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「ああ、やっぱりそうだったのか。僕たちも『オカルト同好会』という謎の部活があることは知っていたけど、まさか自信作を『怪異』だと勘違いされることまでは考えていなかったよ」
部員の1人はそうやって言った。――ジャージには「伊藤」と書かれている。
「えっと……伊藤さん、『自信作』とはどういうことなんでしょうか?」
あたしがそういうと、伊藤さんは質問に答えていった。
「実はね、文化祭の出し物で『プログラミングで動くロボット』を開発していたんだ。それで、デザインを考える過程で『どうせなら流行り物が良い』ってことになって『ターボばあちゃん』を選んだんだ。ほら、『オカルトオタクの男の子と霊媒師の女の子が繰り広げる少し下品なラブコメ漫画』にも仲介役として出てくるからね」
伊藤さんが言っていた漫画のことはよく知っていたけど、確かにその漫画に出てくるターボばあちゃんは「ターボババア」なんて言われてたっけ。まあ、地方によって「ものすごいスピードで走るおばあちゃんの妖怪」は呼び名が変わってくるし、妖怪自体が地方によって呼び名が変わってくることはもちろん知ってる。
それにしても、どうして技術部は文化祭の出し物で「ターボばあちゃん」を選んだんだろうか。あたしはそれが謎だったから――聞いてみた。
「それにしても、どうしてターボばあちゃんだったんでしょうか?」
「ああ、それに関してだけど……その場のノリというか、そこにいる水口先輩のアドバイスだよ」
そういって、あたしは伊藤さんから「水口先輩」を紹介された。
「僕が、伊藤くんが言っていた水口先輩だよ。名前は……
あたしは、水口くんの話を聞いて――すべてを察した。
「もしかして、夜な夜な目撃されてた『ターボばあちゃん』の正体って、水口くんがプログラミングしてた自走式ロボットだったってこと?」
もちろん、水口くんの答えは当然のモノだった。
「そうだよ。僕が毎晩研究してたモノが――うっかり生徒の目に留まってしまってね、おかげさまで『ターボばあちゃん』に関する噂が広まっちゃったよ。これに関しては、僕の責任だと思っているよ」
確かに、ショート動画投稿サイトには――水口くんが作ったと思しきターボばあちゃんの動画が拡散されていた。こうなると、もう取り返しは付かない。
「それで、これからどうすんの? ネットで拡散されちゃった以上、『ターボばあちゃんなんていなかった』とは言えないわよ」
あたしがそう言ったところで、水口くんは話す。
「むしろ、これを……文化祭の目玉にするんだ。そうしたら、技術部の評判は右肩上がりになっていって、入部希望者が増えるはずだ。――まあ、技術部自体が『地味な部活』だからどれだけ効果があるかは分からないが……」
水口くんがそう言いかけた時だった。――あれ、浅間先生?
「水口ー、そんなところで何してるんだ? ――って、佐波さん、どうしてここにいるんだ?」
「浅間先生、これには訳があって……」
「訳? どういう訳だ」
「実は……あたし、複数の生徒から『ターボばあちゃんを捕まえて欲しい』っていう依頼を受けてたんです。それで、学校の裏山で張っていたら……どうやら、ターボばあちゃんの正体は技術部が文化祭で考えてた出し物だったんです」
あたしがそう言うと、浅間先生は――笑った。
「アハハ、そうだったのか。確かに、技術部で『自走式ロボット』を考えていたのは本当だ。でも、デザインまでは聞いていなかったから……まさか、老婆だとは」
「浅間先生、これ……老婆じゃなくて、『ターボばあちゃん』です。まあ、地域によっては『ターボババア』なんて呼ばれてるらしいですけど」
「ああ、ターボばあちゃんか。六甲山に現れるという現代の怪異だな。もしかして、水口はターボばあちゃんを実際に動かそうと考えていたのか」
浅間先生の質問に対する水口くんの答えは、分かっていた。
「そうです。――まあ、オカルト同好会に見つかってしまった以上、デザインは一から作り直しなんでしょうけど……」
ガックシとする水口くんに対して、浅間先生は――声をかけた。
「大丈夫だ。むしろ、そのデザインの方がインパクトが良いと思うな」
「そうですか……。じゃあ、僕はターボばあちゃんのデザインでプログラミングを続けていこうと思います」
ひとまず、「ターボばあちゃん」の正体は技術部が作り上げた自走式ロボットだった。あたしは「ターボばあちゃんの秘密」を暴いてしまったことによって、知らなくて良いことまで知ろうとした。でも、知っておかないと後悔することもあるし、その辺の塩梅って難しいんだろうな。あたしはそんなことを思いながら、裏山を後にした。
――流石に、9月も中旬となると半袖じゃ寒いな。
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