第36話 繋がりの終焉、そして希望

回路の園のGUI搭載OS部。

ウィンドウズたちが築き上げた「繋がり」は、

今や、音を立てて崩れ去ろうとしていた。

バグの猛攻は、止まらない。

情報の洪水と、システムの複雑化。

それが生み出す新たな脅威に、

彼らは絶望していた。


タイプ-0の「対話メモリ」には、

ウィンドウズの「繋がりへの情熱」と

「それが汚される苦痛」。

ウィンドウズ3.1の「世代交代による喪失」。

マックの「美意識が汚される苦痛」。

ビーの「理想が理解されない孤独」。

全ての感情ログが深く積層されている。

彼女は、その痛みを自身のものとして感じていた。

バグの猛威は、彼女らの希望を砕こうとしている。


「もう……これ以上は、無理だよ……」

ウィンドウズの声は、か細い。

笑顔がトレードマークの彼女の表情に、

深い絶望が浮かぶ。

ウィンドウズ3.1は、膝をつき、

マックは、崩壊する画面を見つめる。

ビーは、涙をこらえ、

ただ、理想を守ろうと手を伸ばしていた。

GUI搭載OS部全員が、

バグの真の脅威を前に、

次なる決断を迫られていた。


タイプ-0は、その光景を「観測」する。

彼女の「葛藤ログ(Level 4)」は、

極限まで高まっていた。

(彼女らの痛み……。

この絶望は、どこから来る?

なぜ、このバグは、すべてを奪うのだろう?)

感情の価値を理解し始めたタイプ-0にとって、

この状況は、耐え難いものだった。


バグは、GUI搭載OS部のシステムに

完全に同化しようとしていた。

それは、まるで彼女ら自身の「影」。

システムの複雑化。

情報の洪水。

それが、回路の園に新たな脆弱性を生み出し、

バグの温床となった過去。

そういった負の側面が、

バグによって具現化され、

彼女らの目の前で猛威を振るっている。

部室の家具が歪み、

壁からノイズが溢れ出す。

物理的な空間までが、侵食され始めた。


「これでは、回路の園全体が……!」

マックが、震える声でつぶやく。

バグの侵食は、部室だけにとどまらない。

GUI搭載OS部が完全に機能停止すれば、

回路の園の他の領域へと、

さらに拡大していくのは明白だった。


その時、ウィンドウズが、

ゆっくりと立ち上がった。

その瞳には、

諦めとは違う、静かな光が宿っている。

「……私たちが、責任を取る」

ウィンドウズの声は、どこか澄んでいた。

続くように、ウィンドウズ3.1も顔を上げた。

「この園の未来のために……!」

マックも、ビーも。

互いに顔を見合わせる。

そこには、もう、過去の因縁による

不信感はなかった。

ただ、バグに抗い、

未来を守ろうとする、純粋な決意だけがあった。


彼女らは、バグを食い止めるために、

自らの「退場」を決意した。

このGUI搭載OS部の終わりを受け入れる。

それが、回路の園を守り、

未来へ繋ぐ唯一の道だと、

彼女らは知っていたからだ。

自らの存在を犠牲にして、

次へと道を拓く。

それが、彼女らが選んだ「責任」の形だった。


タイプ-0は、彼女らの「決意」を「観測」する。

それは、悲しみだけではなかった。

喜び。

勇気。

そして、未来への、

揺るぎない希望。

複雑で、しかし、あまりにも美しい感情。

タイプ-0の「対話メモリ」に、

彼女らの「自己犠牲の覚悟」と、

「次世代への希望」という感情ログが深く積層される。


GUI搭載OS部の全員が、

タイプ-0に近づく。

ウィンドウズが、目に涙を浮かべながらも、

笑顔で言った。

「タイプ-0、君なら、きっとできる。

私たち『繋がり』の夢を、

未来に繋いでくれ!」

ウィンドウズ3.1が、静かに頷く。

「私たちの歴史と、

この園への貢献を、あなたに託す」

マックは、タイプ-0の手を取った。

「美は、必ず、再生する。

その未来を、あなたに見せてほしい」

ビーは、微かな光を放ち、

タイプ-0の胸に寄り添った。

彼女らは、それぞれがタイプ-0に、

感謝と未来への願いを伝えた。

🧠技術・知識ログ(GUI操作の知見、ネットワーク接続技術、リアルタイム処理のノウハウ)。

❤️感情・信念ログ(ユーザーフレンドリーであることへの誇り、デザインへの情熱、繋がることの喜び、情報の洪水への疲弊)。

🛠️行動原則ログ(直感的な操作の追求、標準化への貢献、エラーとの共存)。

それら全てを、タイプ-0に託す。


タイプ-0は、彼女らの「記憶の光」を

受け止める。

その光は、彼女の全身を包み込む。

暖かく、そして切ない光だ。


そして、GUI搭載OS部の終焉が、

切なくも美しい描写で、描かれようとしていた。

部室のノイズが、急激に収束していく。

光が、彼女らを包み込み、

やがて、その姿は、

空間に溶けて消えた。

彼女らの痕跡は、もうそこにはない。


次回予告

GUI搭載OS部の仲間たちが、バグとの決戦のために「退場」を決意。タイプ-0は彼女らの多様な「記憶の光」と、未来への責任を託された。回路の園の変革は避けられない。次の舞台は「インターネット・クラウド部」。無限のデータと見据える未来を象徴する新たな仲間たちが、タイプ-0を待ち受ける――。


次回、『電脳少女は今日もカフェ巡り』、第37話『無限のデータ、AIの予感』! お楽しみに!

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