終焉の星ーー宿命の2人ーー

@enaga

プロローグ:ヴァルハラ断層への集結

星暦924年。

かつて銀河を一つに束ねた「銀河連合」の崩壊から、すでに三世紀が過ぎていた。

恒星を覆うほどの艦隊、月面を貫く砲列、そして空間そのものを軋ませるエネルギー兵器の応酬。帝国と共和国、ふたつの国家は終わりなき消耗戦を繰り返し、その果てに至ったのが、惑星ユースベルクの戦場であった。


そこは、惑星表層を大地ごと裂いた巨大断層――「ヴァルハラ断層」。

過去にスタースフィアの不安定臨界が引き起こしたとされる大爆縮跡であり、今や戦略的資源が集中する最後の激戦地。ここを制する者が、銀河戦争を終わらせる。


帝国と共和国。

双方は全兵力をここに集結させた。


そして、両陣営には、それぞれに“象徴”が存在した。


「――“白き凶星ミーティア”ユウト、出撃を要請する」

帝国司令艦より伝令が下る。

静寂の艦橋、将校たちは思わず息を呑んだ。


ブリーフィングルームの奥。

静かに立ち上がったその男の名前を知らぬ者はいない。

その名は《ユウト・オルドレイン》。

帝国が誇るNOVA、《ルクス》のパイロットにして、戦局をひっくり返す英雄。


右目には精密義眼。

全身を包む漆黒のスーツの上に、白銀のNOVAスーツを羽織るその姿。

静かな眼差しの奥には、凶星のような覚悟が燃えていた。


「任務は殲滅ではない。――決着をつける。それだけだ」


その言葉に、将校たちはただ頷くしかなかった。

彼が出る。それは、戦場の形が変わることを意味した。


一方、共和国側。

漆黒の戦艦「ドレッドノートアサイラム」の格納庫。

そこに待機する機体は、まるで悪夢そのもののようだった。

艶消しの黒い装甲、赤熱したブレード。禍々しいほどの気配。


そのNOVAの名は――《ノクス》。

そして、操縦席で腕を組んでいたのは、“黒き夢ナイトメア”カイル・ヴァレス。


「……ユウト。お前も来てるんだろ?」


誰にともなくそう呟き、口元を吊り上げる。

狂気とも情ともつかぬ笑み。共和国の最恐兵器。

狂戦士の異名を持つ男にして、ユウトと幾度も相打ちを演じた存在。


「なら――やっぱ、こうでなくちゃな。最後は、俺とお前じゃねえと、終われねぇ」


戦場には、無数の兵器が集まり、艦隊が空を覆い、星が鳴動しようとしていた。

だが、誰もが知っていた。

この戦いの趨勢を決するのは、数でも装備でもない。


たったふたりの英雄――白き凶星と黒き夢。

その激突こそが、三世紀戦争に終止符を打つ。


遠く空に、赤い閃光が走る。

いま、最後の戦場の幕が上がろうとしていた。

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