告白成功寸前で神隠しにあった幼馴染が異世界から帰ってきたけど、今の俺はその妹と付き合ってるんだが、どうすればいい?
高野 ケイ
第1話 帰ってきた初恋と、隣にいる恋人
子供の頃からよく遊んでいる神社で俺は心臓をバクバクしながら、自分の想いをつげる。
それは一世一代の……少なくとも中学二年生の俺にとってはこれからの人生を左右するような大きな告白だった。
「雫……ずっと好きだった。俺とつきあってくれないか?」
目の前の少女は大きく目を見開いて……困惑の表情を浮かべる。昔は一緒に虫取りなどをしていた彼女は、長身ですらりとしたプロポーションと艶やかな黒髪が印象的な美少女に成長していた。
クールな雰囲気の中に優しさを秘めた切れ長の目、凛とした美しさ。そんな雫の前で、俺は緊張しながら言葉を注げたのだ。彼女の妹から「さっさと告白しないと他の人に取られちゃいますよ。雫姉さんはモテるんですからね」と煽られたのがきっかけだったが行動することができた。
「ねえ、神矢……本気なの? からかってないわよね。これで嘘だったら一生恨むわよ」
「俺的には恨んでくれていいから一生一緒にいたい。それくらい好きなんだよ」
彼女の困惑の表情を見て、ダメかと思った時だった。だが、俺の言葉を聞くと嬉しそうに……幸せそうに彼女が微笑んでくれたのだ。
「そう……神矢も私の事を好きだったんだ……」
「『神矢も』って……どういう……え、まじかよ」
俺は鈍感ラブコメ主人公ではない。ぼそりと言った彼女の言葉に反応すると、雫の顔が真っ赤に染まっていく。
可愛かった。これまで見た彼女の表情で一番可愛かったのだ。
「そのね……明日私の誕生日だから一緒に出掛ける約束をしていたでしょう? その時に返事するわね」
羞恥のためか彼女は目を逸らしてそんなことを言った。伊達に幼馴染をやっているわけではない。その反応で彼女の気持ちを俺も察した。
信じられないくらい嬉しかった。
「明日は遅刻しないでね、その……精一杯オシャレしてくるから楽しみにしてなさい。絶対可愛いって言わせて見せるから」
「いや、雫は初めて会った時から可愛いし、今も可愛さを更新しているぞ」
「うっさい、馬鹿!! そういう誉め言葉は明日に取っておいて。心臓が爆発したらどうするのよ!!」
そんな軽口をたたきあいながら一緒に帰る。だけど、お互いチラチラと顔を見ては逸らす。これまでも何度も一緒に帰っていたが俺たちの間の空気は変わっていて……可愛いという言葉の意味も変わっていくのを感じた。
そして、俺は明日を楽しみにしていた。目は冴えてしまい、全然寝付けなかった。遠足前のよりもはるかに楽しみしていたのだ。
「だけど、その明日は来なかった……」
彼女はこなかった。朝からずっと夜まで待っていたが、心配した母が迎えに来るまでずっと待ち合わせ場所に待っていたが彼女が姿を現すことはなかったのだ。
★★
「恋って、いったい何なんだろうな……」
俺こと如月神矢は授業中の窓から空を見上げながら、心の中で呟いた。国語の先生が恋物語を解説しているのを聞きながら思う。
三年前、中学二年生だった俺は幼馴染の雪乃雫に思いを告げた。両片想いだったのだと思う。
だけど、返事を待っている間に雫は行方不明になってしまい、目の前から消えてしまった。死ぬ気で探したが見つからなかった。人々は神隠しにあったとか、東京に家出したとかいい加減なことを言うだけ言ってやがて興味を失っていった。
食事もろくに通らず彼女が死んだならば俺も死のうと思ったくらいだ。あの日から、俺の心にはぽっかりと穴が空いたのだ。
「せめてさ、私たちだけでも雫お姉ちゃんをずっと覚えていませんか?」
そんな俺を支えてくれたのは、雫の妹・雪乃雨音だった。雨音は姉とは対照的に小柄だが、制服の上からでもわかるほど豊かな胸が特徴。ウェーブのかかったショートカットの髪が陽気に揺れ、大きな瞳とちょっと意地の悪い笑顔が可愛らしさを際立たせる美少女だった。
なぜか俺には当たりは強かったが、いたずら好きで、周囲を明るくしてくれるムードメーカーだ。寂しさを分かち合い、時には泣き、時には笑い合いながら、彼女の思い出を語り合ったものだ。
彼女がいなければ俺は今も立ち直れなかったかもしれない。そして、俺は三年の月日で雫への想いが減っていくのを感じていた。あんなにも好きだったのに……世界で一番好きだったのに……俺は今違う人間に惹かれてしまっている。
「なーにぼーっと空をみているんですか。私が何度も声をかけてるのに失礼ですよ?」
「え、なんで雨音がいるの? 今は授業中じゃ……」
肩を叩かれて慌てて振り向くと、ふくれっ面の美少女……雨音がいた。二年の俺とは違う一年生を表す制服の青いリボンが目立つ。
「寝ぼけているんですか? とっくに終わって昼休みになってますよ。今日はお弁当を一緒に食べようって約束していたじゃないですか」
「げ、まじか……」
慌てて周囲を見回すと、いつの間に授業は終わり皆、それぞれのグループで固まりお昼を食べようと移動しているのが見える。
どうやら、考え事に集中しすぎていたようだ。
「悪い悪い……ちょっと考え事をしててさ……」
「ふぅん、私との約束をわすれるくらい真剣なことなんだですね……とっても悲しいです。どう思います、皆さん?」
雨音が芝居がかったしぐさで泣くふりをすると近くにいた友人たちも悪乗りしてくる。
「嘘つけ、どうせ、昨日送った夜遅くまで『女騎士のくっころエロ漫画』でみてたんだろ?」
「おまえ、俺の性癖をばらすなよ。だけど、むっちゃよかったです!!」
「こんな薄情者よりも雪乃さん、俺と一緒にお弁当食べませんか?」
拗ねた雨音が睨むと俺の友人たちも便乗していじってくる。てか、ついでとばかりに雨音を口説くなよ……とツッコミを入れようとした時だった。
「申し訳ありませんが、私は神矢の彼女なので、他の男性とご飯は食べません!! ごめんなさい」
「おい、雨音?」
「うふふ、こうやった方がみんなも盛り上がるし、神矢もうれしいでしょう?」
イタズラっぽく笑う彼女の瞳の奥に、一瞬だけ、誰にも譲らないという強い光が宿ったのを、俺は見逃さなかった。
そう……雫の失踪から俺たちの二人の距離は縮まっていった。 そして、今では雨音と付き合っている。俺にとって、もう雨音はかけがえのない存在だ。
「はいはい、知ってましたよーー!! くっそ、うらやましいな。むっちゃ可愛い新入生が入ったって聞いたのにこいつの彼女なんだもんなぁ」
「振られるの癖になってきたぜ。もっとこっぴどく振ってください!!」
「悪いな、俺と雨音はこれから愛の巣にいくんだ。アデュー!!」
「愛の巣って屋上へ行くだけじゃないですか、もしくは可憐な私にいやらしいことを……神矢はけだものですね」
あほな友人たちに別れを告げて屋上へと向かい、お弁当を広げる。ほかにも何人かのカップルがおり、俺たちに注目する人間はいない。
「……今日も作ってきましたよ。ただ、勘違いしないでくださいね、その……あくまで練習なので……お母さんが料理くらいできないとだめっていうから仕方なく作ってるだけなので……」
「はいはい、ツンデレツンデレ。さーて、愛しの彼女のお手製弁当を頂こうかな」
照れ隠しにツンデレる雨音ににやにやしながら、お弁当箱を広げると唐揚げや卵焼きなど俺の好物ばかりが入っている。
さっそく、唐揚げを一つ頂くと肉の旨味と甘辛いタレが口の中に広がっていく。
「ど、どうでしょうか?」
「ありがとう。雨音の作るお弁当、やっぱり美味しいんだよな」
「そうでしょうそうでしょう。私に感謝して敬ってくださいね」
