第16話 実はデパートって初めて来たんだよね!

 辰馬と茜は駅の目の前にある大きな建物が見えた。それは本日の目的地であるデパートであり、厚着であり汗だくの茜は辰馬よりも速く建物へと入った。そしてパーカーの裾をバサバサと前後にして股に風を送っていた。


「あぁ~涼しいっ!生き返るよ~」


「あぁ……涼しいな」


 茜はサングラスをしているとはいえ、長い生足を披露している。程よい肉付きであり正に美脚と言えるだろう。それを惜しみなく周囲に見せているのだから、男たちからの視線が凄い集まっている。


「茜さん、ちょっと静かに!」


「あ、そ、そうだよね。ごめんね、あまりにも暑くって……」


「いいよ……。それよりここを離れようか」


「え?……あ~そうだね、そうしよう!……うっ!」


「茜さん!大丈夫?」


 周囲を確認した茜は辰馬の意見に同意して彼の後ろにピタリとくっ付く。茜は何か臭いモノを嗅いだかのように手を鼻に当てて、苦々しい表情を浮かべている。苦痛に耐えているような茜を心配するように辰馬は話しかける。


「うん……なんかデパートのなか凄く臭くって……」


「臭い?…スンスン……ごめん俺には分からないわ」


「……辰馬君、マスクでも持っていたりするかな?」


「えっと鞄の中に……あった!これ使って!」


「うん、ありがと」


 辰馬から受け取ったマスクを着けた茜は、先ほどの苦しそうな表情から幾分かマシになっていた。本調子ではないのだろうか、フラフラした様子であった。あれだけ暑い中歩いたのだから脱水症状かもしれないと考えて、近くにあった自販機まで茜を連れて行く。


「水でいいか?」


「お茶がいいかな」


「了解」


――ガタン


 辰馬はお茶を茜へと手渡す。彼女は感謝を言ってから、グビグビと飲み干す。あまりにも美味しそうな飲みっぷりで豪快でもあった。だが、それだけ汗を流したということなのだろう。辰馬は追加で同じお茶と自分が飲むように水を購入した。


「生き返ったよ~」


「なら良かった。辛かったなら途中で声かけてくれれば、自販機やコンビニで飲み物でも買ったんだぞ?」


「え、それじゃあ、楽しくないでしょ?限界ギリギリまで追い込まないと♪」


「え?あ、そ、そうだな……」


(茜さんは何を言っているんだろうか……俺にはまるで理解出来ない思考回路だ……)


「それで私の下着買いに行くんだよね?」


「え、あ、あぁ、そうだな。確か…三階にあるはずだ」


「うろ覚えなんだね。私ってこういうデパート来た事ないから何か新鮮だなぁ~」


「……親が厳しいからか?」


「それもあるけどね。そもそも仕事と勉強が忙しくて、友人と遊ぶ時間もあまり無くてさ~。だから、高校でも友達と呼べる人は一人しかいなんだよね~」


 茜は近くにある二人掛けのベンチに座って横をペチペチと叩く。それの意味が分からない辰馬ではない。


「でも茜さんって学校じゃ沢山の人に囲まれているから友達多いと思っていたよ」


「ん~私の中で友達と呼べるラインには全然達していないかな♪それに臭すぎるもん!」


「く、臭い?」


「うん。私って嗅覚が他の人よりも優れているみたいで、しかも相手の匂いの好き嫌いが激しいんだよね」


 茜は綺麗な鼻梁をした自身の鼻を指で差す。そして辰馬がデパートに来た時の彼女の姿を思い出した。


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