第43話 バレる秘密
「着いた…。」
ロスタルはそう言うとハンナの方を見た。そこは不気味な彷徨いの谷だった。谷の奥底からは風の音が鳴り響いている。
「紫の不死鳥よ!あの日、死んでしまった者の魂を蘇らせる事は出来るか!?」
ロスタルは叫んだ。だが不死鳥が現れる気配はなかった。
「くそ。やはり死んだ者を生き返らせる事は不死鳥でも無理なのか。」
ロスタルはそう言いながら、谷の底を見ていた。
「一体、何があったのですか?力になれる事があるのならば協力もします。」
ハンナはロスタルが心に大きな傷を負っている様に思えた。
「ロスタル侯爵。私は貴方を親切な方だと思っています。私が孤児院にお手伝いに行くと手伝って下さいました。あの時の優しさが侯爵の本質だと私は思っています。」
エトワールがそう言うとロスタルは見た事のない柔らかい表情をした。
「ありがとう。そんな風に言ってくれるなんてとても嬉しいよ。」
ロスタルはエトワールに笑いかけた。
「まあ、息子にそんな事を言われると嬉しいだろう。」
耳を疑う様な言葉が聞こえて来た。
「デグラス!」
ロスタルは先ほどの笑顔からまた仮面の様な顔に戻った。
「息子とはどういう事なのですか?」
エトワールは何が何だか分からない。
「そのままだよ。エトワール。お前の父親はロスタルだ。」
「ええ!?」
そこに居た全員が驚いた。エトワールはショックで混乱した。
「何だと!何をデタラメ言うんですか!?」
エトワールは取り乱し、サーブル達が宥めた。
その時ロスタルはそこにコットが居ない事に気付き嫌な予感がした。
「それよりも皇帝。コットはどうしました?貴方また体つきが変わってますけどまさかコットの力までも取り込んだのではないでしょうね。」
ロスタルは皇帝の話には触れなかった。
「おやおや。コットが気になるか?あいつならどこかその辺をウロウロしてるのではないかな?それと、最終忠告だ、私に生意気な口を聞くな。この身体を見れば分かるだろうが私は今、お前たちをひねりつぶす事位簡単だぞ。」
皇帝はニヤリと笑った。その姿に皆、ゾッとした。
「話を逸らすな!私の父親がロスタル侯爵とはどういう事なんですか!?」
エトワールが暴れ出しそうなのをがサーブル達が止めている。
「どういう事も何も、そのままの意味だ。ロスタルよ、私が気付いてないとでも思っていたか?」
「ロスタル侯爵!どういう事なのですか!?きちんと説明してください!」
ロスタルは黙ったままだ。
「エトワール皇子。君の父親は僕だ。」
沈黙が続いた後に口を開いた。
「僕とエフェは魔力を持つ数少ない部族として知り合った。彼女は有能でとても可愛らしく勉強熱心だった。彼女の父が不死鳥に詳しかった事もあり、エフェは不死鳥に関する不思議な力を身に付けて行ったんだ。いつか不死鳥の力で病気の子供を助けたと言っていた。僕はそんな彼女を愛してた。」
「そうなのだ。エフェが居ると不死鳥が寄って来るのだ。ある時は貴重な薬草を運んで来た事もあった。その力を見込んで結婚したのに他の男の子供を身籠って居る上に、私には心を開かないわでうんざりしたよ。」
皇帝は軽くため息をついた。
「皇帝が無理矢理、エフェ様を連れて行ったのではないのですか?私をアンベスの妃にしたように。」
ハンナはエフェが悪いかの様に振る舞う皇帝が許せなかった。
「あの姉妹が私の元へ来た事でそれなりに金銭的に援助はしたつもりだが。」
皇帝は面倒そうに答えた。
「嘘よ!村の若い人も騙して城に連れて来て殺した事を村長から聞いたわ。」
ハンナは涙が溢れて来た。
「何だ。知っていたのか。老いの村の奴らとロスタルの家門の奴らは邪魔なんだよ。魔力を持つ者はこの私だけでいいのだ。他の者は早く朽ち果てればいい。」
皇帝は首をコキコキと鳴らした。
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