【完結】オカルトハイスクール 佐波志穂里のナゾトキ手帖
卯月 絢華
File 01 宇宙人騒動
Phase 01 連れ去られた少女
1
結局、2025年7月5日に人類は滅亡しなかった。まあ、かつては「1999年の7月に人類が滅亡する」なんて散々言われてたし、「マヤ文明のカレンダーには2012年12月21日までしか書かれてないからその時に人類は滅亡する」なんて言われてたけど、それでも人間は今日も生き延びている。
その証拠に、今日――2025年7月6日も、あたしは懲りなく高校の部活動にいそしんでいた。あたしが通ってる高校は地方都市にある平凡な私立高校でしかなく、そこであたしは女子バスケ部に所属している。本当は帰宅部というか、文化部が良かったけど、親に「運動しなさい」って言われたから、中学の頃から仕方なくバスケットボールを始めるようになって、そのまま板に付いてしまっただけの話だ。
運動部ということで、あたしに休みというモノはない。平日は勉強して、土日は部活にいそしんで、まともに休めるのは祝日だけだった。部活を終えて帰ってきてからも、結局宿題に追われる日々で……正直、しんどかった。高校に入ったら、今よりもっと遊べると思ってたのになぁ。
眠い目をこすりながらリビングへ向かうと、「2025年7月5日に人類は滅亡しなかった」というニュースが流れていた。正直、テレビで取り上げられるのは馬鹿馬鹿しいと思いつつ、ちょっと前にお母さんが「昔は『ノストラダムスの大予言』なんて言って本当に1999年の7月に人類が滅亡するって噂が流れてて、その予言を題材にした映画が作られたこともあった」って言ってたことを思い出していた。
そんな私の姿を見たのか、お母さんが話しかけてきた。
「あら……
「うん。
「そっか。――目玉焼きとトースト、焼いてあるから」
お母さんがそう言ってくれたので、あたしはトーストの上に目玉焼きを載せてそれを頬張った。まるで、金曜日の夜に何度もやっているアニメ映画のようだ。
それから、話題はテレビに映ってるニュースのことになった。
「結局、『2025年7月5日に人類が滅ぶ』って言っていたけど、滅びなかったわね。――志穂里は、この件についてどう思っていたの?」
「うーん……そんなこと言われても、分からないわよ。でも、あたしはあの予言のことを信じてなかったわ。確かに、スマホのショート動画ではよく流れてたけどさ」
あたしがそうやって言うと、お母さんは納得してくれた。
「それはそうよね。そんな予言、信じる方が馬鹿馬鹿しいわよ。――おかげさまで、こっちは仕事が減って困ってたけど」
あたしのお母さんは、街から少し離れた温泉街にある旅館で仲居さんとして働いている。最近だとインバウンド需要で日本人じゃないお客さんが増えてるらしいんだけど、日本で提唱された「7月5日の予言」が海外を中心に広まっちゃったせいで旅館にはキャンセルが相次いでいたらしい。
そんなことを思い出しながら、あたしは話す。
「まあ、7月5日はとうに過ぎたし、これからまたお客さんは増えてくると思うわ。少なくとも、あたしはそう考えてる」
「そうなのね。――志穂里、そろそろ学校に行かなくてもいいの?」
「ああ、忘れてたわ。急いで用意するから、待ってて」
お母さんに学校の準備を催促されてしまったので、あたしは歯を磨いて顔を洗い、高校の体操服に身をまとった。
そして、学校へ行く準備ができたところで――お父さんがリビングにいた。
「志穂里、今日も部活なんだな。まあ、3年生も引退したし、この夏のインターハイではエース候補って言われているからな。でも、あまり無理はしないように。無理をしすぎると、その後の進路にも影響を及ぼす可能性がある」
お父さんはそう言うけど、あたしは別にプロバスケットボール選手になりたい訳じゃない。あたしはあくまでも普通の大人になって、普通に働きたいだけである。
「そうは言うけど、別にあたしは好きでバスケやってる訳じゃないわよ」
「そうか。――とはいえ、部活だけが高校生活じゃないからな」
「分かってるわよ。――それじゃあ、あたしは学校へ行ってくるから」
そう言って、あたしはチャリに乗り込んで高校まで向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます