第56話:鉄の国との出会い

 「ジャスティ~~~~ン♪ オールバックにしよ~~♪」

 「いやだ! めんどくせえ!」


 ブラ女との交流の後、ジャスティンはジーナにコーデさせろとせがまれていた。

 キチンと身だしなみを整えさせられたジャスティンの魔導写真。

 普段の粗野な姿から、貴公子へと変貌した姿を見たジーナとソレイユが暴走したのだ。


 「オールバックにして、モノクル付けて執事服でピシッと!」

 「ジーナ、髪を真ん中分けにして白い王子礼装もありですよ!」


 ソレイユもブラシと整髪料を持ち迫る。


 「ジャスティン君、家の国の香油はどうかな♪」

 「ジャスティン殿、男でも紅は引けますぞ♪」


 マサラは香油の瓶、チヨノスケは化粧箱を持ちジャスティンを追い詰める。

 この二人は、面白そうだからジャスティンをからかおうと悪ノリだ。


 「ふざけんな! 俺は、お前らの着せ替え人形じゃねえんだぞ?」


 ジャスティンは、風呂に入りたく無い猫のように学園中を逃げ惑う。

 だが、仲間達からは逃げられなかった。


 「女神に留守番をさせた代償を支払っていただきますよ♪」

 「僕以外の女に親しくした罪も加算で♪」

 「理不尽だろ、馬鹿野郎!」


 ジャスティンはダブルヒロインに捕らわれて、着せ替え人形の刑に処された。


 「ほう、この私をスタイリストに使おうとは我が娘ながら慧眼であるな♪」

 「ええ、父上ならジャスティンをどう着飾らせますか♪」

 「おい、国王陛下出して来るな!」

 「騎士ジャスティンよ、城への出仕ご苦労である♪」


 ジーナの父、国王が微笑む。

 ジャスティンは、王宮の衣裳部屋まで拉致され椅子に縛り付けられていた。


 「ソレイユめ、勇者パワー封印とかマジかよ!」

 「魔法も封印されてるから♪ 逃がさないよ♪」

 「逃がさぬぞ、わが娘婿よ♪」


 ジーナと国王の親子が、虎と獅子の笑みをジャスティンへと浮かべる。

 学生時代はオトメンであった国王が、宝石箱のように豪華な箱から鋏を取り出す。   


 「バーン、天国から見てるかい♪ 僕が君の息子の髪の手入れをするよ♪」


 姿見付きの鏡台の前で、国王がジャスティンの亡父の名を呼び微笑む。


 「陛下? もしかして父さんの髪も?」

 「うむ、あれもそなたのように野生の男であった」


 手際よくジャスティンの髪をオールバックに仕上げ眉毛も整える国王。


 「流石は父上、ジャスティンが輝いております♪」


 ジーナが父親の仕事ぶりに満足する。


 執事服、王子礼装、軍服、と着替えさせられ撮影されたジャスティンであった。


 「……くそ、酷い目にあったぜ!」

 「いや、君が学校の代表として出かけるのに無頓着すぎるんだよ?」

 「化粧とかはちがくないか?」

 「違わないよ、男子でもお化粧はしないとね♪」


 ジャスティンの不満を否定するジーナ。


 「いっそのこと、丸刈りにでもするか?」

 「そう言う事を言うと、僕がジャスティンの切った毛で編み物するよ♪」

 「怖い、人の髪を毛糸にするな編むな!」


 ジーナの発言に引いたジャスティンは、教室で大人しくなった。


 放課後、ジャスティンとジーナは校長室へと呼び出されていた。


 「諸君らはクラート帝国についてどの程度の知識がある?」


 マギー校長がジャスティンとジーナに問いかける。


 「鉄の国クラート、鋼鉄神アイゼンを崇拝する工業国家じゃね?」

 「そうだね、山と工業の国だよね武器とかも作ってて温泉もある♪」


 ジャスティンの答えにジーナが相槌を打つ。


 「正解ではある、我が校とも色々と縁がある国だ」


 校長がげんなりした顔でジャスティン達に手紙を見せる。


 「クラート帝国にある、士官学校に勇者学科が新設された」

 「つまり、そこが俺達の次の交流相手と」

 「またジャスティンに怪しい女が近づきますね!」

 「いや、ジーナはおかしい!」


 校長から新たな交流相手を知らされたジャスティン達。


 「あ、自分で調べておけって奴か?」

 「それもあるけど、手紙が来たと言うなら何かあるんですよね?」

 「うむ、一週間後にクラート帝国で合同演習のお誘いだ♪」


 ジャスティン達は退室し部室へと集合した。


 「アイゼン神? 知り合いと言えば知り合いですね、時計眼鏡が特徴です!」

 「うん、時間とかきっちりした固い神様なんだな」


 ソレイユとの会話から、彼女とはベクトルが違う神だとジャスティンは思った。


 時は流れ一週間後。

 山の中にある赤いレンガの壁に囲まれた、簡素な木造校舎が特徴の学校にて。


 「ようこそ、我等クラート帝国軍士官学校勇者学科へ!」


 帽子から下まで緑の制服に身を包んだ、金髪碧眼の美少年が敬礼しながら叫ぶ。

 彼が勇者学科の代表らしい、その隣に並ぶ少年少女達も敬礼をしている。

 ジャスティン達も整列し、敬礼をして返す。


 ジャスティン達の敬礼は頭の横に手を添える形式。

 クラートの勇者学科は胸前で拳を添える形式。


 「自分の名はテッケンと申します♪ 本日は宜しくお願いいたします♪」


 帝国側から敬礼を解き、笑顔で握手を求めるテッケン。


 「ジャスティンです、宜しくお願いします♪」


 ジャスティンも行儀よく笑顔で握手を交わす。


 「演習場は裏山に設営されております、体力に自信はおありでしょうか?」

 「ああ、ご心配なく♪ こちらの体力も魔力はベストだぜ♪」

 「良かった、演習では食材確保も兼ねた魔物狩りをいたしますゆ故に♪」


 テッケンに先導されて木造校舎内の教室に入り、ブリーフィングとなる。

 黒板の今回の合同演習の予定が書かれていた。


 「演習の食事はカレーですか?」


 ジーナが黒板の内容を読み尋ねる。


 「はい、王女殿下♪ 演習後の食事の魔物肉のカレーであります♪」


 黒板の前でテッケンが笑顔で答える。


 「中央大陸仕込みのカレーの腕お見せするよ!」


 マサラがカレーと聞いて闘志を燃やし立ち上がる。


 「前回の狩りは食えませんでしたが今回は行けますな♪」

 「ああ、どんな魔物だろうと食材にしてやるぜ!」


 チヨノスケとジャスティンの様子に、クラート側も感心する。

 共に戦い共に食う、同じ釜の飯を食って仲間となるべく演習が始まる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る