空白の狩猟団:黒き神
些阨社
空白を狩る者達
第1話 幸運の名の下に
「ネイジー! 人が倒れてるー! 素っ裸だ!」
鬱蒼とした山の中、日も落ちかけた時分に行き倒れを見つけた少女の声。
「なんでこんな所に人が居るんだよ。しかも手も足も全部残ってるって……」
男は空と辺りを見渡す。
「……今日はここらで野営だな。あー、あー、ネイジだ。狼煙を上げる。皆集まれ」
次いで行き倒れの男を見やる。
「運が良いのか悪いのか……」
日が落ち暗い山に一つの明かりと人の影。焚き火を囲む男と少女、それとその他大勢。干し肉をしゃぶる者、得物の手入れをする者、外敵避けの魔法具に集中する者、などなど。
「魔獣、見失ったね」
少女が言う。
「横穴でもあるのかもな。空から見てた箒隊も見失ったんだから」
「狩りはしたけど、獣と小型の魔獣じゃあね。稼ぎが淋しいんじゃない?」
「子供がんな事気にすんじゃねーの。この前の稼ぎがあるから大丈夫だよ」
「強欲のネイジが良く言うよね」
「それさ、誰だよ言ったやつ。勝手に渾名されてこっちゃ迷惑だよ」
「ん、んん……」
行き倒れの男が目を覚ます。
「ん、何処だここ……」
辺りを見渡せば此方を見つめる多数の眼。
「うあっ!」
男は布を掛けられ全裸では無くなっていた。
「目え覚めたかい? ラッキーボーイ」
「ラッキーボーイ……?」
「そうだよ。危険過ぎてどの国も治められないこの
とネイジの代わりに少女が言う。
「ブラ、ンク……」
「この奥に霊穴があるんだ。強力な魔獣がうじゃうじゃ居るし、エーテルが濃い場所もそこかしこにある。何の装備も無しに昼寝出来るほど穏やかじゃねーんだな。ほれ、食いな。」
ネイジは干し肉を齧りながらラッキーボーイに同じ干し肉を差し出す。
「はぁ……。で、皆さんはどうしてそんな危険な場所に?」
「そりゃ魔獣狩りさ」
少女が言う。
「その質問を聞くにラッキーボーイは狩猟団稼業をよく知らない都会育ちと見た。私達狩猟団は魔獣や獣をかることが生業なのさ。魔獣の持つ生アクリスは結構良い稼ぎになるし。でもまあ育ちの良い坊っちゃんは知らなくても仕方ないか」
「サリクトの言う通り、魔獣は金になる。まぁ、魔獣が人里に降りて悪さするのを防ぐ目的もあるし、駆除したら報酬も貰える。俺等みたいな筋肉馬鹿にはうってつけの稼ぎ場なのさ」
「金、ですか」
「で、アンタは何してたの?つか名前は?」
とサリクト。
「私? 私は……」
「私は……?」
鸚鵡返しの後に固唾を飲んで見守る一同。
「私は……、誰だ……?」
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