第7話「初戦闘」


 しばらくマッピングをしながら、迷宮内を進んでいた。

 まだ浅い階層を探索しているだけだが、罠はあれ以降見当たらない。

 特別に迷いやすい作りでもなく、マッピングは順調だ。


 そんな時——ふと、木製の扉が目に入った。

 開けてみる。


「わお、キレイな部屋だね」


 そこは驚くほど整えられた部屋だった。

 とても迷宮の一室とは思えない。


「……いや、キレイ過ぎませんか?」


 カーペット、机、暖炉——

 一般的な家庭にありそうな家具が、どれも非常に良い状態で揃っている。


「このティーカップ、紅茶が入っていますよ。……しかもまだ温かい 」

「うん、変だね。暖炉の火が点いてる。まるで人が住んでるみたい」

「……でも罠ではなさそうだね。ただのキレイな部屋だ」

「一応、マップに印をおきますね。あまりにも変な部屋だし」


 一通り、部屋を見終わり、外に出た。


「……ソウヤくん」

「はい、いますね」


 警戒していたからか、すぐに5、6体のモンスターの気配を感じた。

 この部屋に入ったから……ではないよな?


 すぐに荷物を置き、剣を構える。

 前方から一体の骸兵スケルトンが駆け込んできた。

 骸兵スケルトンが剣の間合いに入った瞬間、剣を振り落とした。


 一撃で真っ二つに断ち切る。


 骸兵スケルトン

 その推奨等級はD級。

 一体一体の戦闘力は低いが、武器の有無でその強さが変動する。

 丸腰なら、打撃でも倒せるほど貧弱な相手だ。


「頑張れ~ソウヤくん!」


 アイラは微笑ましそうに応援しているが、手は出してこない。

 『私が手伝ってしまっては、いつまで経っても一人前になれない』

 そう言って、僕が本当に危険にならない限りは基本的に傍観する主義だ。


 前方に残り5体。

 うち2体が剣を装備している。


 今度は、5体全員でやってきた。

 身を乗り出して袈裟切りを放つ。

 切り上げに転じて、素手の2体を瞬時に屠った。


 残り3体。

 囲まれて、長物持ちが仕掛けてくるのが横目で確認できた。

 柄で瞬時に打撃を加え、横薙ぎで両断する。

 残る敵とは距離を保ちながら、確実に仕留めた。


「ふう……」


 無事勝利。

 ほっと呼吸を整える。


「おーお疲れさま」


 後ろから、アイラさんが賞賛の声をかける。


「余裕ができたら、技を放てるとなお良しだね」

「咄嗟に打てないんだよね……善処します」


 闘力を理解してないのもあるのか、技を打てていなかった。

 せっかく使えるんだから、次は意識しよう。

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