第50話:夏の終わり

 新たな力ジャガーフェイスを身に着けたジャスティン。

 夏休みも終盤となり、ホームタウンである西方大陸へと帰還した。


 「ふう、久しぶりに学園に戻って来たぜ」


 ジャスティンは学生寮の自室を掃除しながら呟く。

 室内はあまり汚れなどは無く。軽く掃き掃除で済んでいた。


 「私が定期的に戻って、掃除しておりましたから♪」

 「マジか、ありがとう!」

 「私、家事もできる女神ですから♪ 敬って愛でて良いんですよ♪」


 ソレイユが胸を張って笑う。


 「ありがとう、恩寵に報いるべく勇者活動がんばるぜ」


 ジャスティンは、一時作業を止める。

 ソレイユに向き合い、瞳を閉じて片膝をつき両手を組んで彼女に祈る。

 

 何だかんだでソレイユに感謝と愛情を抱いているジャスティン。

 真面目に祈りを奉げれば、自分の体から何か力が出て行く感じがした。


 「ふ、ふおおおお! 推しの! 推しの信仰心が、私の中を駆け巡る~~~!」


 ソレイユはジャスティンの信仰心を吸い込むと、幸せそうに鼻血を噴いて倒れた。


 「ちょ! お前、掃除したのに! こら、幸せそうに鼻血出して倒れるな!」


 ジャスティンは、ハンカチでソレイユの鼻血を拭き取る。

 色々台無しな残念女神だが、放置はできない。


 「ベッドで寝かせるぞ、問答無用だ!」


 ジャスティンはソレイユを担ぎ上げ、自分のベッドに寝かせる。

 その選択肢が間違いだったとは思いもよらずに。


 「お、推しにお姫様抱っこされて寝かされて! 至福っ!」


 ジャスティンのベッドに寝かされたソレイユ、今度は口から吐血する。

 彼女の口から飛び散った血でベッドだけが燃え上がり、瞬時に灰になった!


 「俺のベッドが! 嘘だろ、おい~~っ!」

 「ふっふっふ♪ 私はすでに神ですが、天に昇りそうです~♪」


 灰の上で天を指さし、吐血しながら微笑むソレイユ。

 

 「ふざけんな! 学園の備品だし、掃除し直しだろうが!」


 ジャスティンのベッドはソレイユの血により、消滅した。

 軽い掃除のはずが大掃除となり、ジャスティン達は校長に怒られた。


 説教を終えて、勇者同好会の部室に来たジャスティン達。


 「羨ましい! 僕もジャスティンのベッドで寝て見たかった!」

 「欲望を垂れ流すなよ勇者だろ!」


 王女の公務で別行動だったジーナにツッコむジャスティン。


 「まあ、ジャスティン様には我が神殿で寝泊まりすれば良いのです♪」

 「いや、燃やした犯人が言う台詞か!」


 ソレイユにも突っ込むジャスティン。


 「これは学園の敷地を分譲して貰って、僕とジャスティンの家を建てるしか?」

 「だから、勇者が風紀を乱すなっつ~の!」


 ジーナの妄言にジャスティンは呆れた。

 ジーナも彼女の父である国王もヤバい、俺が原因で国が乱れるとかアウトだ。

 

 ジャスティンは、ジーナが人道を外れぬように努める使命感が芽生えた。


 「俺の部屋は良いとして、新学期からの活動も考えて行かないとな」

 「そうだね、部員も増やしたい所だねえ」


 ジャスティンの言葉にジーナが落ち着きを取り戻す。


 「ですが、私達の活動に付いて行ける者となると狭まりますね?」


 ソレイユが球を捻る。

 些細な雑務から世界の危機まで、幅広い厄介ごとに絡む勇者同好会。

 学園のどの運動部よりもエクストリームな部活動に入部希望者はいるのか?


 「戦闘でフォローするにも、限りがあるからなあ」


 ジャスティンも悩む、五天の仲間か他の神の勇者クラスでないとデッドリーだ。


 「まあ、それも課題だね。 ジャスティンは、お墓参りはしたのかい?」

 「これから行くよ」


 ジーナが話を切り上げ、ジャスティンに墓参りについて尋ねる。


 「どなたのでしょう? 私が手に導きますよ♪」

 「ああ、俺の祖父さんの墓が学園内にあるんだよ」


 ジャスティンがソレイユに説明する。

 学園の先代校長であるジャスティンの祖父は、校内にある霊園に葬られていた。

 

 部室を出て、霊園にやって来た三人。

 空の夕日が、墓を照らす。


 「学園に骨を埋める、変わった風習ですね?」


 ソレイユが園内に点在する校長達の墓を見回して告げる。


 「魔法使いの遺骨は素材や触媒になるからね、学園ならある程度守られるし」


 ジーナが遠い目をする。


 「家の祖父さんは、愛校心の方が強かったかな? 学園に献体してたし」


 ジャスティンが祖父に引き取られて住んでた家は、今は学園の博物館だ。


 「学校好き過ぎですね!」


 ソレイユが驚く。


 「まあ、愛校心は爆発だって墓碑に刻んでるし」


 ジャスティンが額を抑えつつ、簡素な板状の墓碑を指さす。


 「うん、ジャスティンの血筋だって感じる」


 ジーナも苦笑い。


 「人の子の凄さを感じました」


 ソレイユが無言で感心する。


 墓に花を供えて、祈りを奉げる三人。


 「しかし、それほど個性的な人物なら神となっていてもおかしくないですね?」


 死者が神となって新たな生を送る。

 そんな話をソレイユが帰りにジャスティン達に話す。


 「それはないかな、祖父さんの葬式で転生魔法かけられたのを見たし」

 「本当に、ジャスティン様みたいに勢いで突っ走る人ですね!」


 ジャスティンから出た言葉に唖然とするソレイユ。

 彼女の常識では人は死後、神の元で生きるか新たな神になるかであった。


 「うん、遺言がさっさと転生して次の人生を楽しみたいだったからな」

 「ニトロ前校長って、そんな人だったんだ」

 「ファンキーすぎますね」

 「孫の俺から見ても、とんでもな人だったよ」


 ジーナやソレイユの言葉に、ジャスティンは自分を棚上げして告げる。

 祖父も破天荒であったが、ジャスティン自身も女神の勇者と混沌とした人生だ。


 「まあ、先祖と競わなくても良いと思いますよ?」

 「そうそう、ジャスティンはジャスティンなんだから♪」

 「いや、祖父さんと人生を競ってねえって!」


 ジャスティン自身、破天荒な祖父を見たから固めな人生を目指していたのだ。

 まさか、自分も破天荒な人生を歩まされるとは思いもしていなかった。


 「そう言う事にしておきましょう、そろそろ学生食堂の夕食時間です」


 ソレイユが夕飯時だと告げる。


 「よし、久しぶりの学園の飯だ! 食いに行くぜ!」


 夕食と聞いてジャスティンは駆け出す。

 色々食ったが、ジャスティンにとって馴染みの味は学園の食事であった。


 「ああもう! 食堂は逃げないよ、ジャスティン!」


 ジーナもジャスティンを追いかけて走る。


 「私もいますよ~♪」


 ソレイユも学食へと向かい走り出す。


 墓参りで夏休みの最後の行事をしめくくり、迫る新学期へと臨む三人であった。

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