第9話 空き家とUFOと村の統計 =千葉県=
千葉県・房総半島のとある限界集落。人口87人、平均年齢72歳、野良猫14匹、そしてUFO目撃件数、年間64件。
町役場の若手職員・佐藤は、AI観光戦略システム「ミライナビ」と共に村おこしの新プロジェクトを立ち上げた。「UFO村」として売り出し、観光資源にしましょう!
そして「UFO出現率99%」「宇宙人が住みつく古民家民宿」と謳い、廃校を改装した**“宇宙人歓迎センター”**も完成した。
***
3か月後。村には外国人観光客が押し寄せ、空き家の民泊化が急速に進んだ。だが、妙なことが起き始めた。民宿の天井裏から**“銀色の何か”**が出てくる。英語の通じない外国人観光客同士が意思疎通している。猫が全員、夜に集まって空を見ている。
佐藤はふと気づいた。
「観光誘致で呼んだ“UFOファン”たちの中に、本物が混ざっているのでは……」
***
村の“地図AI”が次第に変調をきたす。
「この座標に存在しない建物が確認されました」
「観測不能なエネルギーが地下で増加中です」
「村の人口:87人 → 現在:162人」 ←なぜ?
誰が増えたのか、役場の誰も答えられなかった。
***
1年後、村は完全な観光モデル地域となり、「日本で最も宇宙に近い村」と呼ばれるようになる。だが村の古老・森川はぽつりと語った。
「……昔から、あの山の向こうには、帰ってこない子がいたもんだ」
***
政府は村に高精度監視衛星を投入し、特殊省庁「U-Tourism省」を設立。観光と宇宙の境界は、いよいよあいまいになっていく。AIミライナビの最終報告は、こうだった。
「目撃数は予定通り増加。観光収益も良好。……ただし、住民の半数が人間でない疑いが濃厚です」
(了)
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