雲八戦記 ~その転生者、戦国の世で最強の弓大将になる男~(仮)

生虎

第1話

美濃国関大島(岐阜県大垣市)の地に元気な男の子が誕生した。


「ほう!実に太々しい顔をした赤子じゃな!!」

「わははははは~この面構えじゃ、儂に似て剛毅な子に育つじゃろうの~」

「何をぬかす!お主に似ず母に似たからこそこの面構つらがまえなのじゃろうて」


そんな事をこの赤ん坊の父とその縁者の男が話ながら、赤ん坊を肴に祝い酒を煽る。

戦国の世では束の間の平和であった。

時はまさに戦国時代、各地のつわものたちは己が領地を守らんが為に相争った。

美濃国も例外ではなく、戦が起こっては荒れ、荒れ地を耕して実りあればそれを奪わんとする者と守ろうとする者でまた争うといった堂々巡りが続く中、永正えいしょう十二年(1512年)に美濃国で起こった戦にて大島光宗みつむねという武士が家臣と共に討死した。

討死した大島光宗みつむねこそ赤ん坊の父であった。

親父を失った子は幼くして孤児となる。

かつてその光宗と我が子を肴に祝い酒を煽った縁者である男、大杉弾正だんじょうはその子を引き取り育てた。

年を重ねその子も十三歳となって初陣を飾る。


「ビンゴ!!」

備後びんご?備後国が何じゃ?ここは美濃国じゃぞ?」

「びんご違いじゃ。え~っと・・・おお!外つ国で大当たりの意じゃそうじゃ・・・何処かの誰かがそう言うちょった」

「ほう!左様か、馬鹿の癖に意外と物知りじゃな~」

義父おやじ殿・・・馬鹿とは何じゃ馬鹿とは!」

「馬鹿に馬鹿と言って何がおかしい?馬鹿息子よ」

「馬鹿馬鹿言う奴が馬鹿なんじゃ!!馬鹿親父!!」

「何を!!・・・まぁええか・・・儂も馬鹿じゃしな。じゃがな~お前よりましじゃぞ」

「な!」

「悔しかったら孫子位諳んじてみせよ」

「・・・まぁ何じゃ、何とか儂も今回の戦で手柄を得たぞ」

「おお!そうじゃ!そうじゃ!勘八かんはちでかした!!」


弾正は我が事の様に喜び、義理の息子を褒め讃えた。

義理の息子は義父の喜びを理解し馬鹿と言われたことは忘れぬが、己も喜び義父に笑顔を向ける。

さて、ここまで話してお解りかと思うが、これは初陣にて弓矢により手柄を得た今は十三歳の若武者の物語である。


~~~~~~


那須与一なすのよいちの様じゃったぞ!」

「え?茄子なす夜市よいち?茄子は好きじゃが、夜市なぞあるのか?行ったことないぞ」

「何を言っておるんじゃ?阿呆め!まぁ良い、兎にも角にも初陣で手柄を挙げるとは見事じゃ!でかした!」


戦が終わり義父は大喜びで、儂の為に酒宴を設けてくれた。

今世では初めて飲む酒じゃが、うん・・・今一じゃな・・・ビールが懐かしい。

儂は前世ろくでもない人間じゃった。

不良と呼ばれる類の人種で、手の付けられない暴れん坊であった。

行き当たりばったりに喧嘩を売り買いしていたので、恨みを買う事も多く、恨んでいたであろう誰かによって襲われのであろう、それが元で死んだのようじゃ。

道端で背後からバットか何か鈍器で殴られて倒れ伏した後の記憶が全くない。

殴られた事が原因か、倒れた際の打ち所が悪かったのかは解らぬが、それが原因で死んだようじゃ。

そして次に気が付いたら赤ん坊でじゃった。

これが噂に聞く異世界転生かと少しだけ興奮したのを今でも覚えている。

上手く話せる様になって直ぐにこっそりと『ステイタスオープン!!』と右腕を高く掲げて叫んだのを覚えている。

勿論の事、何も表示されなかったのは今思えば黒歴史じゃ。

誰にも見られていなかったのがせめてもの救いか?

さて、ステイタスの表示は無い世界なのはその出来事で理解した。

次に確認するのがこの世界に魔法があるかどうかだが、直ぐに無い事を理解した。

どうせ異世界転生するなら剣と魔法の世界が良かったが、儂が転生した世界は魔法なぞは無く、どうやら剣だけはある殺伐とした世界に転生したようじゃ。

そうこうしていると、不幸なことに、幼くして実の親父が戦死したので右も左も解らぬ内に孤児となったが、運よく親戚であった大杉弾正だんじょうという人物が拾ってくれてそれなりに育ててくれた。

それが今目の前で美味しそうに酒を煽るむさ苦しい中年男である。

今の儂の義父ちちじゃ。

何はともあれ武士の息子だから戦に出るのも仕事の内だと言われ、幼少からその義父に武芸を仕込まれた。

前世ではステゴロの喧嘩では地域でもそれなりに有名であったが、所詮は不良の中での出来事で、実際に武芸を学んでみると喧嘩とは大違いであることを知った。

池に住むかわずは海を知らないとか何とかと言うことわざをふと思い出したが、まさに儂の事を現したものとは知らなんだ。

最初に剣術、次に槍術を習ったが才能的には今一の様で、義父に「まぁ追々頑張れ」と何とも言えない顔で言われたのは懐かしい思い出じゃ。

しかし、人間一つ位は得意な物があると言うが、儂にもその一つがあった様じゃ。

それが弓じゃった。


「剣術、槍術等は神仏から見放されたと思うたが、神仏も流石に気の毒に思われてお前に弓の才を与えなさったのじゃろうの~」

「酷い事を言うの・・・」

「わははははは~弓の才があるだけ喜べ!!」


義父はそう言ってガシガシと頭をこねくり回して来たのも今はいい思い出じゃ。

そう、儂には弓の才があった様でメキメキと腕前を上げた。

考えてみれば斬り合いなどすれば怪我するリスクが非常に高いのだから遠方から攻撃できる弓が得意なのは良い事じゃ。

儂がこんな事を言えば、『元不良が何言ってんだ?』と思う奴も居るかもしれないな。

そう思った奴、冷静に考えてみろよ?

殴り合いの喧嘩とガチの殺し合いである戦を同レベルで扱うな!

マジで戦ヤバい!!

殺し合いだから相手も死に物狂いじゃ。

そんなん喧嘩が得意な不良レベルの前世持ちなぞ・・・

考えただけで馬鹿でも詰んでる事を理解するぞ。

やれると思う奴はそいつ自身転生でも何でもしてやってみろよ!!

まぁそう言う訳で、近接戦闘とか怖いから遠距離攻撃得意なのは正直有難い限りじゃ。

馬鹿は馬鹿なりに色々考えないと死は身近にある事を実感するぞ。

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