Post Credit 探偵の助手

*

 数日後。――2年A組の「送る会」は成功に終わった。ちなみに、杉下先生のカレーの味はおおむね好評で、陽明軒の味を知っている人からは「杉下先生こそ陽明軒の跡継ぎになるべきだ」という意見も散見されたようだ。


 そういう話を遥斗くんから聞いて、あたしは安心した。


「まあ、『送る会』が成功に終わっただけでも良いんじゃない? カレーの方も好評だったみたいだし」

「ああ、そうだな。僕も杉下先生のカレーというモノを食べてみたいが、いかんせん2年A組の人間ではないからな」

「それはあたしだって同じよ。――でも、いつかは振る舞ってくれるんじゃない? 杉下先生のカレー」


 ところで、ここは技術準備室である。今は「技術」という授業は「情報工学」と「電気工学」の2種類に分けられているが、昔からある電気工学の準備室に空調は――ある訳がない。暑い。現在の気温、多分36度ぐらい。下手したらサウナでととのいそうだ。


「それにしても、暑いわね……ここ」

「当たり前だろう。昔からある技術準備室を間借りして部室にしているから、空調なんてモノはない」


 一応、もうぶん程度の扇風機は置いてあるが、焼け石にウォーターですらない。あまりの暑さに、あたしは溶けそうだった。


 それでも、遥斗くんはあたしに大事な話をする。


「それで、今回の件で思ったんだが……志穂里、僕の助手にならないか?」

「助手? もしかして、あたしが遥斗くんの助手に?」

「ああ、そうだ。僕は自称『オカルト探偵』だが、あくまでも自称の域を出ない探偵だ。それに、助手役の人手がいなくて困っていたんだ。だから、志穂里が僕の助手になるんだ。君はこの学校で起きている怪事件の情報を集めて、僕に話す。そして、僕は君が集めてくれた事件を解いていく。これでウィンウィンの関係だろう?」

「た、確かにそうだけど……あたし、事実上帰宅部な遥斗くんと違って『女子バスケ部』って立派な部活に入ってるし……」

「ああ、その点に関しては心配いらないよ。基本的に、水曜日は部活が休みだろう? だから、その日を利用して週1回僕に収集した情報を話すんだ。――もちろん、君の友人にも手伝ってもらうよ」


 友人――礼子ちゃんのことかな。まあ、多分彼女なら力になってくれるだろう。あたしはなんとなくそう思っていた。


「それじゃあ、契約……成立かな」


 あたしがそう言ったところで、遥斗くんが言うことは――分かってた。


「ようこそ、僕の探偵事務所へ」

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