第6話 いなかの村



「わあっ!」


 すみれは、うれしそうなの声をあげました。


 なぜなら、すみれのまわりは、見わたすかぎりのレンゲばたけだったからです。


 レンゲ草は、ピンクのちいさな花がいっぱいあつまって、ひとつの花をつくっています。


 それが、すみれのまわりいっぱいに、これでもかといているのです。


「きれいね」


 すみれも、やっぱり女の子です。

 あまいれんげそうのかおりに、うっとりとなりました。


 そしてしりもちをついたかっこうのまま。

 しあわせそうに目をとじて、ふうーっとためいきをつきました。


「いまは、はるじゃな」


 トッピのむねで、ランペじいがものしり顔で言いました。


「どうして?」


 春休みなんだから、いまが春なのはあたり前です。


 すみれには、ランペじいが、わざわざ春なのだと言ういみがわかりませんでした。


 だから目をとじたまま、たずねてみたのです。


「ここは、おとうさんの夢の中だよ。夢なんだから、季節きせつがいつかなんて、来てみるまではわからないんだ」


 トッピが、あきれた口ぶりで答えました。


 すみれはその声にさそわれて、目をひらきました。

 そしてトッピのすがたをながめると、くくくっと笑いました。


「なんだよ。そんなに、おかしいか?」


 トッピのかっこうは、まるでむかし飛行機ひこうきのりのようです。


 頭には、やわらかいかわでつくられた、ぼうしをかぶっています。


 そのぼうしには、耳を守るためのカバーがついています。

 ひさしの上には、風から目を守る、ゴーグルという名前なまえのメガネがのっていました。


 ゴーグルは、使つかいたい時だけ目にかぶせるのでしょう。


 そしてかたでとめられたマントの下には、上着うわぎとズボンをはいています。


 上着とズボンは、ポケットがいくつもついていて。

 まるで、兵隊へいたいさんがているような服です。


 ズボンのベルトには、革でできた小さなバッグがふたつ。

 じゃまにならないように、さげられていました。


 そしてさいごは、やっぱり革でつくられた、あみあげヒモのブーツです。

 それは足のすねの半分はんぶんまである、長いブーツでした。


「だって、まるでテレビに出てくる、へんなヒーローみたいなんだもの」


「わるかったね。プップにのって飛ぶときには、かならずこのかっこうになるきまりなんだよ」


 すみれは、思ったことをどんどん言うくせがあります。

 そこがトッピは、すこしきらいみたい。


「ぷうぷう」


 ふつうの大きさにもどったプップ。

 レンゲ畑のむこうを見て、しきりになきごえをあげています。


 なんだろうと思って、すみれは顔をそちらにむけました。


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