魔法少女は入学する!?
あーたーらーなーーい! part2
当たりません。まぁぶっちゃけ予想通りです。剣の練習は魔法少女になった後で、ちょっとだけやってましたが、弓はやってません。
正直、前に飛んでいるだけ評価して欲しいです。
と言うか思ったよりも真っ直ぐ飛びます。
多分ですが、この弓がある程度こちらの思考を読み取って、その上で補正をかけてくれているんだと思います。
弦を引くだけで矢が装填されるので矢切れもなく、装填の時間も短縮できますし、すごい弓です。
だから、当たらないのは私の弓の腕前以外にも理由があります。
「ぐるるるる」
唸ってます、狼が。
そう、狼です。さっきまでの人狼の様な姿ではなく、完全な狼の姿に変身してしまいました。
私が弓を手にした直後、パラメデスさんもそれに合わせて対応したのでしょう。
ちっこくて疾い姿になるとこで。
つーかかわいいですね。犬派の私としてはいまのパラメデスさんはギリストライクと言うか、さっきの人狼形態はまだかっこいいが勝ちますけど、こうなるとほぼ犬なんでかわいいが勝っちゃいます。
それと、やっぱり避けるだけで、近づこうとしてきませんね。
まぁ最初のなんかすごいパンチ的なのは完全狼モードでは打てなそうではあります。
踏み込みとかめっちゃ強かったですし。
うーん。当たらない弓をいつまでもただ撃ち続けるのもアレですし、別の武器も試しても良いかもしれません。
ふと、そこまで思考したところで、今度はパラメデスさんの方に動きがありました。
いえ、正確にはむしろ動きが消えたと言うべきでしょうか。ピタリと、四本の足の爪で地面を掴み急ブレーキを掛けて静止したのです。
その一歩先を狙った私の矢は、狼の鼻先を掠めるに終わりました。
「がゥ?」
その声には、確実な意思が、
私が、なぜパラメデスさんが接近して来ないか分からない様に、パラメデスさんも何かの疑念を抱いたのでしょうか。
勝つために必要な疑念を……かは、流石に分かりませんね。
とにかく、今は次の矢を……ってあれ?
どうしてパラメデスさんが、
「『|
私の目の前で、パラメデスさんがスムーズに狼から人間の姿に変化していきます。
あ、死んだかもしれません。
「順転拳」
□ □ □
『
と、そう呼ばれる技術がある。
魔法少女ゴロテスによって生み出されたこの技術は、その会得の簡単さと汎用性の高さから、所属を問わず、戦闘系の多くが会得している。
その理論はシンプル。
『飛行』の魔法を、地上で使うのである。
『飛行』の浮かせる力を、中途半端に出力し、体重を軽くする。
また、『飛行』の前に移動する力を出力し、移動のスピードや浮かせることで軽くなるはずの攻撃を補強する。
超スピードと威力の向上をなすその技術。
この技術の練度は差がでやすくはあるが、攻撃威力を上げることに重きを置かず、スピードを上げる事だけを考えれば、習得は三日とかからない。
自転車に乗るより簡単とも呼ばれるほどである。
だからこそ、パラメデスは驚いたのだ。
唐突に現れた、魔法少女を名乗る銀騎士。
ここに居ると言うだけで、なんらかの組織に属している可能性が高い彼女。
その魔法少女が、『疾風駆け』どころか、『飛行』すらろくに使用して来ないことに。
剣を振る速度は遅く、魔法少女が遠距離攻撃をする際の基本的なバリエーションであるはずの『飛行』による多角的な攻撃もして来なかった。
そのことを訝しんだパラメデスは一つの仮説をたてる。
この銀騎士は、魔法少女になったばかりの素人であると。
ならば、こちらが『疾風駆け』と『狼』の魔法により強化された脚力の合力で近寄れば、その速度に銀騎士は対応できないのではないか。
その答えは、今示される。
「順転拳」
二度目の、浸透順転拳。
パラメデスは、長いインパクトの中で、確かに鎧に反響する衝撃と、背骨を粉砕する感触を感じ取った。
「バ、」
声にならない声と共に、鎧の兜から再び血が撒き散らされた。
そのまま、その巨体は地面へと崩れ落ちる。
パラメデスと銀騎士の間にあるもの。
それは、炎城とダムドの間にあったものと同じ。
経験と格の違いである。
□ □ □
「たーちゃん! 起きて! 寝ちゃダメ!」
そんな声と共に、ダムドの体がゆさゆさと揺らされる。
揺らしているのは、ダムドと共に穴に落ちた商品の少女。
魔法少女『クラウン』もしくは『安藤苗』。
「よせ、苗。このバカ……腹撃たれたヤツを揺らしてんじゃねぇよ」
「たーちゃん!」
「クソ……腹いてぇ。こうなるってわかってたら苗のためなんかにこんなことしなかったのによ」
「たーちゃん。いつものたーちゃんだ! 助けに来てくれてありがとう!」
「お前……前に会った時はなんか変な話し方してたろ……あれもうしなくて良いのか?」
「い、今はその人格は封印してるから良いの! もう!」
「だから揺らすなって……『変身解除』」
ダムドの姿が一瞬光に包まれ、魔法少女のコスチュームからゴシックな服装に変化する。
「苗、腰のポーチに、紙二枚入ってるか?」
「うん、あるよ……一枚は、小切手? 何これ十億?」
「そっちは今はいい、もう一枚の方だ。ペンも入ってるだろ」
「うん。こっちは……『入学届』?」
「必要事項は……こふっ。大体書いてる。名前と、同意しますのとこだけ丸着けりゃいい。」
「う、うん」
安藤苗は、言われた通りに署名をする。なんにせよ、この口の悪い幼馴染は、自分を害することをしないと信用しきっているからこその行動である。
「それ、持ち上げてくれ」
「え?」
「早く」
「う、うん」
そこで、ダムドは思いっきり息を吸い込んで……
「見てんだろうがクソババァ!!! 苗は、『入学届』にサインをした!! これで苗は、『魔法少女学園』の正式な生徒のはずだ!!!『学園』に所属する意思のある魔法少女は! すべからく、お前が守るべき生徒のはずだ! だから……」
「
□ □ □
「……とのことだ。いけるな」
「あぁ、任せろ」
その魔法少女は、ずっと安藤苗を監視していた。
いつ、学園から指令が下ってもいい様に。
携帯電話を片手に、すぐにでも駆けつけたい衝動を抑え続けていた。
その枷は、今解かれる。
□ □ □
「結局、あなたはなんだったんでしょうか。」
なすすべなく崩れ落ちた銀騎士。
パラメデスは、確実な死を確認する為、銀騎士の鎧を剥ごうとその手を伸ばしていた。
直後、その横面に衝撃が走る。
金属バットでフルスイングされたが如きその衝撃は、拳による打撃。
反応できないほどに早いそれは、『疾風駆け』の乗った拳。
ちゃんとした、戦闘系の魔法少女の一撃。
「今日は、邪魔が多い日ですね」
「邪魔はお前らだ」
パラメデスを殴ったのは、似合わない、ファンシーなコスチュームを見に纏う、凶悪な笑みの魔法少女。
「三人揃うのは久しぶりだってのに、こんなクソみてーな同窓会にしやがってよぉ。」
ビシッと、凶悪な笑みをより凶悪にして、少女は言う。
「死刑だ、くそ魔法少女同盟」
魔法少女『ゴッズ』 参戦
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