私が考えた最強のスキル~私の配信にはツッコミが多め~
和ふー
プロローグ
『
これは魔法紙に術式を書き込む事で、誰でも簡単にスキルを得られるアイテム『スキル書』を作成出来るという夢のようなジョブである。
このジョブが発見された際は皆がこのジョブに注目した。
しかし『
そもそも術式を書き込むという作業が難しい。少しミスするだけで『スキル書』に刻まれるスキルの質は大幅に低下する上、スキルのレベルが上がれば上がるほど『スキル書』に書き込む術式の難しさも跳ね上がる。
加えて、一般的なスキルと異なり、『スキル書』で習得したスキルは、一定時間が経過すると消えてしまうという致命的な欠点もあった。
勿論、一時的とはいえスキルが生えるのは強いし、難敵を相手にする場合手札はどれだけあっても多すぎる事は無い。
とはいえ、『
しかし1人の少女が現れた事で風向きは変わることとなる。良くも悪くも。
◆◆◆
高校の制服を着た少女が、ダンジョン内を颯爽と歩いている。
その様子は彼女の上を浮遊するビデオカメラで撮影され、そのまま配信サイトにて生配信されていた。
【ナギさん、何で制服なの?】
【今日の配信はどんなスキル?】
「こんにちは…や、もうこんばんはの方が適してる? まあいいや。今日は音楽の時間に思い付いたスキルを紹介するつもり。制服なのは思い付いて昼休みに『スキル書』を造ってそのままダンジョンに来たから」
【なるほどー】
【流石、仕事が早い!】
彼女、
凪咲は視聴者たちのコメントに答えつつ、目的地に到着する。
そこは、様々なモンスターが闊歩するダンジョン内では珍しく、殆んどモンスターが発生しないとされる
【あ、今日は非戦闘系スキルか】
【いや、分からんぞ。前に安全地帯でモンスター大量発生させた】
「だーかーら、あれは、安全地帯にモンスターが大量発生したんじゃ無くて、スキル『四面楚歌』の影響で安全地帯の回りに…」
【そんなスキルを使う、というか造るのがおかしい】
【反省しろ】
「…はい! じゃあ今日紹介するスキルを発表します!」
過去、知り合いの探索者たちからも怒られた失態を掘り返され、反論しようと試みるも旗色が悪そうなため、話を切り替える。
「今回、紹介するのは『ポケット』です」
【ポケット?】
【普通なら収納系のスキルか?】
【ナギに限って普通すぎるな】
「と、収納系。中々良い着眼点。だけど残念ながらちょっと違う。このスキルは…」
そう言いながら凪咲はポケットを叩くような動作を見せる。
【ポケットを叩いた?】
【……え、音楽の時間、ポケットを叩くってまさか】
「このようにポケットを叩くとビスケットを召喚できるスキル『ポケット』です。これがあれば、ダンジョン内でビスケットが食べたくなってももう安心!」
【舐めんな!】
【ダンジョン探索でビスケットが食べたくなる状況なんて無いわ!】
「ま、まあスキルの仕様上、ポケットが無い装備だと発動できないって欠点はありますが…」
【そうじゃない!】
【欠点以前に長所がないんよ!】
説明通り、それ以上でもそれ以下でも無いスキル効果にツッコミが止まらないコメ欄。
しかし凪咲も配信歴はそこそこ長い。とっておきのセールスポイントは最後にというのは心得ている。
「ふふふ、皆さん。ご安心しろ。このスキルは普通のスキルと違って自分の魔力ではなく、ダンジョンの魔力を消費するため無尽蔵に、それに魔力由来で従魔に食べさせても安心!」
【相変わらず使われている術式はヤバい】
【高度な術式から出力されるゴミスキル】
「まったく。このビスケットの価値を理解できないなんて。後で食べたいって頭を下げても…あ」
いつも通りのコメ欄に辟易しつつ、生成したビスケットを安全地帯の外側にいるモンスターに食べさせてみる。
すると、そのモンスターはビスケットを一口食べた瞬間、泡を吹いて倒れてしまった。
【倒れた!】
【毒入りかよ!】
「違う。毒じゃ…あぁ、なるほど。ダンジョンにある莫大な魔力をビスケットサイズに圧縮して…魔力酔いか。まあそれなら人体に危険は無いか」
【あるわ!】
【てか、モンスターすら卒倒する魔力の塊やんて、俺らが食えるか】
莫大な魔力を一口大のビスケットに圧縮した代物を取り入れたため、モンスターは急激な魔力上昇に耐えきれず卒倒してしまった。
凪咲の言う通り魔力酔い自体に危険は無いが、モンスターが卒倒するあの映像は完全にアウトであるため、コメ欄か荒れるのも分かる。
「ふむ。それでは皆さん今日のスキルは『ポケット』でした。さようなら!」
【逃げた!】
【また逃げた!】
そのため凪咲はそのまま配信をそっと終了するのであった。
尚、『ポケット』の『スキル書』はモンスター用の罠として何人かの探索者に買われるのであった。
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