陰日向(かげひなた)者の俺と金髪ギャル幼馴染みのアオハル物語

冰藍雷夏『旧名は雷電』

第1話 昔は清楚 今はギャルな幼馴染みの織姫 葵

 俺の名前は汐崎しおざき ひかり。どこにでもいる健全な高校二年生。童貞。


 現在、非常事態につき身体中から汗をかきまくっているわけで。その理由はなんと──── 


「暑……エアコン壊れた……」


 近年、温暖化も著しく進み6月の初夏だというのに大陽昇る日中は死ぬ程暑い今日こんにち、自室のエアコンが寿命を迎えた。


「まさか小学校からの付き合いだった夏の相棒エアコンが死ぬとはおもはなんだ………」


 しかし、どうしよう。窓も閉めきった状態のこんな蒸し暑い部屋にいたら熱中症でそのうちぶっ倒れるのが落ちだ。


「とかいって部屋の窓を開ければ葵の奴と鉢合わせしそうなんだよな」


 お隣に住む幼馴染み。織姫おりひめ あおい。顔立ちは整っていて近所でも評判の美少女だ。


 小学校や中学校の時は良く一緒に登下校したり放課後は色々な所に遊びに行ったりしていたんだ。


 だけど今は違う。葵は高校生になると同時にビッチギャルへと変貌した。


 葵は高校デビューというやつに憧れていたらしく。中学生の頃までの黒髪清楚で可憐だった葵の髪は金髪に染め上がり。言葉遣いも荒くなっていった。


 そして、風の噂で聴いた話では高校生特有のちょい悪リア充に美味しく頂かれたとかなんとか。


 俺はそれを友達の五月女から聞いて葵は本当にリア充実のギャルになったんだなと確信し……


 織姫 葵という人物は俺に記憶の彼方に葬られたのだ。


 俺? 俺は昔から変わらずマイペースに生きておるよ。


 顔は普通で勉強と運動は少し出来るくらいで趣味に流行りのアニメや漫画を読むくらいのにわかオタクさ。


「駄目だ……頭がクラクラしてきた。覚悟を決め手窓を開けるか。しかし窓を開けたら黎明れいめい高校の女帝ギャルと鉢合わせる事になる。せっかくの休日に……うぅ、だが暑い。リビングは妹に占領されてるしな」


 俺は覚悟を決め部屋の窓へと近付くと……


『エアコン壊れたならさっさと部屋の窓開けなさいよぉ! あんたと早く夏の思い出作りたいんだからぁ!』


「……何だ? 葵の奴が騒いでるのか? 頭がボーッとしてたから何を言ってるのか聞き取れなかったな……暑。窓開けよ」


ガラガラ!!


「……返事無いし。まさかひかりの奴。熱中症で倒れてるんじゃないでしょうね。サナっちに電話して救急車を……へ?」


「……葵?」


 ……窓を開けた瞬間。そこには高校デビューで金髪ギャルと変貌を遂げてしまった幼馴染みの織姫 葵が自分の部屋の窓を開けて立っていた。


「……ひかり?! な、何でいきなり窓なんて開けてるのよっ! そ、それに何で上半身裸なのよ。恥ずかしくないわけ? 変態っ!」


 2年前の受験シーズンからあまりに話さなくなっていき。気がついたら疎遠になっていた。久しぶりの会話もどこかトゲトゲしく攻撃的だ。


「いやー、暑いからさ。エアコン壊れたんだよ」


「ふ、ふんっ! そうなんだ。ね、熱中症とか気をつけなさいよね。倒れたら大変なんだからっ!」


 高校じゃあ同じクラスだけどたまに挨拶くらいで、ほとんど会話しないし会話するのも数ヶ月振りくらいだっけかな?


「……暑。葵……悪いけど」


「な、何? もしかして私の部屋に来たいわけ? い、良いわよっ! エアコンガンガン効かせてやるんだからっ! 涼しみに来なさいよ。光……汐崎!」


 何故か赤面しながらのお誘いだった。いやいや待った待った。


 お互い高校生にもなったんだから適切な距離を取らないと色々と不味いわけで。


 葵は黎明れいめい高校のマドンナ的存在のリア充ビッチギャル。


 俺は陰日向かげひなたに居る平凡な童貞高校生。


 いわゆる学校カースト制度は守られるべきなわけで───


「んー、いや。良いや窓開けてれば涼しい風が入って来るし……あっでもしばらくは部屋の窓開けとく事になるから悪い。部屋の中見られたくなかったらカーテンでもしておいて……」


「あっそう! なら光に何かあったら大変だから毎日生存チェックしに行ってあげるわよ。窓からね。感謝しなさい」


「……はい? いや。葵…君、いきなり何を言ってんだ? つうか生存チェックって何?」


「生存チェックは生存チェックよっ! これからの夏を生き残る為のね。だからこの夏の夏休みはずっと私と過ごしなさい! ひかり。これは命令よっ!」


 なんて事を突然宣言され。


 疎遠状態だった俺と葵の時間が動き出す。


 夏のアオハルの日々が始まった。



第1話を最後まで読んで頂きありがとうございます。

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