第6話
「この後、委員会があるから先に帰っていいからね」
「先に?帰る?誰が?」
入学式から一週間がたっただろうか、今まで一度だって別々に帰ったことなんてないのに突然言い渡される“先に帰っていいよ”宣告。
後ろの席へ振り返ってくる結衣は今日も可愛いくて素直に頷いてしまいそうになるが、俺と結衣との時間を邪魔しようとする存在(委員会)は大変許し難い。
「バスあるから、大丈夫だよ。時間が遅くなっちゃったらバス停には迎えに来てほしいけど」
「そっか、じゃぁ俺、部活に顔出してるから」
「え?部活入っていたの?」
帰り支度を始めていた朱莉が、手を止めてこちらの会話に入ってくると、ウソくさいとでもいいたげな表情で俺を見る。
「ああ、一応な。俺スポーツ特待生で入学してっから」
「“スポーツの”特待生というところは納得した。で、何部なの」
「空手」
「渡貫、部活入ってたの!なんだよ〜それならバスケ部にも今度顔出してくれよ」
ジンが珍しくテンション高めに話しに入ってくる。
「“なんだよ〜”ってなんだよ。俺は掛け持ちできるほど器用じゃないからな」
「なんでって、渡貫ならなんのスポーツでもできそうじゃん」
「まぁな」
朱莉は、俺の自信満々の表情が気に入らないようで睨みつけてくる。
「それじゃ、櫻井さん行こうか」
俺以外の男に名前を呼ばれるなんて癪だが、いつもならここで怒りの感情が湧いてくるが何故だか仁には湧かない。
入学してから仁を観察してみたが、硬派な奴なのか他に好きな人がいるようで、俺と変わらないテンションで結衣にも接している。
この年頃の男どもはもてまくりたいという気持ちを持っているやつが多いが、仁からはそういう感情が読み取れない。
クラス委員が一緒になったので度々結衣と一緒にクラスを仕切ることがあるのだが、結衣を見る目に熱はなく、かっこつけたりするようなこともなかった。
俺は仁に結衣を任せて、仕方なく部室をノックする。
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