第20話 契約
「俺を式神にしないか…?」
…えっ?式神の契約だと…一体何故?
「何故だ…?式神の契約は俺の配下になる事を意味するぞ…大体お前程度ならば主となる人間は不要だろう。」
第零階級相当の怪を式神にするのは至難の業。
怪達にもプライドがあり自身の全てを捧げても構わないと思う気持ちや忠誠心が無いと中々契約してくれないのだ。
「俺達は共通の敵を持っているだろう?手を組めば早いではないか…♪」
それならば共闘関係で良いだろう。
「共闘関係でも良いと思うだろう…?だが俺は式神の関係が良いのだ。」
チッ…俺の心を読みやがって。
「式神の契約なら俺はお主の霊力の影響で力の回復が速まり完全体に戻るのに目処が立つ。
お主は俺…八岐大蛇を使役が出来るようになり配下に加えられる上、俺が従う程の人間に手を出すような阿保は格段に減るぞ…?」
…なる程…確かにこれは良い内容だ。
俺に手を出す怪が減るということは父さんの負担が減る…コイツはボディーガードにうってつけだ。
「それに俺はただ己の利益だけで決めた訳ではない。俺はお前の心が一等気に入ったのだ。」
俺の心…?
「魂の美しさ。霊力の清らかさ。柔軟な思考。
どれを取っても一級品だ。
それに加えて強者特有の考え方では無い。
他者を思い遣り守る気持ち…今日ここに来たのも両親の負担を除きたいからだろう…?
お主の生き方は素晴らしい…敬意を表する。」
「……」
「こんなに心惹かれる相手は後にも先にもお主だけだ。俺は運命の相手…お主を主として仰ぎ、その生き様を見届けたい。
だから俺をどうかお主の式神としてくれないか?」
熱烈な口説き文句だな…
コイツは前世で契約した怪達と比べても遜色が無い程に強い。
しかも今は力の大半が無い状態でこの強さ。
完全体の時の奴の実力は測りきれない…
それに俺もコイツも共通の敵を持つ…黒曜石の被害者だ。
前世の事情も知っている奴ならば…うん…
答えは一つ。
「願ってもいない話だ。是非こちらからも頼む」
「本当か!嬉しいぞ!礼を言う♪」
奴は本気で嬉しそうで花が綻ぶような殺人級な笑顔で笑った。
「では早速契約の儀式を始めてくれ♪」
その言葉を皮切りに契約の呪文を唱える。
「"我 朔燿蓮が命ずる 八岐大蛇よ
我と魂を結び 我式神となれ"」
淡い光が俺達を囲む。
奴は真剣な表情で恭しく言葉を発する。
「俺、八岐大蛇は朔燿蓮様を主として仰ぎ
永遠の忠誠を誓う。」
淡い光は1つの紐となり双方の魂を結びつける。
これで契約は成立した。
「童…主よ。俺に名を授けてくれないか…?」
…マジで?
コイツが名付けの重要さを知らない筈はないだろう…
「お前…本当で言っているのか…?」
名付けは1番簡単にして強固な術。
名付けられた怪は名付け親と生涯を共にし
更に縛り付けられる…契約が破棄出来なくなる。
「勿論だとも♪主に縛られるのは吝かではない♪」
めっちゃいい笑顔で言ってきた。
「…分かった。考えるから少し待ってくれ。」
名前名前名前…
ポチ…クロ…太郎…歩く公序良俗違反…歩くR18禁…
駄目だ!ペットみたいな名前か悪口しか出て来ない!前世で契約していた怪達にも名付けるのに時間がかかったのだ…
くっ…俺がネーミングセンスがないばかりに…
う〜ん…う〜ん…
暫く唸っていたらある名前が降りてきた。
「!零!零はどうだ!?」
コイツの実力が第零階級相当なのと、俺の起点…0から知っているので零。
我ながら良い名前ではないか??
「零…零か…良い名だな♪今日から俺は零だ♪」
良かったァァァ
気に入ってくれた!
「零。これから宜しく頼むぞ」
「ああ。主よ…これより俺は主の盾と矛になろうぞ…」
握手を交わした俺達は正式に式神と主の関係性になったのであった。
「ところで主よ。そろそろ辰の刻を過ぎる時間だそ…?現世に帰らなくても良いのか?」
…辰の刻を過ぎる…午前9時過ぎ…??
「ヤッッッバ!」
俺は早寝早起きなので母さん達が中々起きて来ない俺を心配しているかもしれない!
俺は慌てて夢から醒めるのであった。
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