ためらう幼馴染男子の日常

美嶋ルナ

第1話

「高等部代表挨拶。櫻井結衣」

「はい!」

体育館の二階にある応援席の窓から、太陽の光を受けてキラキラと光り輝く瑠璃色の瞳に、肩の長さでさらさらと揺れるブラウンの髪。

挨拶をするために列の一番前に並んだはずが、後ろの子ともそんなに身長が変わらないということはおそらくこのクラスでも前から数えた方が早そうだ。

この学校はこの国でも1、2を争うレベルの学校で、幼稚舎から大学までは基本エスカレーター式だ。

俺と結衣のように途中入学の生徒も少なからずいるのだが、高等部では全体の1割ほどだと聞いている。

結衣からは奨学金が充実しているところと、有名大学への進学率の高さからこの学校に入学を決めたと聞いている。

奨学生になるにはそれなりの成績でないと入れないため、毎晩遅くまで勉強していたことを俺は知っている。

その甲斐があってこの学年のトップの成績となったようで、代表の挨拶を任されたと言っていた。

しかし結衣本人はあまり目立ちたくはなかったようで、身分のこともあるからと一度やんわりと断ったと聞いていたのだが、”生徒はみな平等”を方針としている校風の学校とだけあって高等部の校長先生じきじきにお願いされたようだ。

俺としては結衣にはできるだけ目立たずに学生生活を過ごしてほしいため、入学前から校長先生とは仲良くなれそうもないなと思っている。

どうにか高校生活も結衣と同じ場所で送ることができたのだが、壇上にあがり皆の前に立った瞬間の男どもの結衣への視線に全員殴り倒したくなる。

結衣は身長が低いことを気にしていて少しでも足が長く見えるようにとスカートの丈が他の女子より少しだけ短いのだ。

どこがとはあえていわないが、体は身長に見合わない成長をしている。

結衣は太って見えることを気にしていて少しでも胸が小さく見えるようにブレザーは少し大きめのサイズを選んでいた。

結衣が話し始めるとその可愛い声にうっとりするのだが、代表挨拶は難しい内容で少しも頭に入ってこない。

この頭の悪そうな俺の心の声に、どうやってこの学校に入学したのか気になるやつも多いと思うが、簡単なことだ。

スポーツで全国1位をとればどこの学校でも入れてくれる。

ただしこの場合入学後も結果を残していかないと、俺の学力では留年の可能性がでてきてしまう。

それは結衣と学校生活を一緒に過ごすために絶対に必須なことだと考えて、面倒ではあるが部活には入らないといけない。

「湊!どうだったかな?」

結衣が話している以外の時間を寝て過ごしていたため、いつのまにか入学式が終わっていたことに驚く。

「かわ」

「かわ?」

「完璧だったと思うよ」

「良かった」

ホッと胸を撫で下ろす姿も可愛くて、このまま誰の目にも映らないように閉じ込めたくなるような気持ちをグッと抑える。

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