モブ貴族に転生した俺は、勘当された悪役令嬢を絶対手放さない ~顔面ゴリラと馬鹿にされてる俺だけど、暇つぶしに鍛えていたら、悪役貴族を余裕で蹂躙できるようになっていました~
モブ貴族に転生した俺、悪役令嬢を絶対に手放さない
モブ貴族に転生した俺、悪役令嬢を絶対に手放さない
「ネ、ネスト。あなた……」
俺を見上げ、うっすらと目に涙を溜めているレイナン。
そんな彼女の頭を優しく撫でた後、俺は空に浮遊し続けるディアソルテと対峙する。
「ふう……」
かなりの急展開となったが、これで多くの疑問は解消された。
ゲームでは〝恐ろしきラスボス〟として君臨していたレイナンが、なぜこんなにも親しみやすい人物なのか。
ゲーム本編において、なぜネストが最初に殺されなければならなかったのか。
それらの疑問はすべて、一本の線で繋がっていくわけだ。
――カーネリア王国の第一王子、シュナイレ・ロア・カーネリア。
――レイナンの実の妹にあたる、フェミリア・リィ・リスティアーナ。
まず間違いなく、事件の黒幕はこの二人だろう。
俺の記憶が正しければ、レイナンが婚約破棄を言い渡された後、シュナイレとフェミリアが電撃結婚を果たすことになったはず。
言い換えれば、第一王子は毒殺しようとした人物の妹と結婚したわけだ。
ここの裏設定について、ゲーム本編で明確に語られたわけではない。レイナンはただただ、負の想念に憑りつかれた悪女として紹介されていただけだ。
けれど――レイナンは悪女として覚醒したあと、真っ先にシュナイレとフェミリアを殺しに行っていたはず。まるでこの二人に、強い恨みを抱えていたかのように。
ここに違和感を覚えたゲームユーザーが、次の考察をネットに書き込んだのである。
――すべての黒幕はシュナイレとフェミリア。レイナンに毒殺の濡れ衣を着せることで、フェミリアが第一王子と結婚できるよう策略を進めた――
――シュナイレもまた、これが策略だと気づいていつつも、フェミリアと結婚する道を選んだ――
公式が何も語らない以上、これが真実だという確証はどこにもない。
だがシナリオに多くの違和感がある以上、これを事実だと信じるゲーマーは一定数存在していた。
なにしろ、王都には凄腕の召喚士が大勢いるからな。
極秘裏に紅龍ディアソルテを召喚するくらいは、きっと朝飯前だろう。
そしてシナリオが正規のまま進めば、俺ことネストは紅龍ディアソルテに殺されることになる。当然それだけで被害が留まるわけはなく、港町シーアンそのものが死の炎に包まれてしまうわけだ。
それをきっかけに、今まで必死に耐え続けていたレイナンの感情が爆発。
公爵家に眠る血が暴走を起こし、世界最悪の悪女へと変貌を遂げてしまうのである。
しかも胸糞悪いことに、王国は紅龍ディアソルテの出現を《レイナンの仕業》と発表していたからな。みずから犯した罪を、すべてレイナンになすり付けたわけだ。
つまり作中でネストを殺した本当の犯人は、レイナンではない。
事件の裏側で暗躍するシュナイレとフェミリア、その二人が黒幕だったのだ。
……ほんと、これらはあくまで推察でしかなかったんだけどな。
さっきのレイナンの反応を見るに、この考察はきっと正しかったんだろう。もし本当にレイナンがディアソルテを召喚していたのだとしたら、俺が殺されただけで怒ることはない。
……はぁ。
念のため、
今回はたまたま俺が馬鹿みたいに筋トレをしていたから生き残れたが、ゲーム設定そのままのネストでは、まず間違いなくディアソルテには勝てないからな。
――ということで、明確に語られていなかった設定と設定を繋げた結果、レイナンは悪女ではなかったことが証明されたわけだ。
「あ、あなた……」
よほど衝撃的だったのか、レイナンは尻もちをついて俺を見上げている。
可哀想に。
本当は世間が憎くて仕方なかっただろうに、今まで自暴自棄になることもなく。悪女という不名誉な言葉を、必死になって受け止めていたんだな。
ならばこそ、俺が彼女の理解者とならなければならない。
ありとあらゆる人々がレイナンに白い目を向けてくるこの世界から、彼女を守らなければならないだろう。
「ま、待って!」
そのまま戦闘の構えを取った俺に、レイナンが声をかけてきた。
「私の妹――フェミリアはかなり抜け目ない女だわ。きっと敵は一体だけじゃない。間違いなく他にも……」
「ガァァァァァァアアアアアアッ‼」
「グオアァァァァァァァアアアッ!」
レイナンが言い終わらないうちに、またしても耳をつんざく咆哮が周囲に響き渡った。しかも一体のみならず、複数の咆哮が聞こえてくる。
――考えるまでもない。
最初に登場した紅龍ディアソルテはあくまで一体目。合計で三体もの紅龍ディアソルテを召喚することで、確実に標的を葬り去る……。
そうした黒幕たちの姑息さは、前世でゲームをやり込んだ身として理解しているつもりだ。
「気にするな。さっきも言っただろう? すべてがわかった以上、俺はおまえを絶対に手放さないってな」
「え…………」
「あ、もちろん下心があるわけじゃないぞ! 俺みたいなゴリラと一緒になるなんて、おまえも御免だろうからな!」
「ネ、ネスト……」
「だから安心してくれ。きっとおまえを無事に守りきって、俺との縁談をなしにしてやるからな!」
「…………」
悲しいことだが、前世でゲームをやっていた影響で、レイナンの好みはわかっている。
彼女はスマートでかつ精神的に落ち着いている男性――つまりは兄フィクスのような人物が好きなのだ。
それがわかっていて、無理やり婚姻関係を結ぼうとは思っていない。
そもそもが冤罪によって公爵家を勘当されたわけだからな。
彼女を無事に守り切った先、俺たちに待ち受けているのはきっと別れだろう。
仮に勘当と取りやめるのは無理だとしても、結ばれる先は兄フィクスであったほうが、彼女も幸せのはずだからな。
「「「ガァァァァァァァァァァァアアアアア‼」」」
「ははは……! 軽く遊んでやるよ、クソガキども」
「あっ……!」
なぜか何か言いたそうにしているレイナンの声を背に受けながら、俺は紅龍ディアソルテたちに突撃していった。
「そんなの……勝手に決めないでよ」
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