第2話: 家族と素早い許し

続く…いや、むしろここから始まる。


マーカスは道の真ん中に立ち、消えていった白い光を見つめていた。

これが夢なのか、昏睡状態なのか、幻覚か、ただのカフェインの遅延効果か――まだ頭は整理できていなかった。

だが、どれほど奇妙であろうと「現実」はすでに彼の背中を押していた。


彼は――いや、ほぼ駆け足で――家の方へ向かっていた。

別に怖かったわけじゃない。いや、正直に言えば、怖かった。


周囲は見覚えがあるようで、まったく違っていた。


> 名前:マーカス・カネット

年齢:16歳

現在地:カネット家の邸宅




そして、門をくぐった瞬間――顔にクラッカーが炸裂した。

数が多すぎた。「おかえり」と言うには大げさすぎる演出。


「誕生日おめでとう、坊や!」

女性の声が響く。


続いて、涙声のような男の声。


「うちの子も、もうこんなに大きくなって…ぐすっ…」


両親だった。

本来――いるはずのなかった。


マーカスは固まった。情報処理が追いつかない。

彼はたった30分ほど、異世界を歩いてきただけなのに。

なのに今、目の前にはケーキ、抱擁、紙吹雪、そして家庭内ドラマ。


> 内心コメント:「ロウソクも吹き消してないのに、もう燃え尽きた気分」





---


誕生日パーティーは、まあ、誕生日パーティーだった。

にぎやかで、ドタバタで、誰かが花瓶に落ちて、塩と砂糖を間違える人も出た。

ある意味、王道だ。


だが、本当の驚きはその後に訪れる。

居間に移動し、紅茶を飲みながら――マーカスがまったく覚えていない「重大な話」が始まった。


父は真剣な眼差しを向け、母は期待に満ちた笑みを浮かべていた。

空気は、ケーキのホイップクリームよりも濃密だった。


「マーク……答えは、考えたか?」と父。


「えっと……どの答えのことだっけ?」

マーカスはとりあえず笑顔を浮かべた。全方位対応の防御壁。


「とぼけないで」

母が目を細めて言う。

「今日、答えるって約束したでしょう?」


父はため息をつき、まるで悪魔との契約を読み上げるかのように、指を折りながら言った。


「お前には選択肢がある。一つは、“シュヴァルツフェア魔法学院”への進学。

もう一つは、家に残ってバロンの爵位を継ぐ準備だ」


ここでマーカスの思考は完全に停止した。


> コメント(脳内):「つまり俺、貴族の息子で、進路が二択? 鍛冶屋じゃないだけマシか…」




> 作者注:「今は重要じゃない。たぶん後で重要になる。もしくは、ならない」




母がやさしく微笑んだ。


「自分が正しいと思う道を選んでね、坊や。私たちは応援するわ。どちらでもいいのよ」


マーカスは「金曜まで考えていい?」と聞きかけた。

……だが、例によってシステムが割り込んできた。


> システム:警告。学院を拒否した場合、罰が発生します。




「……は? なぜ!? これは俺の選択だろ!?」


> システム:残念ながら、あなたの使命は“破滅を回避する”ことです。

拒否した場合、死に至ります。




> コメント(心の声):「なるほどね、“自由な選択肢”。選べば生、拒めば死。完璧なRPGだよ」




父が期待に満ちた声で言った。


「で、決めたのか?」


マーカスは深呼吸した。

この不条理、この急展開、そして膝の震えを受け入れながら――答えた。


「はい、父上。シュヴァルツフェア魔法学院へ進学します」


「それが賢明な判断だわ」

母が頷き、紅茶を注ぎ足す。

「もう、候補者リストに載ってるしね」


父は笑った。


「ついこの前まで、自分の影にすら怯えていたお前が……今では我が家の誇りだ!」


> 誕生日はこうして終わった。ケーキ、祝福、そして死の警告とともに。





---


数日が過ぎた。


> システム:新機能開放。クエストが発生することがあります。

報酬:スキルまたはポイント。




「どうせ“詩的表現力”とか“誤字脱字矯正”とかじゃないよな…?」

マーカスは空を見ながらぼそり。


> スキル解放:「書かれた未来」

直近12時間の未来を読むことが可能。




「便利……かもしれん。でも、これが小説形式だったら、章の終わりに辿り着く前に殺されそうなんだが」


> システム:慣れれば問題ありません。今は訓練あるのみ。選抜試験に備えてください。





---


そして彼は訓練を始めた。

毎日走り、鍛え、「作家」のスキルを試した。

失敗もしながら、少しずつ成長していった。


パラメーターが上昇:


筋力:30


敏捷性:23


耐久力:40


体力:34


思考力:55


明瞭性:20



> コメント:「思考力が55で、明瞭性が20? つまり、賢いけど意味は分かってないってことな」




出発の3日前、マーカスはベッドに倒れ込んだ。


「無理だ。もう限界。世界を救う前に、自分の腰を救ってくれ」


> システム:次のレベルで新たなスキルが解放されます。




「はは……最初は“死”の脅し。今度は“スキル”の誘惑。完全にブラック企業のモチベーション管理じゃん」



---


そしてついに――出発の日。


両親は、まるで戦地へ送り出すように彼を見送った。


父はがっしりと握手。


「頑張れよ。落ちたら、農場行きだぞ。しかも、うちじゃない農場だ」


母は優しく抱きしめた。


「体に気をつけて。……できれば、死なないでね」


マーカスは見つめた。

ほんの数日しか共に過ごしていない、けれども、ただのNPC以上の存在になった2人を。


「俺は……落ちない。いや、トップになる」

そう言って彼は歩き出した。


――シュヴァルツフェア魔法学院へ。

本当の物語は、ここから始まる。

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