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 水曜日の放課後。あたしは礼子ちゃんとの約束を守って――2年C組の前に来た。基本的に、放課後というのはクラス間での行き来が自由なので、違うクラスの生徒がウチのクラスに来るなんてことは日常茶飯事である。


「詠美ちゃん、あなたに占って欲しい子がいるの」


 礼子ちゃんは、真島詠美の姿を見るなりそう言った。彼女はどこにでもいるような普通の女子高生といった感じで、長い黒髪は前髪が切りそろえられていた。見るからに「霊気を帯びてる」という風格で、多分――ガチの占い師なんだろう。あたしはそう思った。


 詠美ちゃんは話す。


「私に占って欲しい子……そこのショートボブの女の子かしら?」


 ほぼ初対面に近い状況なのに、彼女はあたしのことを一発で見抜いた。確かにあたしの髪形はショートボブだし、こういう見た目で声も女の子にしては低い方だから、「あたし」という一人称を言わない限り男の子に間違えられることもある。その証拠に、小学生の頃にたまたま家の電話に出たら「ボクちゃん?」と驚かれたこともある。


 まあ、そんなことはともかく――あたしは、詠美ちゃんに言いたいことを言った。


「そうよ。あたしの名前は『佐波志穂里』って言うんだけど、あなたにはあたしのことを占って欲しいって訳なの。占って欲しい内容は『インターハイでウチの高校のバスケ部は優勝できるかどうか』よ」


 当然だけど、詠美ちゃんはあたしの要求をのんだ。


「分かったわ。――ちょっと待ってて」


 そう言って、詠美ちゃんは自分のスクールバッグをガサゴソと物色し始めた。


 普通、スクールバッグには教科書とノート、そしてスマホが入っているはずである。しかし、彼女のスクールバッグは一般的な女子生徒のソレと比べると――明らかに異質だった。彼女がスクールバッグから出したモノは、無数のカードである。男子生徒が昼休憩にデュエルするためにトレーディングカードを持ってくることはよくある話だけど、彼女が持っているカードは、どこからどう見てもタロット占いで使うソレだった。


「これ、本物のタロットカードよね?」


 あたしは思わずそう言った。もちろん、詠美ちゃんが返す言葉は当たり前のモノだった。


「そうよ。これ、本物のタロットカードだから。ちなみに『黄金の夜明け団』が作ったモノよ」


 後で遥斗くんから聞いた話だけど、タロットカードには「黄金の夜明け団版」と「マルセイユ版」の2種類に分けられるらしい。2つを比較するとマルセイユ版の方が古い歴史を持ってるけど、世間一般で流通してるタロットカードは黄金の夜明け団版の方である。


「――それじゃあ、目をつむって」


 詠美ちゃんにそう言われた以上、あたしはその目をつむった。視界が遮られてるから分からないけど、多分――詠美ちゃんはカードを引き当ててるのだろう。


 ***


 しばらくして、詠美ちゃんはあたしに話しかけてきた。


「終わったわ。目を開けて」


 彼女にそう言われて目を開けると、そこには馬車に乗った男性のカードが置かれていた。


「えーっと、これはどういう意味かしら?」


 あたしは詠美ちゃんに置かれたカードの意味を聞いた。


 彼女は、あたしの質問に答えていく。


「これは……7番の『戦車』っていうカードよ。意味は『勝利』で、志穂里さんの今後の精神状態を表してるんだと思う。あなた、女子バスケ部の主将やってるでしょ? だから、このカードを信じる限り――ウチの高校はインターハイで優勝できると思うわ」


 詳しいことを説明した訳じゃないのに、詠美ちゃんはあたしのことを見透かしていた。――なんだか、怖いな。


「志穂里、良かったじゃん。アンタならインターハイで優勝できるはずよ?」


 礼子ちゃんにもそう言われたけど、正直言って――あたしは「戦車のカード」に対して懐疑的な考えを持っていた。

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