての力をパンツを脱がされない為に注いだ。すると。


 ……ビリッと破けた。当たり前だよな。お互い物凄い力で引っ張りあってるんだから。だが俺は葵に全てを見られない為に破けたパンツで身を隠した。いや。普通身を隠すとか逆だろうこれ。


「ちょっ! お前っ! 何してんだ?……ギャアアア!!」


「……へ? 光? なんでアンタ。全裸になってんの? 変態なの?……それに光のそれってそうなってるの?…………そうじゃなくて……これは夢よね? でも身体熱いし。何この状況?……キャアアア//// 光の変態っ!!」


 俺と葵はお互い叫び声を上げ絶叫し合ったのだった。



「勝手に部屋に侵入してしゅみませんでした」


「本当だわ。全く。寝ながら人の服を脱がしていく奴なんて始めて見たわ」


 あの後、とくになにもなかった。葵は俺から奪い取られた服をなかなか返さなかった為。力ずくで奪い返し着た。


 なんで服を奪ったと聞いたら俺の筋肉をまだまだ見ていたかったらしい。いや。どこの筋肉マニアだよ?


 葵の方は起きた途端に電光石火で着ていたくせにさ。


「そんな事ないわよ。いつも暇な時にいろいろなプレイのイメージしたり。寝てる時に夢で見たしてれば自然と寝ながらでも出来るようになるんだから」


 胸を張って言うことではないだろうに。いや葵の胸は大きくて可愛いから見惚みとれるんだがな。


「ちょっとっ! どこを見つめてるのよ。エッチっ!」


 見惚れていた部位を察知られてしまった。こいつ。やるな……いや。それよりも。今、葵が反省してしょんぼりしている今、チャンスなんじゃなかろうか? 今日の夕方から行われるあれに誘い出してみるか。


「誰がエッチだ。俺は陰日向かげひなた者の紳士だ。それよりも……反省してるなら俺の頼みを聞いてくれよ。葵」


「誰が紳士よっ!……てっ? 光の頼み?」


「あぁ、今日。七夕祭りだろう? だから俺と一緒に夕方から七夕祭りに行われる秋月神社に行こうぜ。2年振りに二人きりでさ」


「……へ? そ、それって……私と光の二人きりのデ、デ、デートって事ぉ? い、行くわっ! ちょっと待っててっ! 浴衣あるかママに聞いてくるんだから~!」


 葵はそう叫ぶと俺の部屋の窓から自分の部屋へと帰って行った。

 


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