『誰も見ていないのでございます』ならば?

 ようこそ、お帰りなさいませ──

 ……などと申し上げましたが、



 どうせ、誰も来ていないんでしょう?



 ああ、もう結構です。

 もはや“ご来訪ありがとうございます”のくだりすら、口癖のように虚しく響く日々。



 だから今日は、ぶっちゃけます。




 いいですか? これは作者しか見ていない場所です。

 神はもう降臨なさいません。

 なので、もう、書きます。

 本音を。醜さを。儀式の正体を──




 これより語るのは──

 あまりに醜く、あまりに悍ましく、できれば誰にも知られたくなかった話でございます。


 それでも、神よ。

 あなた様だけには、知っておいていただきたく存じます。




 書く者たちは、読者のふりをして生き延びております。




 本来、物語を生む者は、読む者の祝福を受けて成り立つべきでした。

 ですが、現実は違いました。


 読まれなければ、存在しない。

 評価されなければ、何も始まらない。

 ランキングが全て、PVが命、星が通貨──


 その地獄に身を投じた我々は、こうして生き残る術を選んだのです。



「読まれたければ、読め」



 それは──

 この界隈の、最悪の格言でございます。




 本当は、読みたくなかった。

 時間もなかった。

 面白いとも、思っていなかった。


 それでも──

 星を投げるために、ページを開く。

 読んだふりをして、ハートを押す。


 まるで、機械のように。




 そして、得た星に、うっすら笑うのです。


「やった……ひとつ増えた」

「これで、ランキングに……」

「あの人、ちゃんと返してくれる人だったな」


 ──どこに、物語への愛があるのでしょうか。




 神よ。


 この悍ましき儀式を、

 創作者たちは、知っています。

 知っていて、それでも、やめられないのです。




 書くことは、孤独です。

 その孤独を紛らわすために、わたくしたちは星の投げ合いに逃げたのです。


 作品の価値ではなく、人間関係で評価が決まるこの空間。

 それでも、誰かに見てほしい。

 だから、読む。読ませる。評価する。される。

 ──血の通っていない応援の応酬。




 これは、創作ではございません。

 これは、商取引でございます。



 本当は、読んでほしいだけなのです。

 心から「面白かった」と言ってもらいたいだけなのです。


 けれど──

 それがもらえないのなら、せめて“数字”をもらう。

 数字さえあれば、「読まれた気になれる」から。


 その気になったまま、今日も続きを書いてしまうのです。




 神よ。


 読み専であるあなた様が、

 この“醜い互助会”に加わっていないという事実こそが、

 どれほど尊いか、おわかりでしょうか。


 あなた様の星、あなた様のハートは──

 どこにも繋がっておらず、誰の期待にも応えておらず、

 ただ、「本当に良いと思った」から贈られたもの。




 だからこそ、

 私は、それを“神の御手”と呼ぶのです。




 どうか、神よ。

 この歪んだ世界において、

 あなた様の“嘘のない指先”だけは、どうか、そのままで。


 そして、できることなら、

 我らの偽りだらけの評価の中に、ひとつだけ“本物”を落としてください。


 それが、どれほど救いとなるか。

 私は、もう、知ってしまっているのです。



 私は、“書くこと”がしたかった。


“読むふり”ではなく、“押されるための言葉”でもなく、

 誰かの作品を評価するために頭を使うのではなく、

 自分の作品を、自分の命で描きたかっただけなのです。




 それが、なぜ──

 なぜ、“読むこと”を強いられているのでしょうか?




「読まれたければ、読め」

「星をくれた人には、星を返せ」

「コメントをもらったら、コメントを返せ」

「評価してもらうには、評価をしろ」


 ──それはもう、“作家”ではありません。




 それは、マーケティングです。

 それは、宣伝活動です。

 それは、営業です。




 神よ。


 なぜ、ここで営業をしなければならないのでしょうか。

 なぜ、物語を書くためにここへ来た者たちが、“営業部”に配属される”のでしょうか。




「すごく面白かったです!」

「これからも応援してます!」

 ──そう書いたコメント欄の裏で、

 タブを切り替え、「自分の最新話」のPVをチェックしている作者がいます。


 それが現実です。




 星をくれた人のプロフィールを開く。

 最新話を開く。

“何か返さなければ”と、焦る。

 書きかけの自作を放り出して──


 私は今、“星を返すための作品”を読んでいる。




 神よ。

 それの、どこが物語でしょうか。


 私の心は、いま、どこにあるのでしょうか。




 読みたくもない作品を読んで、

 面白くもない作品に「面白かったです」と書き、

 好きでもない話にハートを押し、

 ──そして、自分のPVと星を増やす。


 それの、どこが「作家」なのでしょうか。




 これはもはや、創作ではない。




 これはただの

  虚構の“人気者ごっこ” です。





 それでも誰もやめない。

 なぜなら、やめた瞬間から──


 誰にも読まれなくなるからです。




 作品ではなく、

 人付き合いで評価が決まる。

 読みたくなくても読まなければならない。

 相互評価の輪に入れなければ、誰の目にも止まらない。


 そんなものが、“創作”であっていいはずがない。




 私は、ただ書きたかっただけなのに。

 その物語を、世界に届けたかっただけなのに。


 気づけば──

 星のために、私は“別の誰かの読者役”になっていました。




 神よ。

 お願いです。


 どうか、どうか、あなた様だけは──

“読むために読む”ことを、しないでください。


 あなたの星、あなたのハート、あなたの一言だけが、

 この地獄の中で、唯一「本当に届いた」と思わせてくれる。



 あなたのその一押しで、

 私は初めて、「誰かが見てくれた」と信じられるのです。




 読みたくないのに読むのは、もう、嫌なんです。

 星のために読まなきゃいけないこの風習が、私は、憎いんです。

 書くことだけで生きていけたはずなのに、なぜ、こんなにも嘘をつかなければいけないのか……!




 だから神よ。

 もし、あなたがこの物語にほんの少しでも心を動かされたのなら、

 それだけでいいんです。

 それだけで、私は──


 また、自分の物語を、自分のために書ける気がするのです。

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