第20話「森の終結」
「やったみたいです」
マホさんの攻撃が止んで(気が済んで)から、ギガントトロールの様子を見に行き、とどめを刺したことを確認した。
「ふー、なんとかなったか。さすが魔法ちゃんだな」
「ふふん」
マホさんが両手でピースしている。
素直に賞賛を受け取っているようだ。
「他のトロールは来てない?」
「逃げたみたいだね」
森や荒野のトロールは、ギガントトロールがやられると、どこかに散ってしまった。
その証拠に、荒野に入っても、トロールが来ることはなかった。
この奇妙な森は、トロールによって動かされていた。
森で迷っていたのは、知らないうちにトロールに行く手を阻まれていたかららしい。
荒野に身を隠し、入り込んだあとで出口を塞ぐように襲いかかる。それが出られない迷いの森の正体だった。
何とも狡猾な奴らだが、そんなモンスターに三年も閉じ込められていたこの里も、ようやく解放されるだろう。
……にしてもなぜ、わざわざ一度中に入れる必要があるのか。
荒野に入った時点で襲えばいいのに……目撃者を作らないようにわざと幽閉させたのか? あえて外への道を作っていた理由もよくわからないし……。
……まあ、不思議なモンスターということにしておこう。
その日はみな戦闘で消耗していたこともあり、森の外れで一晩を過ごすことにした。
そして次の日。
「見てみんな! 昨日の戦闘の痕跡が、まだこんなにはっきり残ってるよ!」
地面が大きくえぐれ、森の木々が深く被害を受けていた。
戦闘の激しさを物語るものであったが、一つ気になることも。
「……全然、草木が成長してないね?」
まるで魔法が解けたように、すぐには草木が出ていなかった。
「
唐突にマホさんが火炎弾を放つ。
すこしの威力だったが、木に火が着いた。
「耐熱魔法もないね」
「ちょ、なにしてるのマホさん!!」
「しょ、消火消火!?」
急いでアイラと火を消す。
どうやら森の木々にあった魔法も解かれたようだ。
ギガントトロールによって魔法がかけられたのだろうか?
どうやったか気になるが、この森で迷うことはないだろう。
そして、里に戻り、状況を報告した。
里の住民からはおおいに祝われ、祭りが行われた。
「あんたらS級を討ち取ったんだって? すげぇじゃねぇか!!」
「どんな奴だった? 教えてくれよキタンの兄貴!!」
特に、里に長く滞在していたキタンは、まるで英雄のように持ち上げられていた。
そんなことが一晩続いた。
一晩祝い合うと案外落ち着くもんで、各冒険者は森を出る準備が始まった。
中には意外と里の居心地が良かったのか、出ていかずに残った冒険者もいたらしい。
「そんじゃあお前ら、いくぞ!!」
「おお!」
里の冒険者と一緒に森の脱出を始めた。
トロールさえいなければ、森の外に出るのは案外簡単なことで、半日もかからなかった。
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