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「なるほど。学校で体調不良者が続出していて……それが、違法薬物によるものかもしれないのか」


 あたしのお父さんは、ことの経緯を説明したらそう言った。もちろん、あたしが返す言葉は分かってる。


「うん。これは噂の域を出ないけどさ、2年C組では覚醒剤による薬物汚染が広まってるって噂で、複数の生徒がやり玉に挙げられてるらしいの」

「それは、放っておけないな。――まあ、僕にできることは何もないけど。いくら僕が新聞記者でも、志穂里の学校で起こっている事件を取材することはお門違いだと思っているからな」


 あたしのお父さんは「神戸新報」という新聞社の北部支局に勤めている。常日頃から取材に追われている南部と違って、北部というのは――事件らしい事件なんて起きるはずがない。故に、いくら新聞記者と言っても、お父さんはオフィスで暇を持て余しているのが現状だった。


 あたしは話す。


「まあ、そうでしょうね。お父さんが取材することといえば、せいぜい『大きな祭りが開催されました』とか『チューリップ畑が見頃です』とか、そんな感じの記事しかないからね。それは、あたしが新聞を読んでてもよく分かるわ」

「確かに、志穂里に言われると……言い逃れは出来ないな。僕が事件の取材に対して不慣れなのは事実で、そもそもの話、兵庫県の北部という場所で刑事事件が起こる訳がないからな。仮に起こったとしたら――大事だ」


 お父さんは、深刻そうな表情を見せていた。――話題を変えよう。


「ところで、お母さんは今日も遅いの?」

「そうだな。旅館に勤めている以上、毎日が夜勤だからな。たまには、志穂里も静恵をねぎらってあげたらどうだ?」

「確かに、お父さんの言う通りかも。――あたし、そろそろ2階に上がるから」

「分かった。――おやすみ」


 あたしのお母さんの名前は「佐波静恵さなみしずえ」っていう。旅館の仲居さんとして働いてて、毎日深夜近くまで働いている。その割に給料は安くて、正直言って――貧しい生活を送らざるを得ない。それなら、まだお父さんの給料の方が高いぐらいである。ちなみに、お父さんの名前は「佐波敏彦さなみとしひこ」っていう。まあ、今は関係ないけど。


 2階に上がったところで、あたしは課題をやりつつ――薬物汚染についても考えていく。一体、誰がこんなことをしたのだろうか? あたしはそれが気になって仕方なかった。


 とはいえ、情報が不十分な状態で考えても仕方がない。あたしに出来ることといえば、せいぜい「事件の解決を待つこと」でしかない。


 そんなことばかり考えていると、スマホが短く鳴った。――どうやら、礼子ちゃんからメッセージが来ていたらしい。


 あたしは、スマホのロックを解除してメッセージを読んでいく。


 ――聞いたわよ、「サバト」の件。

 ――確かに、遥斗くんならそうやって考えるでしょうね。

 ――でも、私は遥斗くんの考えに対して懐疑的よ?

 ――だって、サバトって……私たち高校生がやるような儀式じゃないしさ。


 確かに、そこは礼子ちゃんの言うとおりかもしれない。サバトは汚らわしい儀式だし、校内で公然とそんな儀式が行われてるとしたら、マズい。


 あたしはメッセージを読み終わり、ベッドの上から天井てんじょうを見上げることにした。どうせ天井を見上げたところでどうにもならないことは分かってたけど、あたしとしては藁にもすがる思いだった。


 ――正直言って、その日は眠ることすら出来なかった。

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