インタビュー:Kマンションの近隣住民Tの聞き込みと、マンションの住人Sの話

――TさんはKマンションの近くに住んでいるんですよね。

T:身バレするから、あんまり詳しく書かないでね。


――もちろんです。まず、あのマンションでなにか異変はありましたか。

T:毎日のように人が飛び降りてるのはどう考えても異常でしょうね。そんなことがあっても次々入居してくるし、あそこに残る人間も神経が図太いなって思うけど。最初のころは、救急車の音聞くだけで心臓がバクバクしてたけど……最近は「ああ、またか」って。慣れてる自分が一番怖いかもね。


――他に妙な噂などありませんでしか?

T:そうねえ……ときどき叫び声が聞こえてくる。


――叫び声?

T:多分男のものだと思う。声が低かったから。まあ、あんなマンションに居続けたら気も狂うでしょうね。


――他には何かありますか?

T:私より、今そこに暮らしてる人間に聞いてみたら? 私は絶対に近寄りたくないけどね。子どもにも「絶対にあのマンションの近くは通るな」って教えてるのよ。飛び降りの巻き添えになったら可哀想でしょ?


――たしかに仰るとおりですね。お話聞かせていただき、ありがとうございました。



「私」は記者のA。カメラマンのBとKマンションに足を運んだ――。

 陰気臭い雰囲気を放っているように見えるのは、我々の先入観によるものだろうか。

 玄関先に綺麗に切り揃えられている植え込みすらも、人の血を吸っているのでは、とスタッフ一同、緊張感が漂う。

 ひとまず、一階のエレベーターから九階のインタビュー相手に会いに行こうと乗り込んだ。

 ――が、扉の閉ボタンを押して扉が閉まった瞬間、また扉が開いてビクッと身体を震わせる我々。


「なんか変なボタン押したか?」


「あ、行き先ボタン、上と下間違えたのかも」


 驚かすなよ……と胸を撫で下ろし、今度こそ九階へ。

 我々はKマンションの九階に住む、Sさんに話を伺った。



――本日はインタビューへのご協力、誠にありがとうございます。よろしくお願いいたします。

S:はい……。


――大丈夫ですか? 顔色が悪いようですが。

S:だい……大丈夫です。


――それでは、お話をお伺いしますね。Sさんはこのマンションで不思議な体験をしたと伺ったのですが。

S:どれ……のことですか?


――あ、すみません。エレベーターの件です。

S:ああ……ゴミ出しに行ったときのことですかね。エレベーターに乗って一階に行こうとしたら、ドアが閉まった瞬間、また開いたんです。アレはびっくりしました。


――え、Sさんも……? 我々も先ほど……。

S:ああ、でも、多分上と下に行くボタン、間違えたんじゃないかな。そのときのこと、よく覚えてないけど。


――そうですか。では、不思議な体験はそれだけじゃない?

S:はい。一階のゴミ捨て場に行くまでに、何度もドアが開いたんです。八階から、二階まで、全部。


――エレベーター内部のボタンは?

S:私が押した一階だけが点灯してて……だから、誰かが外部から一階ずつ押したとしか思えないんです。でも、ドアが開いても全部の階に誰もいなくて、すごく不気味でした。


――イタズラの可能性は?

S:そりゃあるかもしれませんけど、階段で降りながら一階ずつボタンを押していくって無理があるし、そもそも何のために? って思ったら、すごく気持ち悪くなって……そろそろこのマンションから引っ越そうと思っています。


――ありがとうございました。



 その後、我々が管理人に依頼して当時のエレベーターの防犯カメラを確認したところ、Sさんの乗っていたエレベーターは確かに一階ずつ止まっていた。モノクロの画面に、ひとつずつ開くドア。そして、各階ごとに、肩幅ほどの影がエレベーターに足を踏み入れる。

輪郭は曖昧で、全身が灰色――まるで、子供のようだった。

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