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 翌日。あたしと礼子ちゃんは遥斗くんに優奈ちゃんから聞いたことを話した。


「なるほど。『教科書が消える』という現象は他の生徒の間でも起きていたのか。これが本当なら、真島詠美という人物はとんだ大悪人だな」


 遥斗くんがそう言うから、あたしは思ってたことを言った。


「そうね。そこは遥斗くんの言う通りよ。――でも、どうして詠美さんはそんなことをやったのかしら? 礼子ちゃんから聞いた話だと、『消えた教科書の種類はバラバラだった』って言うし……」


 確かに、礼子ちゃんは「消えた教科書の種類はバラバラだった」と言っていた。ある生徒は国語の教科書が消えて、ある生徒は数学の教科書が消えて、またある生徒は英語の教科書が消えたらしい。――共通点は、なさそうだ。


 もしかしたら、詠美ちゃんは「教科別に成績が良い生徒の教科書」を盗んだのかもしれない。でも、そんなことをやって彼女の成績が上がるかと思えば……そうでもないのが現実である。もっと、効率の良い考えはあるはずだ。


 それにしても、暑いな。ここは技術準備室だから当然か。オカルト同好会の顧問(?)であたしのクラス――2年B組の先生である浅間貴史あさまたかし曰く「そこしか部室として使えそうな物件がなかった」って言ってたし、浅間先生自身が技術部の顧問だから……多分、自分が持ってる権利を遥斗くんに対して使っただけなのだろう。


「――おーい、やっとるか?」


 噂をすればなんとやら。浅間先生が技術準備室の中へ入ってきた。


 彼は話す。


「2年C組の『消えた教科書』事件、他のクラスでも話題になっているそうだな。もちろん、僕も知っているよ」

「浅間先生……どうしてこんなところに?」


 あたしがそう言うと、浅間先生はあたしたちにあることを話した。


「すでに運営に対して通報済みだが……実は、フリマアプリでウチの学校で使われている教科書が多数出品されていたんだ。出品者の名前は『エイミー』という名前だったが、これはだろう」


 ――まさか、詠美ちゃんは盗んだ教科書をフリマアプリで売り飛ばしていたのか? 私はそう思った。


「つまり、詠美さんはフリマアプリで教科書を売ってたってこと?」

「ああ、そうだ。恐らく、金に困って出品したものと思われるが……彼女が生徒の教科書を盗んでフリマアプリで出品していたことは事実だ」


 そうだったのか。――でも、気になる点は多い。


「浅間先生、そうは言うけど……彼女、本当にお金に困ってたのかしら? タロットカードを持ってるぐらいだし、そんなお金に困ってるような様子は見受けられないけど……」


 あたしがそう言うと、浅間先生は意外なことを話した。


「実は、最近……詠美さんの素行に関して、風紀委員の先生からある指摘を受けたんだ」

「風紀委員って、3年A組の須川先生よね? 彼、なんて言ってたの?」

「ああ、須川先生は『最近、2年C組の真島の様子が明らかにおかしい。彼女は常に憔悴した表情を見せていて、学校の近くのコンビニで万引きした形跡も見受けられたらしい。万引きに関しては解決済みで始末書も書かせたが、憔悴した表情だけは気になって仕方がない』と言っていたよ。――僕としては、憔悴した表情が気になるけどね」


 なるほど。彼女の身に、何があったんだろうか? あたしはそのことを聞きたいけど、なんだかもどかしい気分になっていた。

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