雨音は、頬をほんのり赤らめながら、ツンツンした口調で言う。俺はその様子を見て、思わず笑みがこぼれる。
この時間が、俺にとってはかけがえのない日常になっていた。雨音の笑顔を守りたいと、心から思う。
……だけど、心のどこかで、今も雫を探している俺がいる。あの日の告白の余韻が、心のどこかに残っている。それも無理はないだろうだって今日は……
「ねえ、神矢……今日はあの神社に行きませんか?」
「……なんでだ?」
ドキリと……胸がざわめいたのは気のせいじゃないだろう。まるで俺の心を読んだみたいに言ったからだ。
「今日はお姉ちゃんが失踪して三年目ですから……雫お姉ちゃんが帰ってくるようなきがして……」
「それはお前のはまっていた黒魔術による占いの結果かな?」
「黒魔術を占いのような迷信と一緒にしないでください。それでつきあっていただけますか?」
軽口を叩くが雨音は俺をじっとみるだけだ。彼女はあの事件がきっかけか、思春期だったからかちょっとそういうのにはまっているのである。
だが、今はそういうかんじではないな。そろそろあいつが消えてから三年がたつ。俺もこいつも前に進む必要があるのだ。
「……わかった。行こうか、神社デートってなんか神秘的でいいよな」
「……ありがとうございます」
俺の言葉に、雨音は返事をするとしばらく黙り込んで俺の手を握る。まるでつらい過去と向き合う勇気が欲しいと訴えるかのように……
放課後、神社へと二人で歩きながら、雨音は俺の手をぎゅっと握る。その手の温もりが、俺の心を安心させる。
「……神矢。授業中にお姉ちゃんのことを考えていたでしょう?」
雨音の問いかけに、俺は一瞬だけ言葉を詰まらせる。その瞳は嘘をつくことを許さない。
「ああ、だけど、今はお前と一緒にいることが、俺にとって大事なんだ」
「ふぅん……躊躇なくいいますね、このすけこましは……」
顔を赤らめた雨音は俺の手を強く握り返し、そのまま歩き続けた。
神社に着くと、三年前に雫に告白した場所だ。名物となっているご神木の前で二人は手を合わせ、心の中で雫を想う。俺は、この場所で雫に思いを伝えた日のことを思い出す。あの時の緊張と、期待と、不安……。だけど、それは過去だ。そろそろ完全に割り切って俺は雨音と過ごすのだ……
そう思っていると、突然ご神体が光り輝き、眩い光の中で長身の制服姿の少女が現れた。彼女はあたりを見回しながら信じられないとばかりに声をあげている。
「ここは……ファンタジアじゃない? まさか地球に戻ってこれたの?」
だが、驚いていたのは彼女だけでなかった。俺と雨音もだと思う。だってさ……
「え、雫……なのか?」
「お姉ちゃん……
艶やかな黒髪と、クールな雰囲気の中に優しさをたたえた切れ長の目。凛とした美しさは、三年前と変わらない。いや、三年の月日がたって成長したその姿はより美しくなった気がする。
「神矢……やっと会えた。本当に異世界から……ファンタジアから戻ってこれたのね!!」
俺の顔を見た雫は涙を浮かべながら、抱き着いてくる。柔らかい感触と甘い匂い……なによりも俺を包むぬくもりが本物だと訴えてきている。
「神矢……私もあなたの事が大好きなの」
彼女は俺の胸元で鳴きながらも三年越しの返事を伝える。
「あの日の返事をどうしてもあなたに伝えたくて、異世界を救ってやっと帰ってきたのよ」
雫の言葉に、俺は言葉を失う。その声を聞いて胸が熱くなる。嬉しい気持ちと、戸惑い、そして罪悪感が入り混じる。今まで会いたかった人、伝えたかった言葉。
それが目の前に現れたのに、俺はもう雨音と付き合っている。複雑な思いが心を覆うのだった。
★★★
君が望む永遠みたいな話をかいてみたくなってかきはじめました。三角関係ってドキドキするよね
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