第4話-2 彼氏の事情

「……それで、山崎くんは、一体誰に手紙を書いてもらったんだ?」


 もともとあった罪悪感に加え、急に探偵モードとなり、声色を変えた私への恐れもあったのだろう。

 思った以上に、山崎は素直に答える。


「絶対、彼女には言わないでくれよ!

 実は最近新しく出来た部活の一つに『恋文代行部』と言うのが出来たので、そこにお願いしたんだよ。

 俺、正直文才もないし、字も汚いから……。でも、直接告白する勇気もないし……」


 予想以上の「釣果」に、にやけてしまいそうになる。

 だが、ここは“ハードボイルドな“探偵として、一言釘を刺しておくことにする。


「馬鹿なやつだな。

 文才も字も関係ない。大事なのは、お前と彼女の気持ちだろう?

 代行を使うことは悪いことじゃないさ。それが、お前を前進させたんだから。

 だが、俺は、そんなもの使わなくても、結果は同じだったと思うよ。

 全ての川が、母なる海に繋がっているようにな!」


 決まったッ! 自分に酔いそうになりながら、山崎の反応を見る。


「……あ、ああ。

 ちなみに、藍沢って、結構ギャップ萌え的なやつを目指しているのか?」


 しまった! 今は聞き込み優先で、私服(しかも結構フリフリしているやつ)だった。


「まあ……な。あー、いずれにせよ、きっかけは関係ないさ。彼女を大切にな!」


「……お、おう」


 いまいち締まらない感じにはなったが、私は新しい手がかりを入手することが出来たのだった。

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