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その日の放課後は、部活が休みだった。――顧問の先生が「急用がある」と言って早退してしまったのだ。
ならば、あたしがやるべきことは一つしかない。あたしは校舎の外れにある技術準備室へと向かった。
技術室はいわゆる「実習棟」と呼ばれる場所にあって、体育館からは程近い。体育館裏では不良学生がこっそり煙草を吸っていて、「風紀委員の先生にバレたら一発退学だろうな」と思いながらその様子を見ていた。そして、技術準備室に入ると――遥斗くんの他に、あたしに依頼を持ちかけてきた張本人である礼子ちゃんも部屋の中にいた。まあ、部活が休みなら当然だろう。
「来たか」
「来たわね。――っていうか、志穂里ならここに来ると思ってたけど」
2人は揃ってそう言った。どうやら、あたしを待ち構えていたらしい。
テーブルの上にはたくさんのお菓子が置いてある。あたしはとりあえずポテトチップスをいただくことにした。――コンソメ味か。
コンソメ味のポテチを食べながら、あたしは話す。
「遥斗くん、休憩時間に言ってたけど、希さんが行方不明になったことについて『刑事事件になる可能性』を示唆してたわね。あたしだって、なんとしてもそれだけは避けたいけど……何か、手立てはあるのかしら?」
あたしがそうやって話したところで、遥斗くんは言う。
「――手立てなら、君のスマホの中にあるじゃないか」
「あたしのスマホの中? あるとすれば……この間、礼子ちゃんから送られてきた写真しかないけど……大丈夫なの?」
あたしは少し心配だったけど、遥斗くんの話を聞く限り、どうやら心配はいらなかったらしい。
「大丈夫だ。僕も礼子からその写真を見せてもらったけど、少なくとも『僕の出番』はいらないみたいだな。――まあ、君たちから依頼された以上、僕も
「遥斗くん、写真だけで何か分かったの?」
「ああ、分かったよ。この事件の犯人は……多分、君の部活動における顧問の先生だ」
「えっ? あたしの部活は女子バスケ部だけど……顧問は2年A組の『
ああ、そういうことか。どうして、あたしはそのことに気づけなかったのだろうか。
「ちょっと待って。もしかして、希さんは杉下先生とそういう関係に至ってたってこと?」
当然だけど、あたしの意見は間違っていた。――遥斗くんは話す。
「おい、志穂里、いくら何でもそれはない。下品な学園ドラマの見過ぎだ。――これは僕の推測だけど、杉下先生は希さんに何かを頼んでいたんじゃないのかな?」
遥斗くんの話に、礼子ちゃんが食いついていく。
「あっ……そういえば、2年A組の生徒で1人、『親の事情で転校する』っていう子がいたような……。名前は『
礼子ちゃんがそう言ったことによって、あたしはなんとなく疑問に対する答えを出した。
「あー、そういうことね。――杉下先生、希さんに『レシピ』を教えてたんだと思う」
「レシピ? 一体、何のレシピかしら?」
そこまで言われたら仕方ないな。――あたしは話す。
「あたし、よく希さんの家……というか、店に行くんだけど、そこで必ず注文するメニューがあるのよね」
「メニューって、何?」
礼子ちゃんの疑問には、答えてあげるのがセオリーである。
「――カレーライスよ」
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