第47話 あいつの目的
「不死鳥!お願いがある!」
ロスタルは傷だらけの身体を起こし、不死鳥に向かって叫んだ。
「どうか、僕の命と引き換えにエフェを蘇らせてくれ!貴方を守ってくれた女性なんだ!卵を僕に預けこの谷底へ落ちてしまったんだ。あの時、僕が逃げずに守って居たら……」
ロスタルは泣きながら叫んだ。紫の不死鳥はロスタルをチラリと見るとそのまま空に飛び立って行った。
「エフェ……」
ロスタルの目的はエフェを自分の命と引き換えに助ける事だったのだ。
そんなロスタルにハンナとサーブルは駆け寄り傷の治療をした。
ハンナがふと谷の方を見ると、手がにゅっと出て来た。
「ひっ!!こ…皇帝!?」
皇帝が魔物の攻撃をかわし這い上がって来たのだとハンナ達は青ざめた。
「クソっ!」
サーブルが剣を持って構えた。
「う、ううん……」
谷から這い上がって来たのは、皇帝ではなくとても可愛らしい女性だった。
「…エフェ!!」
ロスタルは夢を見ているのかと思った。
「え?ロスタル?」
エトワールにそっくりな女性はロスタルをじっと見た。
「ロスタル大人になったね。」
エフェはニッコリと笑うと大粒の涙がポロポロこぼれて来た。
「ずっと、ずっと彷徨いの谷の闇を彷徨っていたの。怖くて寂しかった。怪物は私を食べなかったわ。それどころか木の実なんかをくれたりしたの。でも悪い人たちが上から降って来ると飲み込んでたわ。今も怪物は誰かを飲み込んでいたの。とても怖かったわ。」
エフェが彷徨いの谷での生活を教えてくれた。
「エフェ。僕の愛しいエフェ。」
ロスタルはまだおしゃべりしようとするエフェを抱きしめた。
「君はあの頃と同じ澄んだ目をしている。僕はあの時よりも汚い大人になってしまった。エフェ、それでも僕の命と引き換えでも君を助けたかった。」
「ロスタル。私はあの暗闇でずっと年を取って行くのかと思っていたの。でも貴方のお陰で未来は変わったわ。私とこれからの未来を一緒に生きて行きませんか?」
エフェはロスタルを優しく抱きしめた。
「あ、遅くなりました。私はエフェです。」
エフェがハッとしてハンナ達に挨拶をした。
「初めまして。」
ハンナがペコッとお辞儀をした。
「貴方が紫の不死鳥を呼んだのね。闇を彷徨っていたら紫の光が包んで地上に戻してくれたの。ありがとう。」
エフェがハンナにお礼を言った。
「いえ、それは私の力ではなく、ロスタル侯爵の力です。」
ハンナは自然と涙がこぼれて来た。
「そうなのね。ありがとう。」
ハンナの言葉にエフェは泣き崩れた。そして倒れてるエトワールに気付くと駆け寄った。
「ああ、私の可愛い息子。どんなに離れていても直ぐに分かるわ。」
そう言ってエフェは母親の顔を見せてエトワールを抱き締めた。
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